<特別決議 1>
玄海2号機、3号機の再稼働に反対する
福島第一原発の大惨事と、それによって引き起こされた広範囲に及ぶ甚
大な被害は、多かれ少なかれ原子力の「安全神話」に洗脳されていた私
たちに強い衝撃を与えた。これだけの犠牲が払われた以上、これを今後
はいかなる類の「安全神話」にも二度と騙されないという強い戒めとし
なければ、我々はあまりにも愚かということになろう。
ところが7月4日、玄海町の岸本町長も佐賀県の古川知事も、海江田経
産相が「安全対策は国が責任を持つ」と発言したことなどを理由に、町
長は再稼働に同意し、知事は「安全性はクリアされた」と発言した。福
島第一原発の大事故の原因は「国が安全に責任を持つ」と発言していな
かったためであろうか?このような両氏の態度は、原発という巨大なリ
スクに対してあまりにも安易であり、「安全神話」の再生産である。
町長や知事のこのような態度は、国が「ストレステスト」という追加的
な安全策を出してくるや、一夜にして崩れた。しかし「ストレステス
ト」も結局のところコンピュータによるシミュレーションに過ぎず、そ
の妥当性を第三者が確かめるのは困難であり、実行不可能な「実験」の
代わりになるものでもない。しかも政府は、定検中の原子炉については
簡易なものですませると発言しており、これを単に再稼働のための方便
にしようとする意図がうかがえる。
福島の事態はまだ収束していないどころか、これからもどのような重大
事態が起きるか予想出来ない。また、原子力安全・保安院は地震で原子
炉は損傷を受けていない断定し、そのため今回の「緊急安全対策」には
地震への対策は含まれていない。しかし地震で原発が壊れなかったかど
うかが、実際に原子炉配管などを見て確認されたわけではない。福島と
同じ震度6強の地震が玄海で起きないとだれが断言できるだろうか。
再稼働しようとしている2基のうち3号機は、福島第一の3号機同様、
プルトニウム燃料が追加されたプルサーマル運転であり、安全性に疑問
が多い。また2号機のすぐ隣では、原子炉容器老朽化の懸念が大きい1
号機が運転中である。現在稼働中の火力発電などによって当面の電力供
給にさほどの心配がない中で、これら2基の再稼働を急ぐ理由は全くな
い。国や県の「説明番組」や「説明会」は、九電によるやらせメールや
参加者動員など、今や「世論操作」の疑いが濃厚となった。
ひとたび重大事故が起きればその被害は佐賀県にとどまるものではな
い。玄海原発では現在2基が運転中であるが、2基の再稼働で2倍にな
れば重大事故の確率も単純には2倍になる。われわれとわれわれの家族
の安全を守るため、そして周辺の多くの人々の安全のため、これら2基
の再稼働は絶対に認められない。
2011年8月1日 佐賀大学教職員組合定期総会
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<特別決議 2>
「子ども年20ミリシーベルト基準」の明確な撤回と、福島県を中
心に子どもの疎開を含む抜本的な被ばく低減策を求める
文科省が4月19日に出した、福島県の学校における「年間
20ミリシーベルト」の被ばく基準(上限値)は、18歳未満の就労
が禁じられる「放射線管理区域」のレベルの約4倍に相当する極端に大
きな値であり、子どもの健康と生命への重大な脅威である。この基準ゆ
えに「この値以下なら安全」とする風評が広がっているが、これは我が
国の放射線防護の法令等の基礎となっているICRP(国際放射線防
護委員会)の「閾値(いきち)なし、線量 ―効果の
比例関係」という前提に全く反する。しかもICRPのリスク見積も
り自体も楽観的過ぎるとの批判もある。
このまま放置されると子どもたちに将来深刻な健康被害を生じる恐れが
ある。この基準の一刻も早い撤回と、子どもたちの疎開も含む被ばく低
減策が必要である。佐賀大学教職員組合と組合員は、そのためのあらゆ
る努力と支援を惜しまない。
2011年8月1日 佐賀大学教職員組合定期総会