都教委、早大受験者数調査 入試で「君が代」義務化出題『朝日新聞』2012年2月20日付

『朝日新聞』2012年2月20日付

都教委、早大受験者数調査 入試で「君が代」義務化出題

 早稲田大学(東京都)法学部が15日に実施した入試の問題文で日の丸・君が代をめぐる教員処分問題を取り上げ、これに対し東京都教育委員会が、一部の都立高校に同学部の受験者数について異例の調査をしていることがわかった。都教委は都立学校の教員に、君が代斉唱時の起立などを通達で義務づけている。

 日の丸・君が代の問題を扱ったのは、同学部の受験科目のうち、選択科目の「政治・経済」で、問題文を読んで答える方式。問題文は「卒業式や入学式で君が代を斉唱するときに、教員に対して起立することを命じ、起立しない教員を処分するという措置の合憲性が争われている」などとし、思想の自由や学校行事の円滑な遂行など様々な考え方を紹介し「教育には強制はふさわしくないのではなかろうか」と締めくくっている。

 続く設問は、都の場合として「不起立者に懲戒処分を課しているのは誰か」と尋ね、校長、教育委員会、知事、都議会、文部科学大臣から選ばせる問題など。「起立命令と最も近い形態を選べ」として、宗教などの事例を挙げて選択させる問題もあった。

 日本大学の広田照幸教授(教育社会学)は問題について「文章にはある種の主張が入っているが、問いは客観的な知識を問うもの。高校の学習指導要領に照らしても入試としてあっていい」と話す。一方、駿台予備学校の石原賢一・情報センター長は「学問的、政治的に判断が分かれる事案は、入試問題としてふさわしくない」と話す。早大の広報担当者は「入試問題の作成過程は原則答えられない」としている。

 都教委はこの入試後、一部進学校の校長あてに、同学部の志願者数や科目ごとの受験者数の調査を依頼した。都教委幹部は「最高裁判決との整合性など、問題を分析するとともに、どれくらい受験したかを把握するため。対応が必要かどうか検討する」。担当者は「このような調査は記憶にない」と話している。

 早大法学部の志願者は約7千人。多くの受験生は外国語と国語に加え、世界史、日本史、政治・経済から1科目を選択して受験した。

 また、都教委の対応について、君が代斉唱時の不起立を理由に懲戒処分を受け、取り消しを求めて提訴した50代の都立高校教師は「入試問題とはいえ、日の丸・君が代問題に対する論評だ。単なる論評にまで反応する都教委の姿勢は常軌を逸している。今後、この問題を授業で扱う際の教え方といった点にまで、現場に口出しするつもりではないか」と批判。玉川大学の小松郁夫教授(教育行政学)は「特定の大学への受験者数の調査をするのであれば、目的を明確にすべきではないか」と話した。

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