『河北新報』2011年4月16日付
東北大、770億円被害 28棟・7000機器損壊
東北大は15日までに、東日本大震災による被害状況をまとめた。学生2人、入学予定者1人が津波で死亡、宮城県女川町の農学研究科付属施設など28棟が、建て替えが必要な状態となった。実験機器約7000台も損壊。被害総額は計770億円に及び、研究活動に大きな支障が出そうだ。
亡くなったのは発生当時、名取市内にいた農学部4年と経済学部1年の女子学生。農学部に入学予定だった陸前高田市の女子高校生も死亡した。学生約500人が家屋流失の被害に遭った。
研究施設など建物の被害額は約440億円。建て替えが必要な28棟のうち、女川町の農学研究科付属複合生態フィールド教育研究センターなど16棟は津波で全半壊した。
仙台市青葉区の青葉山キャンパスの工学研究科人間・環境系実験研究棟、川内キャンパスの東北アジア研究センターなど12棟は応急危険度判定で危険と判定され、立ち入り禁止となった。ほかにも多くの施設で全面改修が必要になっている。
研究機材では、仙台市太白区の電子光理学研究センターで、高速の電子線を発生させる粒子加速装置(約13億円相当)が損壊し使用不能となったほか、各研究科の電子顕微鏡や、大学病院の診療機器なども破損し、計330億円の被害が出た。
調査を終えていない施設や7日の余震の被害が明らかになれば、被害額はさらに膨らむ可能性がある。今後、文部科学省の調査を経た上で、4月中にも建て替えや改修に着手する方針だが、復旧までには3年近くかかる見込み。
研究活動を継続できるよう、仮設の実験棟を早期に整備するほか、他大学の施設の使用などに向けた調整を進めている。
講義は被害を免れた施設を活用し、4月下旬から順次再開する。遅れた分は夏休みを短縮する形で対応する方針だ。
東北大は「早急に復興計画をまとめ、施設の再建を進めたい。被災した学生への経済的支援や自宅を流された学生への寮のあっせんなどの対応も急ぎたい」としている。