未曾有の東日本大震災 ―――政府の責任による救助・救援・生活再建支援と住民本位・人間本位の復興を求める 2011年 3月19日 自由法曹団 団長 菊池 紘

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未曾有の東日本大震災 ―――
政府の責任による救助・救援・生活再建支援と住民本位・人間本位の復興を求める

1 はじめに

3月11日に発生した東日本大震災は、7千人近い死者、2万人近い行方不明者を数える戦後未曾有の自然災害となった。東北3県を中心とした被災地では、いまこのときも救出・救援の活動や被害防止の活動が続けられている。また、地方自治体では、行政機能そのものが被害を受けているにもかかわらず、住民を守る努力が続けられている。

全国2000名の弁護士で構成する自由法曹団は、大震災で被害を受けた被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げるとともに、救出・救援や被害防止、住民保護のために奮闘されている皆さんに、心から敬意と感謝をささげる。

2 応急措置と情報の提供

大震災から1週間余を経たいま、損傷を受けた福島第一原子力発電所では深刻な原子力被害の発生が懸念され、医薬品や物資の不足のもとで避難した被災者が生命を失う痛ましい事態も続いている。被災地ではライフラインが復旧を遂げておらず、東日本各地では電力不足による交通機関の運行休止や「輪番停電」なども続いている。こうしたもとで社会不安や疑心暗鬼が広がりつつあり、「情報隠し」や「対処の立ち遅れ」が指摘されるなかで政府や東京電力などの関係諸機関に対する不信も拡大しつつある。

政府や関係諸機関は、あらゆる努力を傾注して対処にあたり、なんとしてもこれ以上の被害の拡大を防止しなければならない。また、発生している事態や起こりえる事態についての情報は迅速かつ適切に全国民に提供されねばならず、被害防止のための避難指示なども必要に応じて適切に講じられねばならない。

災害対策基本法にもとづく応急措置によって生命が守られ、これ以上の被害の拡大を招かないことが、大震災に立ち向かう第一歩である。

3 政府の責任での救助・救援

数十万におよぶ被災者が避難所などでの生活を余儀なくされ、住居にとどまった被災者も食糧や飲料水、医薬品などの生活必需品が届かない生活を強いられている。また、この国の内外から多額の義捐金が寄せられ、企業による支援物資等の提供も続いているにもかかわらず、被災者のもとに物資が届かない事態も報じられている。

すべての被災者のもとに一刻も早く支援物資が届くようにすることは、いまこのときの喫緊の課題であり、広範な支援のネットワークと被災者を結びつけて被災者を激励する道である。そのためには、集められた義捐金は留め置かれることなく直ちに支援物資として提供され、輸送や分配に最大限の考慮が払われねばならない。

生活再建に踏み出す「寄る辺」となる仮設住宅や公的住宅が迅速かつ適切に提供されることが、生活者の「立ち上がり」を保障する。被災地の実情や被災者の要求に応じた仮設住宅などの提供が、すみやかに準備されねばならない。

災害救助法は、被災者の救助・救援を国の責務としている。救援・救助は政府の責任であり、被災者の「自助」や善意による「共助」だけにゆだねられてはならず、「地域主権」の名のもとに地方自治体に転嫁されてはならない。

4 生活再建とまちづくり

激しい地震と想定を超えた津波によって、多くの地域が深刻な破壊を蒙り、まちぐるみ消失した地域も少なくない。被災者の住居や生活の再建をはかり、産業・事業を再生して就業の場を確保し、地域の復興・まちづくりを実現していかなければならない。

生活基盤を破壊された被災者の生活再建は公的に保障されなければならず、「自己責任」の世界に追いやられてはならない。政府の責任で災害への保障を行うことは、憲法第25条が求める社会国家の責務なのである。1995年に発生した阪神・淡路大震災の教訓から生まれた被災者生活再建支援法の理念は、東日本大震災の被災の実情に照らして、さらに発展させられなければならない。

また、復興にあたっては、住民本位・人間本位の復興・まちづくりの見地が最後まで貫かれねばならず、仮にも、経済再建が優先されて生活再建が取り残されることがあってはならない。これまた、阪神・淡路大震災の痛切な教訓である。

5 大震災と自由法曹団

阪神・淡路大震災に際して、自由法曹団は、対策本部を設置し、被災地での法律問題の対応などで明らかになった問題点を政府・自治体に投げかけ、政策提言なども行った。また、訪米調査によって明らかになったアメリカの震災対策を紹介し、「災害への保障」を求め続けて、生活再建支援法の実現に貢献した。

自由法曹団は、今回の震災について、東日本大震災対策本部を設置した。阪神・淡路大震災での経験を生かし、被災地の自由法曹団員・法律事務所とともに全力をあげて被災者・被災地支援にあたりたいと考えている。

6 おわりに

未曾有の震災から立ち上がり、復興・まちづくりを遂げることは、長い年月を要する国民的な事業となるに違いない。

自由法曹団は、政府や関係諸機関が、憲法の理念に立った被災者支援、復興・まちづくりに全力をあげることを要求するとともに、自由法曹団自身も、法律家団体としてそのために奮闘するものである。

2011年 3月19日
自由法曹団
団長 菊池 紘

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