焦点/宮城の私大/被災受験生支援広がる『河北新報』2011年10月14日付

『河北新報』2011年10月14日付

焦点/宮城の私大/被災受験生支援広がる 

 宮城県内の私立大が東日本大震災で被災した受験生を対象に、2012年度入試で入学検定料(受験料)や入学金、授業料の減免措置を打ち出している。復興を担う人材を支援するとともに、大学間競争が激しくなる中で学生を確保しようという狙いもある。被災した受験生を抱える沿岸部の高校は「生徒が当初の希望を変えずに受験勉強ができる」と歓迎している。

◎入学金や授業料など減免/「復興担う人材育てる」

 県内の4年制私大の支援策は表の通り。(1)学費負担者が死亡または行方不明となった(2)学費負担者の自宅が全半壊した(3)福島第1原発事故で避難している―などの学生を対象とする。

 ほとんどの大学が入学検定料の全額あるいは一部を免除する。入学金は全額または半額の免除、授業料は1年分や前期分の全額または半額を免除する。減免の割合は、受験生の被災程度に応じて決める。「検討中」「未定」とする大学は、国の第3次補正予算の成立を待って対応策を決定する。

 東北文化学園大(仙台市)の高坂知節副理事長は「震災後の東北を支える人材を育てるため、支援は欠かせない」と説明する。

 多くの大学は、本年度に入学した学生や在校生にも同様の支援策を講じている。

 石巻市門脇の自宅が全壊した東北文化学園大医療福祉学部1年の安食(あじき)智代さん(18)は、入学金と1年間の学費200万円が全額免除になり、一時給付金30万円の支給も受けた。

 安食さんは「家を再建するため、震災直後は進学断念も考えたが、支援のおかげで言語療法士になる夢を諦めずに済んだ。楽しい学生生活が送れている」と語る。

 仙台白百合女子大(仙台市)の菅原茂入試広報課長は「今後は個々の学生の状況に応じて支援するなど、できるだけの対応をしたい」と強調する。

 12年度入試での支援策は、被災した受験生の励ましになっている。自宅が全半壊した生徒が少なくない石巻好文館高(石巻市)の岡邦広教頭は「経済的な支援が安心材料になり、当初の進路希望を変えた生徒はほとんどいない」と言う。

 私大にとって、震災による志願者減は経営に影響も与えかねない。

 東北生活文化大(仙台市)を運営する三島学園の菅福彦法人事務局長は「支援は数年は続けなければならないだろう。規模の小さい大学は大変だ」と公的支援を期待する。

 東北薬科大(同)の黒田英雄事務局長は「学生は県外にいったん流出すると、東北に戻る保証はない。負担は軽くはないが、大学の枠を超えて東北全体を盛り上げる視点で、受験生や在校生の支援に取り組みたい」と話している。

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