秋入学、有力大でも温度差 「アジア出身者配慮を」 『日本経済新聞』2012年3月7日付

『日本経済新聞』2012年3月7日付

秋入学、有力大でも温度差 「アジア出身者配慮を」

 国立大学協会(会長=浜田純一・東京大学長)の通常総会が7日、東京都内で開かれ、東大が検討している秋入学への全面移行について各大学の学長が意見を交わした。グローバル人材の育成へ、入学時期だけでなく入試や教育内容の見直しも進める必要があるとの意見で一致。導入に向け大学間の温度差もあるが、大学教育の改革について幅広い議論が始まった。

 総会には全国立大86校のうち81校の学長が参加した。

 浜田学長は「秋入学移行の意義は単なる入学時期の変更ではない。グローバル化の荒波を生き抜く若者を育てるための総合的な教育改革のシンボルであり、社会システムと人々の意識の変革を促すものだ」と東大の意欲を強調。「各大学による細部の違いを論じるのではなく、(教育改革を目指すという)大きなベクトルを共有していきたい」と呼び掛けた。

 そのうえで、協会内部の教育・研究委員会で入学時期の見直しを含む幅広い議論を行っていくことを提案。この日の総会で、人材育成や入試の在り方、教育の質の向上といったこれまでの大学教育の問題点も合わせて議論していく方針を確認した。

 各大学からは浜田学長の考えにおおむね賛同する意見が目立った。一橋大の山内進学長は「秋入学を機に教育改革を進めたい」と発言。一橋大は東大が秋入学へ向けて発足させる協議会に参加する有力11校に含まれており、既に春に入学して秋から本格的な授業を始める独自案を検討している。

 同じく協議会に参加する北海道大の佐伯浩学長も「国際化の必要性を強く感じている。入試改革と二本柱で考えており、秋入学移行を前向きに議論している」と積極的な姿勢を見せた。

 協議会に参加しない地方国立大からも国際化の必要性を指摘する意見が出た。宮崎大の菅沼龍夫学長は「地元の大学で国際交流ができるようにする環境づくりが必要。地方大学にとっても国際化は避けて通れない課題で、5月には検討部会を立ち上げたい」と秋入学に前向きな姿勢を示した。

 金沢大の中村信一学長も「時代が求める人材は何かを大学が深く考える非常に良い機会。20、30年先を見据えて学生を育てるための根本的な議論を大学界全体で進めていくべきだ」と述べた。

 医科大では、日本人の医師養成が目的ということもあって秋入学に慎重な意見が少なくないが、滋賀医大の馬場忠雄学長は「医学教育も国際的な水準に合わせていかなければならない」と強調。教育の質の向上に取り組む必要性を訴えた。

 ただ、入学時期の見直しが先行議論されることなどについては、慎重論も出た。

 大阪大の平野俊夫学長は「秋入学という言葉が独り歩きしている」と指摘。「本当に重要な教育の中身が忘れ去られることを懸念している」と語った。京都大の松本紘学長も「秋入学はグローバル化の一つの手段だが、(京大は)移行を決めていない。京大は国際化もにらみながら、入試改革を優先して議論している」と説明した。

 総会後、記者会見した東大の浜田学長は「慎重な意見も傾聴に値する。課題をどうすれば越えられるのか、社会として考えていくスタンスでやっていきたい」と述べた。

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