「秋入学」 大学・企業の本音は右へ倣え?『大分合同新聞』2012年1月30日付

『大分合同新聞』2012年1月30日付

「秋入学」 大学・企業の本音は右へ倣え?

 東大が5年後の全面移行を打ち出した「秋入学」。国際標準に対応できるというメリット、高校卒業から入学までに半年の空白期間が生まれるなどのデメリットが挙げられるが、県内の大学での論議、検討はこれから。現行システムからの“大転換”だけに、「周りが変えるなら、ついていこうか…」という本音も垣間見える。学生を採用する地元企業の多くも実感がないためか静観の構え。新入生を迎えるのは桜からコスモスに変わるのか?

 「小・中・高校、家庭、企業など全てに影響が出る。大分大単独ではできない」。26日、県庁で開かれた記者会見。大分大の北野正剛学長は、秋入学導入の適否を検討する委員会を新年度中に設置する方針を明らかにした上で、導入には社会全体のシステムが変わる必要があると指摘した。

 実際、別府大は「留学生の秋入学は認めているが日本社会は春から始まる学年歴。現時点では前向きに考えるのは難しい」との姿勢。ただ、「検討せざるを得ない状況になれば検討する」ともする。日本文理大は「検討していくべき重要な課題」とするにとどまる。

 一方、2000年の開学当初から春秋の年2回、入学生を迎えている立命館アジア太平洋大。11年秋に入学した437人のうち、約9割の399人が留学生だ。「多様な学生を確保するため、秋への一本化は検討していない」が、「社会システムや高校の教育制度が見直されるきっかけになれば」と期待を込める。

 県内企業の多くは、秋入学に対応した「秋採用」には実感が湧かない様子。ある小売店の採用担当者は「秋卒業の人も翌春の採用試験を受けてもらっている。しばらくは様子を見る」。金融機関の担当者は「官公庁が変われば、民間も徐々に変わるのでは。そうなれば、手間は掛かるが春秋2回の採用になるとは思う」と話す。

 県人事委員会事務局は「多くの大学が秋に切り替えるようなら、良い人材を獲得するためにも出遅れはできない。どんなメリット、デメリットがあるかを学ぶ必要がある」としている。

学生 期待と不安が交錯

 学生らには、秋入学への期待と不安が交錯する。

 「導入されると国際交流が盛んになる」と大分大2年の男子。大分市内の進学校に通う高校2年男子は、大学入学までの空白期間を生かして「アルバイトやボランティアなど、興味のあることができる」と言う。

 半面、「企業は優秀な人を採用しようと、東大に合わせて採用時期を秋に変更するのでは。その場合、春に卒業する大学の学生は、就職の機会が奪われはしないか」(大分大2年の男子)との懸念も。

 入学前と卒業後に空白期間が生じた場合、「アルバイトに時間を割いてしまい、学力が低下するのではないか」「仕事に就くまでの生活が厳しくなる」などの不安も漏れた。

 大分舞鶴高校で進路指導に携わる佐藤秀信指導教諭(48)は「入試が(高校卒業後の)夏になれば、高校でよりきちんと教える時間ができるのでは」と話す。一方で「大学によって入試時期がバラバラ、受験が複雑になると、高校側の負担が大きくなりすぎる」と、大学側に統一歩調を求めた。

<ポイント> 大学の秋入学

 欧米では一般的で、学生の海外留学や留学生の受け入れのしやすさがメリットとされる。共同通信が各大学の学長を対象に行ったアンケートでは、東大の方針を受けて約4割の国立大、早稲田大や慶応大などの私立大も検討する意向を持っていることが明らかになった。

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