『毎日新聞』2011年1月17日付
研究者:大丈夫?ニッポンの科学技術 注目論文が減少 人件費圧縮、若手減・非常勤増
◇科技会議、国立大などの現状分析
研究者総数が増える一方、若手は逆に減り女性の比率も伸びず、世界に注目される論文も減っている--。政府の総合科学技術会議(議長=菅直人首相)は6日、国立大や研究機関などの研究者の現状を分析した報告書をまとめた。経費削減から、若手研究者では非常勤が増えるなど「非正規雇用」化が進んでおり、厳しい研究現場の実態が浮かんだ。
国立大や研究を行う独立行政法人(研究独法)など計123団体を対象に09年度までの活動状況を調べた。
その結果、研究者総数は国立大が約6万人で08年度に比べ0・4%、研究独法は約1万人で4年間に6%増えた一方、37歳以下の若手教員数は国立大で4年間に8・7%減ったほか、研究独法でも若手研究者は2・7%減。研究独法では任期制限のない常勤職が22%減り、逆に非常勤が52%増加。国立大でも同様に非常勤を増やして教員の人件費を圧縮する傾向がみられた。
女性研究者の比率は、国立大が12・6%、研究独法が11%にとどまり、現行の第3期科学技術基本計画(06~10年度)の目標値25%に及ばなかった。
研究成果では、引用回数が上位10%に入る注目度の高い論文の世界シェアが、国立大では01~03年の3・3%から05~07年に2・8%に減少。特に、日本の得意分野とされる半導体や合金類などを扱う材料科学は6・2%から3・9%に急減し、計算機や環境科学など次世代の注目分野でも伸び悩んでいることが分かった。
報告書は「(新興国の発展で)国際競争が激化する中、独創性や多様性に富んだ基礎研究の抜本的強化を図るべきだ」と指摘した。【山田大輔】