薬剤師コースは計8年?7年? 全国の薬科大学、大もめ『朝日新聞』2011年10月19日付

『朝日新聞』2011年10月19日付

薬剤師コースは計8年?7年? 全国の薬科大学、大もめ

 2006年度に新制度が導入された薬剤師養成コースを巡り、全国に74ある薬科大学がもめている。三つの私立大学が設けている、他大学より1年短いコー スがやり玉にあがったのだ。1年短い前提で勉強中の学生の一部が、想定した時期に薬剤師国家試験を受けられない事態になりそうだ。

 問題となっているのは、城西大(埼玉)と近畿大(大阪)、大阪薬科大(同)の3大学のコース。

 薬学部は以前、全国一律に4年コースだったが、06年度から研究者養成の4年コースと薬剤師養成の6年のコースに分離。薬剤師試験を受ける者は、6年 コースに進むのが原則となったが、17年度の入学者までは経過措置がある。4年コース卒業後に大学院(2年)を修了し、さらに、実習や不足単位の履修を一 定期間すれば、薬剤師試験を受けられるという特例だ。

 この実習などの期間の長さは当初は決められず、09年9月になって国公立大が「2年」とする見解をまとめた。多くの私立大が追随、「4+2+2」の計8年コースが主流となった。

 一方、3大学は、実習などの期間を1年とした「4+2+1」の計7年コースを設けており、パンフレットや口頭で学生に説明してきた。夏休みや土曜日に授業をすればよいとの判断からだ。

 ところが今年8月、全国の薬科大学、病院や薬局の薬剤師などの関係10団体が「大学院の2年間は薬剤師向けの勉強に専念できず、実質5年で薬剤師試験が 受けられることになる」として7年コースを批判。「6年制薬学教育の理念に反する」との声明文を出し、医療現場での実習の受け入れも事実上拒否した。

 慌てた3大学は、7年コースの撤回を検討。現在、7年コースには学生計約100人がいるが、3大学はすでに大学院に進んだ約50人について、コース変更 は影響が大きいとして、7年コースでの卒業を団体側に要望。一方、大学4年生以下は、新設する8年コースなどに移して「泣いてもらう」(近畿大の掛樋一晃 薬学部長)方針という。

 城西大の杉林堅次薬学部長は「コース変更する学生との『契約違反』は認めるが、私たちの力ではどうしようもない。(7年コースは)カリキュラムの工夫であり、間違っているとは思わない」と話す。

 全国薬科大学長・薬学部長会議会長の井上圭三帝京大薬学部長は「大学院生は7年コースのままで卒業を認める方向だが、4年生以下は10団体の理解が得られない」とする。12月上旬にある総会で同会議としての対応を決める。(峯俊一平)

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 〈薬学部6年制〉より専門的な薬剤師の養成を目指し、2006年から全国の大学の薬学部に6年コースが設けられ、半年間の薬局病院実習が必修化されるなど教育内容が充実した。新薬を開発する研究者の養成向けに、従来の4年コースも残された。

 

 

 

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