『朝日新聞』2011年9月28日付
千葉大、医療系学部を一つに集約 薬学部が移転完了
千葉大が進めてきた薬学部の亥鼻キャンパスへの移転作業が終了し、27日に西千葉キャンパスの校舎で閉舎式があった。医療系の機能を亥鼻に集約する一方で、西千葉の跡地では産業界との連携を目指す研究施設が動き出している。再編を足場に、千葉大は大きく姿を変えようとしている。
千葉市の亥鼻キャンパスには医学部、看護学部、付属病院、真菌医学研究センターなどがあり、薬学部の移転によって医療系の学部や施設が一カ所に集約された。
亥鼻には7階建て延べ床面積7890平方メートルの新しい研究棟が完成し、26日までに薬学部の8研究室と事務部門が移転。12研究室が第一陣として2004年に西千葉から移っており、これで移転が完了した。
西田篤司薬学部長は「医療系学部が集まることで、教育と研究での新展開が期待できる。医師、薬剤師、看護師らが力を合わせて取り組むチーム医療の必要性が唱えられているが、学生の段階からチーム医療を理解し、実践することができる」と移転の意義を説明する。3学部協働の専門職教育などに力を入れる方針だという。
もともと亥鼻にあった薬学部は1966年に西千葉に移転。亥鼻の校舎にあった屋根飾りが薬学部のシンボルとして西千葉に設置されていたが、今回の移転に伴い、その屋根飾りも45年ぶりに亥鼻に戻った。
新しい研究棟の1階には300人収容の講堂が設けられた。一般へのお披露目をかねて11月6日には公開講演会が計画されている。「薬用植物の世界」がテーマで、石橋正己教授の「天然物と千葉」、付属病院和漢診療科の並木隆雄科長の「身近な薬用植物~漢方薬の考え方」などの講演が予定されている。事前の申し込みは不要。
■斎藤康学長に聞く
薬学部の移転が完了した千葉大。斎藤康学長にキャンパス再編の狙いを聞いた。
――医療系学部を亥鼻キャンパスに集約されましたが。
「今まであるものを、これからもそのまま持ち続けることは難しい時代を迎えている。千葉大ならではの特徴ある大学にしなくてはと考えると、亥鼻キャンパスを総合メディカルセンターにするという構想が浮かんできた。病気に苦しむ人にアプローチするために、医学に関する人材を集結することで機能を強化しようとの考えだ」
――西千葉の薬学部の跡地を利用し「千葉大サイエンスパークセンター」(CSPC)が今年春から動き出しました。その目的は。
「地域と連携して、地域の発展に貢献する大学であることを目指している。産業界や企業の方々の意見も聞くと、大学は、敷居が高い、壁が厚い、といった声が強かった。産業界の人たちが自由に入れる建物を提供しようというのがCSPCの考え。こんなことが分からない、こんな技術がほしいといった要望にこたえたい。医学と工学の融合を目指したフロンティアメディカル工学研究開発センターも昨年、プロジェクト制に移行した。結果を出すことを目指している」
――大学の姿が変わってきていますね。
「人材の育成は大学の使命で変わらない。社会の要求に応じて、事業を通して学生も育てることも必要。大学も、人に役立ってなんぼです。そうでなければ評価は得られない。しかし同時に大学は会社ではない。そのへんの限界も、可能性も見きわめて進めている」(聞き手・渡辺延志)