地方から首都圏私大へ、仕送り減らしても「299万円」『産經新聞』2011年5月26日付 教育動向 

『産經新聞』2011年5月26日付 教育動向 

地方から首都圏私大へ、仕送り減らしても「299万円」

今年の大学の新入生は、東日本大震災の影響で、首都圏でも全学的な入学式がなくなったり、夏の計画停電を見越してゴールデンウイーク中にも授業を行ったりする大学が出るなど、ちょっと大変だったかもしれません。でも、地方からお子さんを送り出し た保護者の方々にとっては、これからも大変な状況が続きます。首都圏私大に進学させるための家計負担が、年々重くなっているからです。

「東京地区私立大学教職員組合連合」(東京私大教連、1都9県の80大学・短大が加盟)は、毎年、新入生の家計負担について抽出調査を行っています。最新の調 査結果(※外部のPDFにリンク)によると、1年前(2010<平成22>年度)の時点で、受験も含めて入学の年にかかる費用は、地方出身者(自宅外通学 者)の場合、平均で約299万円でした。300万円を超えていた前年度(09<平成21>年度)に比べれば1万5,000円下がったのですが、これは、12月までの仕送り額を、1万6,000円減らしたからです。年収に占める割合は、前年度と同じ34.0%。裏を返せば、年収の3分の1を占める約300 万円が用意できないと、首都圏の私大にはなかなか進学させられない、ということです。

実際、地方の家庭で、入学費用を借り入れで用意したの は24.3%(前年度比0.4ポイント増)とほぼ4世帯に1世帯で、借入額の平均は178万5,000円(同3万2,000円増)でした。なお、自宅通学 の場合、借り入れ世帯は17.0%(同1.1%減)、借入額は134万6,000円(同6万2,000円減)といずれも減っていますが、これは、首都圏の 家庭が比較的豊かになったというより、あまり多額の借金は控えたい家庭の子どもが、お金のかかる大学をあきらめたことの反映かもしれません。実際、奨学金 を申請した割合は自宅外生、自宅生を問わず増えていますし、受験から入学までの費用が「たいへん重い」と感じている割合は、自宅外の場合で49.4%(同 2.3ポイント増)、自宅の場合でも44.0%(同2.3ポイント増)と、負担感が増しています。

その一方で、そうした家庭の状況に配慮し て、独自に授業料を免除・減免したり、奨学金制度を設けたりするなど、家計支援を行う私大は年々増加しています。文部科学省も、今年度予算(※外部の PDFにリンク)で、日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金の貸与人数を約8万8,000人増やす(計127万2,000人)などの対応策を取ってい ます。家計が多少苦しくても、高校の先生に相談するなどして、さまざまな可能性を探っていただきたいと思います。

ただ、これまで本欄でもお伝えしてきたように、そもそも日本は、大学など高等教育に進学するお金がかかりすぎている国です。とりわけ東日本大震災の被災地では、今春、大変な思いでお子さんを首都圏に送り出したことでしょう。

これからの日本を背負っていく若者の可能性を狭めないためにも、より一層の家計負担の軽減策を求めたいものです。

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