『河北新報』2012年03月12日付
研究、内外で連携強化 東北大が震災1年報告会
東北大の研究者が東日本大震災に関する研究成果や今後の取り組みを発表する「東日本大震災1年後報告会-国際減災研究協力の体制構築に向けて」が11日、仙台市青葉区の仙台トラストタワーであり、市民ら約300人が耳を傾けた。
政府の復興構想会議で議長を務めた五百旗頭真防衛大学校長が基調講演し「過去何度も国難を乗り越えてきた日本の社会には『再生ばね』がある。もう一度、ばねを働かせ、日本全体の再生につながる復興を成し遂げてほしい」と述べた。
真野明教授(応用水理学)が仙台湾の海岸堤防の津波被害が岩沼市以南で大きく、宮城県山元町ではほぼ全壊したことを報告。第1波の押し波で破壊された欠損 部分が、引き波で海水の戻り口になって浸食が進行したと分析し「山元町は海岸に砂浜が少ない分、押し波の威力が強いまま堤防に達したため大きく壊れた」と 説明した。
被災地医療を支援した清元秀泰教授(腎臓内科学)は「津波では死者に比べ負傷者が圧倒的に少ないことが想定外だった」と語った。慢性疾患などの患者を想定し、広域災害に対応した訓練や医療情報共有の必要性を強調した。
報告会に先立ち、東北大は国内外の計15の大学・研究機関と、災害に関する研究の連携強化に向けた共同宣言を採択。震災の知見や教訓を世界で共有し、巨大災害時の被害推定技術や情報伝達システムを構築することを目標に掲げた。