東日本大震災:北里大、キャンパス移転 4年間、岩手・大船渡から神奈川『毎日新聞』2011年4月12日付

『毎日新聞』2011年4月12日付

東日本大震災:北里大、キャンパス移転 4年間、岩手・大船渡から神奈川

 ◇地域経済に影響 市の危機感強く

 東日本大震災は大学生のキャンパスライフも打ち砕いた。岩手県大船渡市三陸町越喜来(おきらい)に三陸キャンパスを置く北里大海洋生命科学部は今年度から4年間、神奈川県の相模原キャンパスで授業を行うことを決めた。豊かな海が広がる充実した研究環境から離れることに、学生たちは「残念」と口をそろえる。約570人の学生を一度に失う地元も、早期の授業再開を強く望んでいる。

 三陸キャンパスは、72年開設。1年生が相模原市、2~4年生が大船渡市で学んできた。北里大によると、学生のアパートの多くが被災し、校舎も耐震性を検査する必要があることから、相模原行きを決めた。4年後に大船渡市に戻るかどうかは未定という。

 3年の竹内龍太郎さん(20)は「養殖技術を研究し、自給率を向上させたい」と同大に進学した。ホタテやアワビの養殖が盛んなこの地で充実した学生生活を送っていたさなか、津波が襲った。

 3月11日は実家の静岡県下田市に帰省中だった。4月3日にアパートの荷物を取りに大船渡市に戻ると、世話になった漁師の家はつぶれ、集落の姿が思い出せないほどだった。1人暮らしをしていたアパートは倒壊を免れたが、部屋の中はあらゆる物が散乱していた。

 同じ生物部に所属していた友人も行方不明のまま。予期せぬ形で三陸を離れることに「やっぱりショック」と落胆を隠さないが「三陸で学んだことを生かし、養殖の研究に力を注ぎたい」と話す。

 事実上の三陸キャンパス閉鎖に、市の危機感は強い。戸田公明市長らは、3月29日に東京の運営法人を訪問し、「地域経済への影響は計り知れない」と授業の早期再開を求めた。

 地元で下宿「寿荘」を運営する新沼さつ子さん(82)は「借金でアパートを建てた人もいる。大学がなくなるのは本当に影響が大きい。戻ってこないと思うので、下宿はやめる」と話している。【蒔田備憲、銭場裕司】

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