国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成22年度に係る業務の実績に関する評価

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国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成22年度に係る業務の実績に関する評価 

1.評価方法、評価の審議経過等 

(1)評価制度 
 国立大学法人法に基づき、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、「法人」という。)の各事業年度における業務の実績について、「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の各年度終了時の評価に係る実施要領(平成22年6月国立大学法人評価委員会決定)」に従い、国立大学法人評価委員会が評価を行う。 

(2)評価方法 
 各法人から提出された実績報告書等を調査・分析するとともに、学長・機構長等からのヒアリング、財務諸表や役職員の給与水準等の分析も踏まえながら評価を実施した。 

1.全体評価 
当該事業年度における中期計画の進捗状況全体について、記述式により総合的な評価を行う。 

2.項目別評価 
「業務運営の改善及び効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理、法令遵守)」の4項目については、以下の5種類により進捗状況を示すとともに、特筆すべき点や遅れている点にコメントを付す。なお、これらの評定は、基本的には、各法人が設定した中期計画に対応して示されるものであり、各法人間を相対比較する趣旨ではないことに十分留意する必要がある。

 「中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある」
 「中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる」
 「中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる」
 「中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている」
 「中期目標・中期計画の達成のためには重大な改善事項がある」 

「教育研究等の質の向上」については、全体的な状況を確認し、注目すべき点にコメントを付す。 

(3)評価体制 
 国立大学法人については、国立大学法人評価委員会(委員長:村松岐夫 京都大学名誉教授)の国立大学法人分科会の下に評価チームを設置して、調査・分析を行った。

 評価チームとしては、法人の規模や特性に応じて割り当てた大学を担当する基本チーム、共同利用・共同研究拠点の附置研究所・研究施設の専門評価チーム及び附属病院の専門評価チームを設置した。

 また、大学共同利用機関法人については、同委員会の大学共同利用機関法人分科会が調査・分析を行った。 

(4)審議経過

•6月30日まで 各法人から実績報告書等の提出

•7月1日~ 国立大学法人分科会各評価チーム会議、大学共同利用機関法人分科会において実績報告書等の調査・分析

•8月1日から9月2日 各法人から業務の実績についてヒアリング(国立大学法人)

•8月8日から8月26日 各法人から業務の実績についてヒアリング(大学共同利用機関法人)

•9月5日から9月15日 国立大学法人分科会各評価チーム会議において評価結果(骨子案)の検討

•9月28日 国立大学法人分科会において評価結果(素案)の審議

(意見申立の機会:9月28日~10月12日)

•10月6日 大学共同利用機関法人分科会において評価結果(素案)の審議

(意見申立の機会:10月7日~17日)

•10月27日 国立大学法人評価委員会総会において評価結果(案)の審議・決定 

2.評価結果の概要 

1.業務運営・財務内容等の状況 

 「業務運営の改善・効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理、法令遵守)」の4項目について、中期計画の達成に向けた業務の進捗状況等について評価を行った。 

(1)業務運営の改善・効率化 

 1.組織運営の改善、2.事務等の効率化・合理化に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。 

 「特筆すべき進捗状況にある」、「順調に進んでいる」又は「おおむね順調に進んでいる」法人が90法人(100パーセント)となっており、基本的には、中期計画の達成に向けて順調に進捗している。 

【評定の結果】
平成22年度(全90法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」2法人(2パーセント)
「順調に進んでいる」72法人(80パーセント)
「おおむね順調に進んでいる」16法人(18パーセント)
「やや遅れている」0法人( 0パーセント)
「重大な改善事項がある」0法人( 0パーセント) 

(主な状況) 

○ 第2期中期目標の達成に向けた重要施策推進のため、新たに「中期目標達成強化経費」、「中期計画達成推進費」又は「中期目標・中期計画達成強化経費」を創設している。【北海道大学、新潟大学、大阪教育大学 等】 

○ 経営協議会の学外委員からの意見を積極的に取り入れ、法人運営の改善等に活用している。【東京医科歯科大学、電気通信大学、京都教育大学、宮崎大学 等】

○ 男女共同参画の推進に向けた取組を進めており、特に3法人(金沢大学、静岡大学、奈良女子大学)では、法人の自己負担で事業の充実を図り特色ある取組を展開し、管理職への積極的な登用や女性教員比率が向上しているなど、その成果が現れている事例が見られた。 

○ 大学院博士課程及び専門職学位課程において、一定の学生収容定員の充足率を満たしていない法人は、平成21年度と比較すると1法人減少している。なお、大学院修士課程においては、学生収容定員の充足率を満たしていない法人は無かった。

•大学院博士課程
(平成22年度:5法人(7パーセント)、平成21年度:6法人(8パーセント)、平成20年度:6法人(8パーセント)、平成19年度:8法人(11パーセント)、平成18年度:7法人(9パーセント)、平成17年度:8法人(11パーセント))

•大学院修士課程
(平成22年度:0法人(0パーセント)、平成21年度:1法人(1パーセント)、平成20年度:2法人(2パーセント)、平成19年度:0法人(0パーセント)、平成18年度:0法人(0パーセント)、平成17年度:2法人(2パーセント))

•大学院専門職学位課程
(平成22年度:9法人(20パーセント)、平成21年度:10法人(23パーセント)、平成20年度:5法人(12パーセント)、平成19年度:1法人(4パーセント)、平成18年度:1法人(4パーセント))

※平成18年度までは85パーセント未満、平成19年度からは90パーセント未満の充足率の課程を対象としている。

○ 年度計画に掲げる取組を十分に実施していない法人(3法人)、また、平成21年度評価結果において課題として指摘された事項に対する改善への取組が十分ではない法人(1法人)が見られた。

(2)財務内容の改善

 1.外部研究資金、寄附金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。 

(全体の傾向) 
 「特筆すべき進捗状況にある」、「順調に進んでいる」又は「おおむね順調に進んでいる」法人が90法人(100パーセント)となっており、基本的には、中期計画の達成に向けて順調に進捗している。 

【評定の結果】   
平成22年度(全90法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」2法人( 2パーセント)
「順調に進んでいる」83法人(92パーセント)
「おおむね順調に進んでいる」5法人(6パーセント)
「やや遅れている」0法人( 0パーセント)
「重大な改善事項がある」0法人( 0パーセント) 

(主な状況) 

○ 地域医療への貢献と特徴のある診療を推進するため、平成22年11月に日本初のO-arm(オーアーム)ポータブルCTを導入し、脊椎外科、股関節外科において斬新な治療法が実施され、受診患者数が増加するとともに、診療請求額が増加している。【浜松医科大学】 

○ 「技術移転説明会」を実施し、研究成果を産業界へ技術移転する方法の周知及び意識向上を図るなど、産学官連携センターのコーディネーターを中心に、大学が保有する工業技術等の知的財産を活用した自己収入の増加に取り組み、平成22年度の知的財産収入は5,999万円(対前年度比4,040万円増)となっている。【名古屋工業大学】 

○ 年度計画に掲げる取組を十分に実施していない法人(5法人)が見られた。 

(3)自己点検・評価及び情報提供

 1.評価の充実、2.情報公開や情報発信等の推進に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。

(全体の傾向) 
 「順調に進んでいる」又は「おおむね順調に進んでいる」法人が90法人(100パーセント)となっており、基本的には、中期計画の達成に向けて順調に進捗している。 

【評定の結果】
平成22年度(全90法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」0法人( 0パーセント)
「順調に進んでいる」89法人(99パーセント)
「おおむね順調に進んでいる」
1法人( 1パーセント)
「やや遅れている」1法人( 1パーセント)
「重大な改善事項がある」0法人( 0パーセント) 

(主な状況) 

○ 第2期中期目標期間に何を実施するのかを分かりやすく示すため、重点的に取組む主な中期計画を樹木に見立てた絵で表し、ウェブサイトに掲載している。【上越教育大学】 

○ 機構長の提案により新たに立ち上げた「KEKキャラバン」プロジェクトにおいて、基礎科学の未来を担う人材養成や機構の研究活動や研究成果に関する情報発信を目的とした出前授業を13都府県の24か所にて実施し、延べ2,000名以上の参加を得ている。【高エネルギー加速器研究機構】 

○ 年度計画に掲げる取組を十分に実施していない法人(1法人)が見られた。

 (4)その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等) 

 1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.法令遵守に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。

(全体の傾向)
 「特筆すべき進捗状況にある」、「順調に進んでいる」又は「おおむね順調に進んでいる」法人が90法人(100パーセント)となっており、基本的には、中期計画の達成に向けて順調に進捗している。 

【評定の結果】
平成22年度(全90法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」3法人( 3パーセント)
「順調に進んでいる」81法人(90パーセント)
「おおむね順調に進んでいる」6法人( 7パーセント)
「やや遅れている」0法人( 0パーセント)
「重大な改善事項がある」 0法人( 0パーセント) 

(主な状況) 

○ 従来使用していた各種サーバーを学内共有サーバーへ集約して、サーバー等を大幅に削減し、稼働率を向上させたことにより、消費電力を48パーセント削減している。【北陸先端科学技術大学院大学】 

○ 地元企業との共同により開発した「非燃焼型医療廃棄物処理機(医療廃棄物を燃やさず処理する世界初の装置)」を、平成22年4月から導入・本格稼働し、ゼロエミッションプロジェクトとして、CO2 排出量の従来比31.3パーセントの削減、感染リスクの軽減等を進めている。【滋賀医科大学】 

○ 東日本大震災の発生翌日(平成23年3月12日)には災害派遣医療チーム「長崎大学病院DMAT」を被災地に派遣し、また、3月14日には緊急支援物資を被災地(福島県小名浜港、岩手県宮古港)に直接届けるために水産学部の練習船「長崎丸」を出航させたほか、3月16日には岩手県遠野市に医療支援拠点を設置して被災地(岩手県釜石市、大槌町)における医療支援活動を開始するなど、発生直後から迅速に支援活動を実施している。【長崎大学】 また、他の附属病院を設置する国立大学法人においても、被災地への医師派遣等を行っている。

○ 研究費の不適切な使用・管理、毒劇物の不適正な管理等、法令遵守(コンプライアンス)に向けた取組が十分には実施されていない法人(5法人)が見られた。

○ 年度計画に掲げる取組を十分に実施していない法人(3法人)、また、平成21年度評価結果において課題として指摘された事項に対する改善への取組が十分ではない法人(1法人)が見られた。

2.教育研究等の質の向上の状況 

 引き続き、多くの法人において、法人化による環境の変化を積極的に活かし、指導方法の改善・充実、教育活動の個性化・特色化、学生支援体制の整備等の教育改革、各法人の特色に応じた研究活動の活性化や産業界や地域社会等への貢献に積極的に取り組んでいる。 

(主な状況)

○ 秋季に入学する留学生が増加していることから、英語により執り行う秋季学位記授与式・卒業式及び入学式を実施している。【東京大学】 

○ 幅広い教養、豊かな感性の涵養を目指す教養科目を、医学、歯学の6年一貫教育のカリキュラムに、学年進行に合わせて楔型、串刺し型に入れ込み、哲学に始まる倫理教育では、生命倫理研究センターの参加を組み込んでいる。【東京医科歯科大学】 

○ 「朱鷺・自然再生学研究センター」を設置し、「超域研究機構」の充実を図り、特色ある研究拠点化を推進している。【新潟大学】

 ○ 宮崎県内で感染拡大を続けていた口蹄疫の感染及び拡散防止のため、口蹄疫危機対策本部を設置し、防疫対策を定めるとともに、対応マニュアルを作成して防疫措置を実施している。【宮崎大学】 

○ 国立天文台では、すばる望遠鏡において惑星の公転軸が恒星の自転軸から大きく傾いている系を複数発見し、惑星系の形成過程に新たな問題を提起したことや、サブミリ波望遠鏡ASTEにおいて多数のサブミリ波銀河を検出し、初期宇宙に大質量の銀河が多数できることを発見したという研究成果をあげている。【自然科学研究機構】

3.共同利用・共同研究拠点の附置研究所及び研究施設 

 共同利用・共同研究拠点においては、研究者コミュニティ等の意見を踏まえつつ、大型研究設備や資料・データ の提供、共同研究や研究集会の組織等を通じ、大学の枠を越えた共同利用・共同研究を実施しており、引き続き、我が国全体の学術研究の発展や学術の継承、普及、活用に不可欠な人材育成のために、共同利用・共同研究の一層の推進が期待される。 

4.附属病院 

 附属病院においては、深刻な医師不足問題や地域の医療崩壊に対応し、救急医療や周産期医療、災害医療体制等の機能強化等、重要な役割を果たしている。

 一方、診療業務の増加等により、教育・研究への支障が懸念されている状況においても、将来の医療を担う人材養成のために多彩な教育研修プログラムを提供して充実を図るとともに、新しい診断・治療法の研究開発等の実施に取り組んでいる。

 各附属病院は、施設設備整備のための多額の債務借入金の返済、附属病院運営費交付金の削減等、依然として財政状況が厳しい中でも、引き続き、教育研究活動の発展と、地域からの要請も十分踏まえた高度医療の提供等、今後とも特色ある取組が求められている。

 また、管理会計システム等を活用した経営分析による財政基盤の強化や医師と他の医療従事者等との役割分担により、医師等の勤務環境の改善を図るなど、今後もさらなる教育研究の充実に向けた取組が期待される。 

5.大学共同利用機関法人 

 法人が設置する各大学共同利用機関が全国の国公私立大学の研究者等への共同利用・共同研究の場を通じ、当該分野の中核拠点として学術研究を推進している。また、複数の大学共同利用機関が統合したメリットを活かし、新たな学問領域創成の推進、事務組織の統合による効率化及び情報発信の強化等、運営を活性化させている。

今後、機構長のリーダーシップの下で、最先端の研究を自ら実施する機関として、卓越した研究拠点機能の一層の向上や共同研究体制の整備・充実を図るとともに、大学院教育をはじめとする次世代を担う若手研究者の育成に積極的に貢献し、我が国の学術研究の総合的な発展に資することが期待される。 

お問い合わせ先
国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

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