焦点/宮城の私大/被災学生、手厚く支援『河北新報』2011年9月22日付

『河北新報』2011年9月22日付

焦点/宮城の私大/被災学生、手厚く支援 

 宮城県内の私立大で、東日本大震災で被災した学生を支援するため、本年度の入学金や授業料を免除、軽減する動きが広がっている。一部は2012年度以降も見舞金を出し、学業継続を後押しする。大学側の負担は軽くないが、震災で学業継続を断念する学生を最小限にとどめようという狙いがある。(佐藤素子)

◎授業料減免、見舞金支給/学業継続、後押し

<多くが1年免除>

 主な私大の支援策は表の通り。(1)学費負担者が死亡または行方不明(2)学費負担者の自宅が全半壊、流失(3)自宅が東京電力福島第1原発事故の警戒区域・緊急時避難準備区域にあり、避難している―などの学生を対象にしている。

 多くは(1)のように親が死亡・行方不明の場合、1年間の授業料と施設費が全額免除となるほか、段階的に半額免除、半期分の半額免除などの形で減免する。対象者に一律に給付金(見舞金)を支給したり、12年度の受験料や入学予定者にも適応したりする大学もある。

 最も手厚い支援策を打ち出すのが、沿岸部にある石巻専修大(石巻市)。保護者の家屋が津波で全壊した場合、11年度の授業料と施設費の全額、12年度は授業料などが半額免除となる2年間の支援を打ち出した。さらに家屋が一部損壊・床下浸水した学生も対象に含め、借りているアパートが被災した学生にも一律5万円を支給している。

<3分の1が申請>

 同大には、全学生・大学院生の3分の1に相当する約600人から申請があった。事務課は「被害の大きさと復興に時間がかかることを考慮し、必要な措置として決断した」と説明する。

 同大経営学科4年の佐藤舞子さん(22)は、石巻市南浜町の自宅が全壊し、父親が経営する自動車整備工場も被害を受けた。本年度の授業料と施設費の計88万円が4月に全額免除になった。

 佐藤さんは6月、岩手県内の銀行から内定を得た。「親の仕事がなくなり、大学を続けられるか、就職はどうなるか心配だった。早い時期に支援を得られ、安心して勉強と就職活動を続けることができた」と振り返る。

 私大で東北最大規模の東北学院大(仙台市)は、11年度の授業料減免に加え、被災の大きさに応じて40万~8万円を年1回最大4年間にわたって支給する緊急給付奨学金を設けた。12年度入学生も3年生まで支給する。

 8月までに、全学生の1割以上に相当する1350人の申請があった。「宮古市からいわき市まで沿岸部出身の学生がたくさん在籍しているため、申請件数は予想を上回った」(学生課)。

 東北学院大の場合、支援策に伴う負担は6億円に上る。3分の2は文科省と日本私学学校振興・共済事業団の補助金で賄われるが、3分の1は大学の持ち出しだ。同大学生課は「負担は大きいが、支援策の効果か、今のところ退学者がほとんど出ていない」と話す。

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