NHKニュース配信記事2012年3月7日付
国立大 学長集まり秋入学議論
全国の国立大学の学長が一堂に集まる「国立大学協会」の総会が都内で開かれ、東京大学が進める秋入学について、一部の大学から慎重な意見が出たものの、今後も実施について議論を進めることになりました。
7日の総会には、全国86の国立大学のうち81大学の学長が出席しました。
この中で、国立大学協会の会長を務める東京大学の濱田純一学長は、全学部で5年後をめどに導入を進める秋入学について、「グローバル化という大変動の中で、大学、そして社会の改革を進めるというメッセージだ」とそのねらいを説明しました。
これに対して、今の大学の改革に反対する大学はありませんでしたが、秋入学はあくまで大学を変える手段の1つで、議論だけが1人歩きしてはよくないという指摘や、高校卒業から入学までの半年間、保護者の負担をどうするか考えなければならないといった慎重な意見も出ました。
NHKが、1月、東京大学を除く81の国立大学に秋入学についてアンケート調査したところ、「実施を検討する」としたのが29大学で、回答を寄せた大学の37%に上った一方、「実施を検討しない」や「難しい」としたのは15大学で19%でした。
秋入学に慎重な姿勢を示した鹿児島大学の吉田浩己学長は「地方大学にとってもグローバル化は必要だが、うちの大学では、日本と同じ入学時期の東南アジアからの留学生が多いのが実情だ。もし秋入学をするなら、大学だけでなく、社会全体が変わる必要がある」と話していました。
国立大学協会では、秋入学について、今後、入試の在り方などと合わせて、内部の委員会で検討することにしています。
秋入学の問題について、大学教育が専門の桜美林大学大学院の舘昭教授は、「大学を改革する手段として、東京大学が秋入学を打ち出したことは評価できるが、個々の大学の事情は異なるはずで、それを考えず横並びで実施するのはおかしい」と指摘しました。
そのうえで、「秋入学によってグローバル化が進むというが、世界的に見ても東大がいう「ギャップターム」を導入している国は少数で、国際標準になっていない。もし、日本で実施するにしても、中学、高校も含めた入学、卒業時期の見直しや、入学までの生活費の問題など膨大な社会的コストをどうするか、考えなければならない」と話しています。