大卒就職率:被災地悲鳴「就活なんて」…過去最低タイ『毎日新聞』2011年5月24日付

『毎日新聞』2011年5月24日付

大卒就職率:被災地悲鳴「就活なんて」…過去最低タイ

 過去最低に並ぶ91.1%を記録し“超氷河期”を印象付けた大学生の就職率。現在活動している学生からは「タイミングが悪い」「内定取り消しが心 配」と不安の声が上がる。東日本大震災の影響も大きく、被災地の大学では、地震や津波の被害の大きさから就職活動に集中できない学生の実態も浮かぶ。長引 く景気の低迷と大震災の苦境が「就活生」を直撃している。【福田隆、遠藤拓】

 「毎年この時期(5月下旬)には、4年生約500人中80人ほどが内々定をもらってきたが、今年はたったの4人。ショックでした」

 東日本大震災で在学生6人、入学予定者1人が亡くなった石巻専修大(宮城県石巻市)。ようやく授業が始まった20日、進路支援担当掛(かかり)長の菅野(かんの)定義さん(44)は、ガイダンスに集まった約300人の4年生の活動状況を知って声を失った。

 「就職のことが考えられない」「活動を止めていた」など、震災の混乱から抜け出せない状況がアンケートにつづられていた。同大学の今春卒業生の就 職率は80.4%。前年より10.4ポイントも下がった。被災企業が、通常3月に実施する追加採用をやめた影響が大きいという。菅野さんは「なんとかやる 気を出して、内定をつかんでほしい」と祈るように話す。

 東北学院大(仙台市)4年、藤原将司さん(21)は実家のある岩手県での就職を希望しているが、まだ内定はない。「就職氷河期、そして震災と今年度の就活生は二重苦。地元志望の学生は皆焦っている」と声を落とす。

 首都圏の国立大の男子学生(22)も「こんな時に就活をするのは不運としか言いようがない」とため息をつく。希望する出版業界を多数受けたが失敗。大学に残る「就職留年」の道を選んだが、震災の影響で第1希望の企業が採用を見送る可能性もあると心配する。

 地域別就職率で最大の下落率を記録し、9割を切った中部地方。愛知工業大(愛知県豊田市)の就職率は89.6%と前年比微減だったが、キャリアセンターの粟津敬雄次長は「自動車業界の回復の遅さが影響している」と見る。

 厚生労働省によると18日現在、今春就職予定だった大学・短大・専門学校生など139人を含む345人の学生や生徒が、震災の影響で内定を取り消 された。同大学でも、東北地方に取引先がある自動車関連企業が倒産し、1人が内定取り消しに。粟津次長は「地元の自動車関連企業が追加採用をやめるなど、 今後も震災が大きな影響を与えるのではないか」と警戒する。

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