大学分科会(第97回) 議事録 平成23年7月1日

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大学分科会(第97回) 議事録

1.日時
平成23年7月1日(金曜日)16時~18時

2.場所
東海大学校友会館「望星の間」(霞が関ビル35階)

3.出席者
委員
(分科会長)安西祐一郎
(委  員)浦野光人,金子元久,北城恪太郎,長尾ひろみ,濱田純一,菱沼典子,宮崎緑,村松泰子の各委員
(臨時委員)有信睦弘,樫谷隆夫,勝悦子,河田悌一,川嶋太津夫,佐藤弘毅,島田尚信,谷口功,中野正明,林勇二郎,深尾京司,宮田裕子,山田信博,吉田文の各委員
(専門委員)川村隆,黒田壽二,小林雅之,白井克彦の各委員

文部科学省
金森文部科学審議官,森口文部科学審議官,磯田高等教育局長,合田科学技術・学術政策局長,河村私学部長,小松高等教育局審議官,義本高等教育企画課長,藤原大学振興課長,内藤専門教育課長,杉野国立大学法人支援課長,勝野私学行政課長,伊藤私学部参事官,榎本高等教育政策室長,樋口大学改革推進室長,中野専門職大学院室長,松坂私学経営支援企画室長,西川高等教育政策室室長補佐 他

4.議事録

 安西分科会長より,議題のうち「認証評価機関の認証について」は,「大学分科会の会議の公開に関する規則」の第1条第2項の「公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認める場合」に該当し,非公開とする旨の説明があった。

(1)認証評価機関の認証について
 5月23日の第96回大学分科会において,文部科学大臣から諮問がなされた大学基準協会の申請に関する「認証評価機関の認証に関する審査委員会」における審議経過について,審査委員会座長の佐藤弘毅委員より報告があった。
 その後,大学分科会における審議を行い,原案通り答申することについて,可決された。

(2)中長期的な大学教育の在り方について

【樫谷委員】 樫谷でございます。今,ご説明いただいた内容に関係すると思いますが,前回の事業仕分けで様々なご指摘があった内容と,今後議論すべき内容との関係はどのようになっているのか,その辺の整理はできていると考えてよろしいのでしょうか。

【小松高等教育局審議官】 全体としては,資料の中で構成をしていると考えておりますが,中には,事業仕分け等を通じて個別の事業のうち「これは不要ではないか」と話があったものがございます。個々の事業の是非を大学分科会でご議論いただくのは,大学政策という範疇からすると個別になり過ぎてしまいますが,事業仕分けでは,高等教育政策全体の方向性として課題をご指摘いただいているものもございます。そこで,まず予算等でございますと,いわゆる競争的な資金の個別事業の幾つかのものについては,従来のあり方からすると使命を終えている,ないしは効果が低いのではないか,ものによっては一度廃止し,その上で再度見直しをしてはどうか,というようなことを指摘されております。
 旧来のCOEや,グローバル化を進めた事業等については,趣旨はいいとしても,その手法がいいのかということは,改めて考えたほうがいいと考えております。また,学部レベルの教育等を中心としましたGP事業の幾つかにつきましても,同様の議論がございました。予算につきましては,先ほどご説明いたしましたが,昨年の中教審でも,事業仕分けの状況もにらみながら,成果と課題を整理し,今後の課題についてのご指摘をいただいております。これが事業仕分けと予算との関係でございます。
 次に,大学の支援体制に関しましては,いわゆる独立行政法人の形態そのものについての見直しの機運が昨年は特に高かったわけでございます。これらについては,その事業等のあり方について,事業仕分けで様々な課題,批判,指摘がなされその後の中央教育審議会大学分科会の議論の中で,従来型の独立行政法人として業務を実施するということの範囲だけで議論をすべきではないというご指摘もございました。そこで,大学支援型の団体,大学が自律的に運営をしていくような形態が必要ではないかといったことを今後議論する必要があると認識しております。
 これが,先ほどの論点の資料の中でも,また,前回,前々回の議論の中でも同じように大学支援体制,支援団体等のあり方について,政府と大学という二元論ではない視点から,さらに考えていくべきではないか,また,政府も非常にタイトな状態になっておりますので,自主的な支援体制ができている諸外国の例も参考に考えるべきではないかと思っております。
 大きく申し上げますと,事業仕訳において,このような体制や機構の問題と予算の問題について指摘がなされておりますので,それが今申し上げた中に入っていることをご理解いただければと存じます。

【安西分科会長】 本日の議論は,今まで質の保証・向上,機能別分化と連携,組織経営の基盤ということでこれまで審議が行われてきた経緯も踏まえ,今年の夏までには,大学のミッションの明確化に関する施策についての審議を進めたいということでございます。また,夏までだけではなく,それ以降のこともございますが,3つの審議の課題の中でも,特にミッションの明確化ということが,質の保証,あるいはガバナンスの強化にも関係してくるということで,とにかく大学が非常に多数ある中で,大学とは何か,大学はこうすべきだ,ということだけでは,なかなか議論にはならないので,それぞれの大学がミッションを明確化していくということをご審議いただき,その中で,どうバックアップしていくかについてお考えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【河田副分科会長】 本日の資料のその他の関連資料に,「私立学校運営の手引き」があります。これについてご説明させていただきたいと思います。
 まず問題は,平成20年に4年制の私立大学で47.1%が定員割れをしている。短期大学は67.5%が定員割れをしていました。何とかしなければならないということで,昨年,副大臣,私学部長,私学行政課,参事官などと,話し合いをいたしまして,昨年6月20日の「中長期的な大学の在り方に関する第四次報告」になりました。そしてその中で4つ,私ども我々私学事業団が実施することが決まりました。1つが,理事長,学長を対象としたリーダー向けのセミナーの開催です。必ずしも理事長,あるいは学長が大学の経営について熟知していないという事実が存在するから,であります。
 先ほどお配りをいたしました緑色の「大学の魅力向上に向けて」というリーダーセミナーの講演録がつい最近でき上がりました。目次をご覧いただくとわかりますように,第5期からの中教審委員でおられる有信委員,樫谷委員,金子委員,黒田委員,川嶋委員などにご後援していただき,昨年,全国で7カ所,136法人の理事長,学長,約200人にお越しいただきました。その成果が講演録として残っております。
 更にそれから,人材バンク,情報提供について,この「私立学校運営の手引き」を4冊中,3冊まで刊行しております。その3冊の中の1冊が,講演録と同じような緑色の資料でございますけれども,「大学・短期大学の経営基盤強化の事例集」というタイトルにまとまっております。これは第2巻として出しております。また,第1巻目は,「私学の経営分析と経営改善計画」ということで,企業診断と同じように,私ども我々私学事業団で私学の経営の分析をさせていただき,例えば,ある大学,あるいは学部に学生が集まらない,それはどうしてなのかということを分析させていただいております。
 そして,この分析によって,今後も学部を維持していくのか,あるいは撤退かという現状分析を各大学ですすめていただき,今後も維持するということが決まれば,この第2集の事例集をご利用いただければ,様々な大学の成功した事例を参考にすることができます。例えば,最初のテーマは「初年次教育」ということで,埼玉県の上尾市の大学が,初年次教育で非常に頑張っておられる。この大学は政経学部,人文学部,人間福祉学部,各学部は1学年の収容定員が200名,計800名ずつのわずか2,400名の小さな大学でありますけれども,情報をすべて,いいことも悪いことも公表し,そして非常に面倒見のよい学校ということで成功なさっている。特にその中で,初年次教育については,様々な入試方法で入学した1年生の能力に差がある場合に,学生がいかに大学に定着させていくかという方法の事例がございます。ですから,その大学を継続していくと決めた大学は,この事例集を利用し,かつ維持しながら発展していただく。もし撤退というときには,第4巻を見ていただきますと,「私学の自主的な撤退に当たっての留意事項」とタイトルされていて,こういう形で大学を閉じていこうということがわかるようにしております。
 来年度に第3巻を刊行いたします。第3巻は「戦略的な連携・共同事例集」を作成する予定でございます。すなわち,維持,撤退など,こういう形で合併する,あるいは,こういう形で維持していく場合に連携する,そういった相互補完効果を学んでいただくために,こういう形で私立大学の経営を判断し,よい事例,悪い事例,撤退する際の事例により,対応していただこうということで,私たち私学事業団が作成しましたので,ご紹介させていただきました。

【深尾委員】 今の河田委員のご紹介とは論点がずれるかもしれませんが,各大学の使命,ミッションの明確化,直接つながるかどうかわからないですが,本日配っていただいた資料2-2の各大学の使命の明確化についての関連資料の中に,各大学の取り組みをわかりやすく示す仕組みというのがありますので,これと関連した意見です。例えば,この資料の11ページに,「大学情報データベース」で進学,就職状況や,職業別の就職状況が調べられている。将来的にはこれを公表する可能性も考えているという説明があったと思います。私も娘が大学に行っておりますが,学生にとっても,その親にとっても,就職ができるかどうかということが,今の時点では大学に一番求めることであり,そういう面から見ると,これだけの情報で足りるかどうか,例えば非正規の労働につくか,正規の労働につくかというのは非常に大きな問題ですし,例えば,就職できないため,修士課程に進学するという学生もいるわけです。そういう意味でいうと,学生の進路を追跡するような情報が必要であると思います。
 例えば,アメリカであれば,ハイスクール・アンド・アフターといって,高校から進路を追跡し,同じ人がどういうキャリアを積んでいくかという調査が昔から行われており,それが行政に生かされていると思います。特に博士課程の場合,これは大学院になりますが,博士号取得者については,取得者がどうキャリアを積んでいくかというのは,OECD加盟国でかなり調査が進んでおり,日本はその中で割と遅れている方だと聞いています。
 博士号取得者については,科学技術政策研究所がかなり本格的な研究をされるようで,今後充実していくことが期待されていますが,大学についても,やはり学生の追跡調査をして,長期的にどう就職をして,どうキャリアを積んでいくかということを調べ,それを,プライバシーの問題もあるでしょうけれども,一定の形で公表する仕組みが必要ではないでしょうか。この点について,何か検討されていれば,教えていただければ幸いです。

【藤原大学振興課長】 大学院生につきましては,先ほども就職率のデータがございましたけれども,特に博士課程学生につきましては,4月の時点ではなく,その後年度を追って就職がだんだんと進んでいくという状況がございます。私どもは,この後の大学院部会でも具体的にご紹介しようと思っておりますが,卒業後,修了後の状況をもう少し正確に把握していく必要があるだろうということで,委託調査を行っており,当初よりは,かなりポイントが上がってきているという状況も把握できております。
 今ご指摘がありましたことにつきましては,なかなか難しい面もございますけれども,さらに長期的にフォローしていく,実態をどういう形で把握していくのか,というのは非常に重要なことだと思ってございます。

【深尾委員】 学部学生についてはいかがですか。

【藤原大学振興課長】 学部は申しわけございませんが,現在は,大学院だけの話で進めているところでございますので,そこは今後の課題かと思います。

【金子委員】 私は,研究者の立場で学生の就職状況に興味があります。また,多少私自身も取り組んでおります。
 まず最初に,学部学生の就業状況については,非常に把握は難しいというのが現状です。特に各大学で,自分の大学の卒業生に関して一定の調査を実施するというのは,以前,幾つかやっていた大学はあるのですが,個人情報の保護によって今はできなくなっているので,現実に最近はほとんどやっているところはないのではないかと思います。
 また,大学が同窓会の名簿をきちんと持っているのは,実は非常に少ないです。そういった意味で,フォローするのは相当難しいと思います。特に就業状況に関しては,就業してないといいますか,把握できない人の問題がむしろ問題なわけですから,把握できている人だけですと非常に偏りができてしまうという問題もあります。私どもは高校を卒業した学生4,000人について,科学研究費を活用した調査を実施していますが,高校を卒業して4年目で大体捕捉率が5割を切っております。これは例外的に高い方でして,他の調査ですと大体1割ぐらいになるのが普通です。諸外国も学生のフォロー調査というのは実はかなり難しく,イギリスは1年後ぐらいを調査しているものがありますが,アメリカも,先ほどおっしゃっていた高校生の調査も,実は非常にサンプルは少なく,一般的な捕捉は難しいというのが現状と思います。

【濱田副分科会長】 今のような卒業生がどういう形で出ていっているのかという状況把握というのは,私たちも大変大きな課題だと思っております。また,今回の各大学のミッションの明確化ということ,こういったテーマ設定を考えてもそうなのですが,こうした議論の仕方は,どっちかというと,いわばボトムアップの議論なわけです。つまり,各大学が何を目指しているのか,どういう卒業生を送り出そうとしているのか,そこをしっかり把握しながら,それを基準にして,それがきちんと充足できているかということをはかろうとする。それは,私は大変大事だと思うのですが,同時に,今の国,社会がどういう役割を大学に対して期待しているのかという大きなマップというものも,議論しなければいけないのではないかと思います。これは大変難しい課題ですし,精緻な議論が厳格にできるわけではないと思いますが,各大学にどのような需要マーケットがあるのかということを一生懸命探しながら,それぞれの個性を競っているというのが今の状況で,これはこれで大変いいし,そこで競争力が出てくると思いますが,同時に,国の政策ということを考える場合には,国全体として,例えばこの7つの機能があり,どの大学にもその機能が当然期待されるわけではないけれども,それだけではまだ足りないので,こういう人材をどのくらい欲しいのかと,日本国としてはどのくらい養成していく必要があるのか,そういう1つのメッセージをここで出していければ,各大学の運営にとっても,あるいは個性化を強めるに当たっても,これは非常に参考になると思います。
 もちろんボトムアップの議論はしやすいですし,それが軸になっていいと思いますが,俯瞰的に,全体として何を求めていくのか,そういう見方が最終的に加味されるような議論ができればいいと思います。

【金子委員】 今のご趣旨は,大学側から人材の供給をするとしますと,需要側の方がどういった指向を持っているのかということをはっきりさせることも非常に重要ではないかというお話だったと思いますが,前回の中教審では,規模・経営部会があり,規模に関しては,産業別あるいはその他,どういった人材が必要とされているのかということを何らかの形で捕捉できないかということが大分議論されたのですが,問題は,第一は従前のように,例えば日本の大卒労働力に対する需要は,セクター別に非常にはっきりしているのではないかと思います。特に製造業などを中心としてかなり明確に,必要とされることがわかる部分が主流になっている時代,ただ,1990年ごろの日本の大卒者の大体4割ぐらいは製造業関連に就職していますが,今はもう2割を切っていまして,いわゆるサービス業といいますか,非常に多様な業務になっています。しかも,その具体的な事業の内容自体も非常に多様であって,そういった中で必要とされるスキルをどう捕捉したらいいのかということは非常にわかりにくい状況になっているというのが非常に大きな問題だと思います。
 さらにもう1つ,就業形態につきましても,大卒者のうち,卒業後すぐに就職する人は7割を切っています。その中でも,3割くらいは,すぐやめてしまいます。それから,大卒者の就業状況自体もかなり多様化しています。そういった意味で把握が簡単にやりやすい状況ではないということは,現在の高等教育を考える上では非常に重要な点だと思います。
 しかし,産業が何を望んでいるかというのは,単に企業に聞いているだけではやはりわからなくて,これは,どっちが言うかというより,一種のインターラクションしながら,どの部分の能力形成は大学が取り組み,どの部分からは企業が取り組むのかといったことを企業と大学が一種の対話をすることによって,徐々にわかってくるとのではないかなと私は考えます。

【浦野委員】 今の金子先生のお話,そのとおりだと思いますけれども,やはり供給側,需要側と分けるのも問題があると思います。これはまさに企業側がどのような人材をということ以上に,大学の1つの機能として,日本をどうしていくのかという発言がやはり大学からも欲しいです。そういった中で,企業も考え方をいろいろ高めていくことがあると思いますので,これは,最後の金子先生の言葉,要するに大学と企業側が意見交換しながら,日本をどうしていくのかという中からしか生まれてこないと思います。単純に企業に,どういう人材を求めますかではなく,大学がこの日本をどうしていくのかという発言をしてもらいたいと思います。
 それが,ミッションの1つとして考えられると思いますが,私,本日の資料2-1を見ていて思いましたが,ミッションの明確化は,もちろん大事なのですが,それの先にあることがもっと大事じゃないかなと思います。そのミッションを実現していく上で,例えば企業でいえば,経営計画です。そういったものをどう立てていくのかというのが必要だと思いますし,先ほど深尾先生がおっしゃったことも,要するに送り出した後どうなるのかというのも,大学は当然見る必要があると思います。全体としてミッションが実現できたのかということがあるので,大学側も,あたかも4年間で一回りしてそれでおしまいではなく,やはりその4年間のサイクルがどんどんらせん状に上昇していくといいますか,そういう中でミッションがより高まる方法といいますか,そのため,ミッションをもう少し具体的に,ビジョンといいますか,そのようなものに落とし込んで,中期計画的なものを大学の中でもつくっていくことが,このミッションの明確化の先にはあるのではないかと思いました。

【有信委員】 今の議論を伺っていて,かつて非常にうまくいった例があります。これは,高度経済成長のときに,いわゆる産業政策と高等教育政策が非常によくハーモナイズしていた。中堅技術者が大量に必要になるということを見越しつつ高等専門学校をつくりました。高等専門学校に非常に優秀な学生たちが入学し,その後,中堅技術者として大活躍をしました。併せてその間に工学部の定員を増やしていきました。これは文部省の政策で技術者が増えていったもので,これが日本の高度経済成長期における製造業の発展をもたらしました。産業政策と経済政策,それと教育政策というのが極めてうまく回っていたものです。ところが,現在は,はっきり言いまして産業政策は明確でない。高等教育政策は,中央教育審議会で様々な議論をしているような状況でありますし,そういう状況の中でどう取り組んでいくかということを考えなければいけない。
 それから,自然に状況が変わっていく例として,例えば1980年代半ばのアメリカで,急速にコンピュータサイエンスの学生が増えた時期があります。ある時期は,MITのスクール・オブ・アーキテクチャーの定員よりも,コンピュータサイエンス学科の学生数が上回っていたということで大騒ぎになった時期がありました。アメリカの大学の中に,いわゆる定員制が厳格にはなく,学生のニーズ,あるいは社会のニーズに合わせて,フレキシブルに教育の体制が変えられるという状況があったように思います。今の日本の大学は,ある意味でがんじがらめになっているために,様々な要求にこたえられない。社会的な要求,あるいは学生の要求,そういう様々な要求に応じて教育内容が自由には変えられません。極端なことをいうと教育側の都合で学生を教育し,社会に送り出しているという状況が一方にあり,それを様々な制度が支えてしまっているのではないかというおそれもあります。
 一方で,様々な政策がやはりハーモナイズしながら打たれてないという点,ここのところをやはり我々は考え,その中で解をどう見出していくかということをやっていく必要があるような気がします。少し難しい話ではありますが,少なくとも大学の自由度をある意味でどう増やしていけばいいかというのが,大学の機能分化,多様化につながっていくことにもなるのだろうと思います。そこを少し詰めてはいかがでしょうか。

【安西分科会長】 私も高度成長時代,それから,アメリカのコンピュータサイエンス関係,両方とも真っただ中にいましたので,よくわかります。今はそういう状況にないので,先ほどの就職のことにつきましても,あるいは私学の経営のことについても,どうしても丸ごと大学は就職だねというふうに言いがちなのですけれども,ミッションによって,先ほどもありましたけれども,その先のキャリアパス等々のことをここで議論していければと思いますので,そのためにも,大学全体を1つで扱うのではなく,もう少しきめ細かく議論していただければと思います。

【小林委員】 3月に,これまでの高等教育政策で,こういった機能別分化や,それに関する議論というのは,言葉を変えて何回も出てきたのですけれども,なかなかうまくいかなかったのではないかということを申し上げたと思います。今回,機能別分化とミッションの明確化という2つのことになっておりますので,その関連についてはっきりさせておいたほうがいいのではないかと思います。
 といいますのは,こういった議論を,今まで大学,あるいは他の社会がなかなか受け入れてこなかったというのは,それなりに理由があるわけで,どうしてもこういった7つの機能に分けて,それに当てはめていく議論になるのではないかというようなことが言われてきたわけです。ところが,今回はそうではなく,大学がみずから選んでいく。それから,7つについても複数のものを選択できるというような言い方をされているわけですけれども,やはりこういう例示にしてしまうと,この枠の中で向かわなければいけないと,どうしても見られてしまうのではないかと思います。ミッションの明確化というときには,むしろ大学はそれぞれのミッションを当然選んでいくわけですから,この7つに別にこだわる必要はないわけであり,自分でこれとは異なるようなミッションを探していくというのがむしろ重要なことではないかと思います。その辺,機能分化ということと,ミッションという関係はどのようにお考えなのかということです。

【安西分科会長】 今の7つの機能というのは,これは例示だということは私も100回ぐらい言ってきたと思いますが,文科省側の見解をもう一度聞かせてください。

【小松高等教育局審議官】 大学が行う教育研究に関して,全体としては知的探求活動が,社会の複雑化や大学進学率の拡大による様々な多様化,あるいはニーズの多様化ということに照らして,なかなかわかりにくいということが昔から言われております。特に先ほどご説明いたしました各審議会の答申などで,いわゆる「21世紀答申」と言われる10年ほど前の答申から,盛んに議論が集中して深められてきたと認識しております。
 その中で大学が行っている教育研究活動に内在している機能も様々な分類の仕方があるかと思われますけれども,中教審において,いろいろな議論を集約してみると,1つの例示としては,人々の期待なり,実際に発揮されている機能としてこの7つぐらいが例示できるのではないかということでございます。したがって,すべての大学が行っている教育研究には,理屈で言えば7つの機能はどこかしら入っているということになりますけれども,箱をつくって,そこへ大学をはめていくということではなく,内在している機能を見ながら,大学としては一つまたは複数の機能に重点を置いて,Aという学部なり,Bという研究科ではこういう機能を追求する,その同じ大学でもほかのところでは別の機能を追求する,あるいは中期計画などが仮にあったといたしますと,ある時期にはこの部分を重点に押し出して追求をするけれども,それが大体達成されれば,次は他の機能を追求するというような,1つの大学でも変化することがあり得ると思います。そういった内在している機能として,この7つの機能というのが中教審では提唱されました。これは平成17年のことでございます。
 発言にございましたミッションの明確化が,今回の議論の中で出てきているのは,機能が様々に分かれるであろうということ,あるいはそれを見ながら各大学が戦略を立てていかなければいけないだろうということ自体は,人口に膾炙したと思われますけれども,それを具体的にどうするのかという議論につきましては,中教審大学分科会では,それを各大学がみずからどうミッションとしてとらえ,提示するか,あるいはそれを多面的なものとしてプロファリングするか,そういったことに進んでいかなければいけないのではないだろうかということでございます。そこをどうするか,あるいはどう支援するかということを今期でご議論いただく必要があるのではないかと考えております。

【林委員】 機能別分化とミッションの明確化の関連性はわかりにくく,まだよく理解できておりません。ミッションを明確にすることで機能別分化を促し,それによって教育の質を保証し,ガバナンスを強化する。個々の大学が個性化・特色化し、また、そのような大学を連携することで、多様な学生のニーズにこたえ,競争環境のなかで質も上げていく。このようなフィードバックをかけることで、国の高等教育全体の活性化に結びつけていくということだと思いますが,大学には,文系,理系があり,単科大学、総合大学、さらには地方大学,大規模都市圏の大学と多様です。このように種類、規模、そこで学ぶ目的においても多様な大学にミッションを持たせ、それによって機能別分化するには、あまりにも茫洋としている。
 本来のミッションとして,例えば医学部は医師を養成する,教育学部は教師を養成するという明確なミッションがあると思います。これを第一のミッションとすれば、それは学生の需要に応えるもの,学生が望んでいる就業に直接にかかわるものとなる。このように考えれば、大学は、専門分野,学問分野を守備するとともに,それに関わる専門職業人を輩出していくという学部学科の問題に帰っていくことになります。そういったもの積分値が専門分野ごとの需要と供給のバランスとなったものが、いわゆるグランドデザインと呼べるものかもしれない。
 いま議論している、機能別分化を促すためミッションは非常に高邁なミッションのように思います。機能別分化やそれを促すうえでのミッションの議論は、自分たちの大学はどういう方向に行くのか、あるいは区分化されてしまうのではないかというような懸念よりも,むしろこのような高邁な議論よりも現実的な問題があるのではないのか。法人化され、設置形態がばらばらになった今,例えば,学術研究においても,人材育成の教育においても、部局を超えた競争が始まっているし、時には、本来の責務やミッションを果たそうとしても、それが保証されない事態も起きている。
 この問題は、86の国立大学を見ただけでも、予算規模も外部資金の獲得も大きい旧帝大のような総合大学から,人件費が予算の85%をしめ、そとからの資金も取れない文系の単科大学や、教員養成大学もある。すなわち、ミッションと競争、その保証はきわめて重要であり、それは健全なものであらねばならない。総合大学と単科大学、理系と文系、地方と都市圏において、何が起きているのか。そのためにも、第一のミッションと言うか、本来のミッションに近いところで、プラットホーム論をやっておく必要があるのではないかと思います。

【安西分科会長】 今のご意見,おっしゃるとおりだと思うのですが,今までの大ざっぱに自分の感覚で申し上げますと,やはり大学自治ということもありますので,中央教育審議会として,それぞれの大学を分けますよということはできないわけでございます。一方で,待っていれば何かがきちんといくのかというと,そうもいきません。そういう中で本当に,日本の大学全体が沈んできているという感覚があるということであります。先ほどは,小松審議官が言われたように,大学全体が1つのミッションを持たなければいけないということは全く言っておりませんし,今言われたようなことを,ここでかなり前向きに進めていかなければいけないと思っております。

【宮田委員】 私は以前,今いる会社で企業のグローバルのミッションをつくるというプロジェクトに参加していたことがありまして,実際,ミッションをつくる難しさというのはどこにあるかと考えた場合に,いいミッションができるまで,それがいいミッションかどうかがわからない部分があり,ミッションを作成する前に,ミッションをどうするかという議論をするのは非常に難しく,できた後に,それがよいミッションだと,みんな,そうだと言って,組織がまとまっていくという現象がありました。非常におもしろいと思ったのですが,その際に,何となくミッションを作成しましょうではなく,ミッションを作成するにも,様々なスキルや,方法論があり,我々は企業ですので,有名なアメリカの某大学の先生に来てもらいまして,3カ月のプロジェクトとして取り組んだのですけれども,そういった,実際ミッションをどう作成していくのか,どうすればいいミッション,どんなミッションがいいミッションで,どうすればいいミッションが作成できるのか,作成しいいものができると,みんな何か急に腑に落ちて,ああ,そういうことだったのかと思うこともあるので,実際,これを推し進めていくために何の具体的な施策ができるかという話になると,そういったミッションをつくるためのスキルなり方法論なりというのは,皆さん全く想像しないで議論されているのか,イメージがあって議論されているのかわからなくて,もしその辺が茫洋としたまま議論されているのであれば,もしかしたらそういったスキルなり方法論というのを,こういった私学で行っていらっしゃるような,リーダーシップセミナーみたいなものを行って,後押ししていくとか,そういったことも1つの施策になるのじゃないかなと思いました。

【長尾委員】 ミッションという言葉がずっと出ているのですけれども,私のところはキリスト教主義の学校でして,ミッションというのは大変明確です。125年の歴史の中で最初から建学の精神のミッションというのがありますけれども,どうも今,ここで議論されているミッションの言葉の定義というか,共通言語になってないのではないかと思います。そして,私の観点からいきますと,今,林委員が,ミッションというのは医師を養成するとか,教師を養成するとかいう,そういうミッションと言われたけれども,私は,もっと崇高なミッションをミッションと言うべきではないかと思っております。つまり,高等教育のミッションというのは人間教育であり,思考できる人材を養成し,それをどういう分野で取り組むかということが,医師であったり,職業人であったり,国際人であったりというようなところにおりていくので,そこら辺の議論が,今おっしゃったように,言葉の解釈が違ってきていると混乱するかと思います。
 もう1つだけ申し上げたいのは,先ほどの大学情報データベースの中で,例えば,さっきは親としたら就職することに大変関心があると。でも,就職した後,やはり思考する力がなく,人間教育がしっかりなされていなければ,やはりミスマッチがあったりします。大学の機能は,就職率を上げることではないと,はっきり確信しなければいけないと思っています。であれば,大学情報データベースの中で,これを評価の対象としていけば,全く数字だけの競争になってしまうと思います。ミッションの議論をするのであれば,ここにミッションをかけるように,我々はどういう教育をするのか,人間教育としてはどうするのか,ボランティア活動であったり,そういう人間教育をするソフトの部分がないと,私たちみたいな小さい学校,地方の学校は完全に負けてしまうという変な競争原理になってしまいますので,もう少しデータベースを共有するのであれば,ミッションを明確にして,選ばれる大学であるという広報がここでできるようにしていただきたいなと思いました。

【白井委員】 私も今のご意見と似ていると思いますが,要するにミッションをよく理解していません。どこの大学も,みんなミッションが必ず書いてあります。また,その時代時代に合わせて,これから何年間かはどういうことに取り組もうとか,そういうことはみんなお考えで,できているかどうかは別問題としても,相当深刻に考えて取り組んでおられます。そういうものがミッションなのだとして,それが明確ではないかというと,必ずしも明確ではないというわけでもないと思います。ですから,あまり抽象的なミッションを言ってもしようがないと思います。むしろ,どういう分野で実際役に立つのか,あるいは,どういうような人材を育てようとしているのか,どういう学生を受け入れ,どういった人材養成をしようとしているのか,そういうことを,各大学,全てに特徴があり,ねらいがあります。そういうものを分析したほうがいいのではないかと思います。似ている学校はたくさんあるわけで,それはそれでその学校群がお互いにいろいろな情報を共有し,競争し,情報交換することは,今ほとんど行われていませんから,金子先生が前に言われておりましたけれども,やはり大学間で専門性をそれぞれ持っているわけですので,それがどう切磋琢磨するかというような機構は,日本の中で非常に発達していないということは事実でありますので,ミッションということを言うのであれば,これがミッションとつながっているのかよくわかりませんが,そういうところに実効があるのではないかと思います。
 それから,もう1つは,そういうことがはっきりしてくれば,マクロに見たときには,やはり国として,あるいは今の社会の状況として,どういう分野に,どういう人がどのくらい必要なのかということは,自然に出てきます。大体分類して足し算していけば数はわかりますし,それが非常に過多になっていれば,その分野は就職がないに決まっています。ですから,それはそれで,文科省でもまさに,こういう分野に対してはこれだけの学生を育成するのにお金がかかって,このぐらいは要るのだから,そこのところには手厚く学生1人当たり幾らというのではなく,育て方に応じた費用をそれなりに配分するという方法があると思います。そういうのがまさに政策だと思います。
 そういうことを進めていかなければ,ミッションを明確にすることで学生がどう動くのか,学生に選択させるとなる,これは今まで取り組んできた道であり,現実にほとんど効果がありません。ですから,学校をよくするための手段として,学校間でどうするのか,それから,国としてのねらいに対してしっかりサポートしていくということを,今後明確に,設置基準と,それからお金の配り方,その両方を合理的にすれば,国としては合格点だと思います。それで足りなければ,財務省にお金がどうして足りないのかということを言うべきです。こういう産業にこれだけの人が足りない,こういう能力を持った人材を育てるためにこれだけの金が必要だという主張をするべきだと思います。

【安西分科会長】 今,白井委員の言われたこと,あるいは先ほど河田副分科会長,あるいは濱田副分科会長,また皆様のおっしゃったことに対し,今年の夏までには何とかしたいということです。今までミッション,ミッションと言っていたのが,茫漠としていて何だかわからないから,もっとはっきりさせていきたいと。今,18歳人口は120万人ぐらいいて,うち50%以上が大学と名のつくところへ行っております。学生側から見ると,きちんと具体的な情報があって選んでいけるようにする。一方では,国から見れば,どういう分野に対してどのぐらいの学生が行くのか,それに対してどういうサポートができるのか,そういうことが全部できていくようにしていきたいわけです。それをやるのが大学分科会だということでございますので,ぜひよろしくお願いいたします。

【黒田委員】 今年の夏までというのは大変厳しい日程ですけれども,大学の機能を考えたときに,2つの側面があると思います。1つは,日本として大学の機能をどう維持していくかということが1つあります。といいますのは,国家として維持すべき伝統文化をどう大学で維持していくかということが非常に重要な観点だろうと思います。それから,任期はないが消えてはならない学問分野,例えばいま起きています原子力問題,この原子力分野の学者がいなくなってきています。このまま推移すると後継者がいなくなってしまいます。そういう状態を国家として放置していいのでしょうか。国立大学は経済理論だけで学問体系がどんどん縮小されてしまい,重要な分野が消えていっております。そういうところを国としては維持すべきものを維持していくという,それが非常に重要なことだと思います。この辺をどう考えていくかということも,大学分科会で議論していただきたいと思います。
 それから,もう1つは,機能別分化で使命(ミッション)という言葉が出ています。先ほど使命の1,使命の2という話しがありましたけれども,私学にはこのミッションの前に,大学を立ち上げたときの理想,理念,目的があります。建学の精神と言われるものです。これがあって初めてミッションが生まれてくるわけです。その中でどういう人材を養成し,どこに役立つ人材を育てていくのか,そういうことをしっかりとあらわしていく。それを社会に知らしめるために情報公開というのが当然にして起きてくるわけで,私学では,これらすべてが一連の流れの中にあるのです。そういうことを理解した上で,一つ一つの問題を切り離して考えるのではなく,全部がまとまって1つのものになっていくという,そういうことをぜひお考えいただきたいと思っております。

【北城委員】 観念的には,このような大学のミッションや,それをどのように実行しているのかというような議論は確かに必要です。世界の一流の研究をする,あるいは教育をする大学であるとか,専門職業人を養成する大学とか,確かに安西先生がおっしゃるようにそういう機能はあると思います。しかし,その議論を突き詰めても,あまり結果として変化がないのではないかということで,こういう例示はある程度の例示にとどめて,最終的にはそれぞれの大学が,自分の大学はどういう大学として運営をしていくのかということを考えることに尽きます。その成果が出てくれば,それが社会では認められるということになります。ここで世界の一流の研究を行う大学は幾つ,何割あるとか,そういうことを議論しても結果としては難しいのではないかということなので,あまり突き詰めて時間を使うよりも,それぞれ自分で考えていただく。ただし,考えたことを実行できるような仕組みがしっかりとできていて,それが実行されているのか,そちらの議論に時間を使ったほうがいいのではないかと感じます。あまりここで突き詰めるのは難しいのではないかというのが私の考えです。企業であれば,ここで,それほど時間は使わないなと思います。まず決めて行動をし,結果,方向が違っていれば,方向転換をするぐらいで進んでいくと思います。決めたことが実行されているのか,されてないのか,されてないのであれば,どのように改善するのかが大切です。それができるメカニズムをつくらずに理念だけ議論するというのは,産業人からするとわかりにくいところがあります。

【谷口委員】 まずは,それぞれの特徴を言うことができる雰囲気が必要だと思います。例えば,研究推進型の大学ですよと言うと,いい大学,そうでなければ,いい大学ではないというような,そういうレッテルを貼られるというところを各大学が少し警戒し,消極的になっているというのがあるので,皆さんそれぞれの大学は特徴があると思うので,そういう意味では,さきほど話がでたU-Mapのようなものを,例えば,各学部がまずつくられて,また大学全体でもおつくりになったらいいと思います。まずは,作りなさいということとし,そうすることで自分たちの特徴が見えてきますので,特徴を明確にするという雰囲気をつくっていかなければ,なかなか前には進まないのかなという感じがします。
 それで,皆さん,U-Mapのようなものを出してということを進めていって,そこから始めていくということがやはり良いのではないかなと思います。まずそれをしなければ,自分たちの特徴も場合によっては,理解してないのかもしれませんし,自分でU-Mapのようなものを作ってみて,初めて気がつくということもあるのだろうと思います。そして,先ほど言われたように,それを特徴として押し出すのであれば,それがしっかりと特徴となっているかということについて検証していくような仕組みにしていけば,自ずと進んでいく,徐々にかもしれないですが,進めていけるのではないかと思います。そして,この機能分化というところが明確になっていくのではないかと思いますので,そういう単純なことから始めると良いのではないかなと思います。

【安西分科会長】 実行されているかどうかをしっかり評価していくべきだというのは,全くおっしゃるとおりだと思います。そちらはそちらで,これも主観でありますけれども,今,設置,それから認証評価,様々ありますけれども,私が申し上げてはいけないかもしれませんが,ここで議論されているようなレベルでの評価がなされているとは限らないという気がいたします。

【樫谷委員】 北城委員がおっしゃったところとも関係するのですが,多様なニーズにこたえなければいけないということなのですが,多様なニーズにはこたえられないです。つまり,大学全体としてはこたえなければいけないかもしれないですが,個々の大学で多様なニーズにこたえていたらとんでもないことになるわけです。むしろその中で,どの部分に対してどうこたえるかというのはあると思います。ある部分に対しては,こたえられますということはあると思います。それは,ある意味では分析があって,自分の大学の強み弱み,様々な分析の手法がありますので,そのように取り組めば,多様なニーズの中でどの部分に対してどうこたえられるかという回答もおのずから出てくるはずです。そうすると,その次に出てくるのは,どのようにすればいいのかという具体化です。具体化していけばいいわけです。具体化し,実行していく。実行するときに,ばらばらになっているのでは実行はできませんから,大学が一体となってやらなければいけません。これはマネジメントの話です。
 河田副分科会長に務めていただいた,事例集や様式集,そういったものをどんどん出し,具体的に自分の大学はどう取り組んでいくのかということを考えていただかないと,全体の話をしていても全く進まないと思います。むしろこういう具体的なものをどんどん実行し,強み弱みの仕方がわからない場合には,こういった手法がある,こういった事例がある,ということでこの事例集等を見てくださいと具体的に落とし込んでいったほうが物事は進んでいくのではないかと思います。何か空中戦をしているような感じで,全然地に足がついてないような気がいたします。

【中野委員】 私は,ミッションという大学の社会的使命を考えることは非常に有意義なことだと考えました。先ほど長尾委員や黒田委員から,建学の精神という言葉が出たり,あるいは林委員からは,学部学科の使命の話も出ましたけれども,やはり建学の精神というものがあって,特に私立の場合はそこを目指して学校が成り立っており,その使命に則って様々な学部学科や,人材養成の目的を持っていると思うのですけれども,例えば教員養成であったり,あるいは資格養成等の養成課程においては,国の指針があって,一定の内容を確保しなければいけないという部分があり,なかなか大学の建学の精神やミッションを考えようとしたときに,どうしても両方のはざまになってしまったり,あるいは教師は非常に自己主張が強くなるわけです。自分の専門分野の,資格養成のための分野に自己主張が強くなることなどがあると,やはりミッションを共通認識として持てるということを各大学が考えることは重要なテーマだと思います。
 さらには,1つご協議いただくことも必要ではないかなと思いますのは,例えば人文系,どちらかというと職業に直結するとは必ずしも言えないような分野においては,果たして職業人教育というのを非常に強くおっしゃる昨今ですけれども,大学教育のミッションや,人間教育,そういう高邁な崇高なことを考えるときに,哲学あるいはそういうものが本当に職業教育に直結する分野としてどうなのかと考えています。しかし,それは大学教育においては必要な分野だろうと思いますので,こういったところをどう考えながら議論していくのかということもお願いしたいと思います。

【山田委員】 大学は今までいろいろな努力をして人材を輩出してきておりますし,それによって社会の基盤を形成してきていると思いますただ,我々相当な努力をしてまいりましたけれども,今回の震災を経験してみて,我々には,まだ足りないところがあるのではないかというところが,社会全般でも気づき始めたところではないでしょうか。社会に大学の人材育成機能が信頼されるという意味でも,もう一度大学のミッションというものを整理し直し,そして実際にどんな人材を我々は具体的に育てていくことが,震災後,まさにリスクテイクをしながら,そして社会を前に進めていくような人材を輩出していくような大学に成長するかどうかという,ある意味で震災後の1つの大事な流れになるのではないかと思います。そして,それは社会との信頼関係を築くことになるという印象を持っております。

【濱田副分科会長】 特に民間企業の方に申し上げておきたいのですが,ミッションというのはわかりにくいかと思いますが,これは,一言で言えば競争力です。そういうふうに理解いただければいいと思います。

【深尾委員】 確認ですが,競争力でいいのでしょうか,それとも社会的な意味というか,つまり,企業であれば競争力だけでいいと思いますが,それだけなのかどうかというのはいかがでしょうか。

【安西分科会長】 それでは,次回の大学分科会は7月27日になりますけれども,引き続き議論させていただきます。この議論は,今期だけではなく,今まで延々と進めてきた問題です。先ほど言われたように,このような議論をしていても意味がないのではないかということも,痛いほど自分としては知っているつもりでございます。にもかかわらず,どうしても,この議論をせざるを得ないのは,やはり大学側が全体としてはなかなか動かないということです。そのことは最後に申し上げておきたいと思います。
 個々の大学はそれぞれ一生懸命やっておられます。しかし,日本の大学全体としては,大学全体の議論をいつまでしていても,全体が沈んでくるという,そういう危機感があり,いつまで議論していてもしようがないので,どこかで何かの判断をしていかなければいけないと思っておりますので,ぜひご協力いただければと思います。

(3)第2期教育振興基本計画の策定について,文部科学省から資料3の説明があった。

(4)今後の日程について,文部科学省から資料4の説明があった。

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