「地元回帰」「資格志向」 大学入試、今年の傾向『産經新聞』 2011年1月9日付

『産經新聞』 2011年1月9日付

「地元回帰」「資格志向」 大学入試、今年の傾向

 15、16日に迫った大学入試センター試験を皮切りに今冬の大学受験シーズンが本格化する。大手予備校の調査では、地方大学を志望する受験生が増えており、学部別では、看護師や教員などの資格が取得できる学部の人気が高い。予備校の担当者は「長引く不況で、地方からの上京費用がいらない『地元志向』、就職を視線の先に置いた『資格志向』が強まっている」と分析している。

 独立行政法人「大学入試センター」によると、センター試験受験予定者は55万8984人。大手予備校「河合塾」の予想では、センター試験を受けない受験生も加えた大学志願者の総数は、前年比約5千人増の約68万5千人となる見通しだ。

 河合塾が昨年10月の全国模擬試験で調査したところ、国公立大学の志望者全体は前年度比で5%増だったのに対し、近畿地区の国公立大を志望する受験生が9%増、北海道が8%増、東海・北陸が7%増と顕著な伸びを見せた。

 私立志願者も全体で増えているが、北海道と東北、中国・四国にある学校を志望する人がいずれも18%増、九州が13%増、近畿が12%増と2けたの伸び。一方、関東・甲信越は6%増にとどまった。

 別の大手予備校「代々木ゼミナール」の調査でも地元志向の傾向が出ており、国公立、私立ともに、東京、首都圏の大学志望者は前年比2%減だった。

 全国大学生協連が今年度の新入生の保護者を対象に実施した調査では、出願から入学までにかかる費用だけでも自宅生と下宿生では国公立、私立ともに約80万円の差があった。河合塾教育情報部の富沢弘和チーフは「不況が受験生の志願動向に影響し、上京志向が強かった地方の学生が、地元志向にシフトしている」と分析する。

 また、学部別にみると、卒業後の就職を見越し、資格が取得できる学部が人気。河合塾の調査では国公立の「医・歯・薬・保健」系学部が前年比で9%増、私立でも16%増と大幅に伸びた。管理栄養士などの資格が取得できる「生活科学」系も国公立で15%増、私立で20%増。特に女子の受験生の人気を集めているという。

 文系でも教員養成課程がある教育学部が国公立で10%増、私立で17%増と大幅アップ。逆に、法学部や「経済・経営・商学部」系は伸び率が鈍かった。駿台予備学校の模擬試験でも、国公立、私立ともに「教員養成・教育」や「生活科学」「医・歯・薬・保健衛生」などが伸びている。

 不況の影響で、大学生の就職内定率は過去最低の57・6%(昨年10月1日時点)に落ち込む。こうした中、代ゼミの坂口幸世入試情報センター本部長は「地方から一人暮らしのための費用をかけて首都圏の大学に進学しても就職できるかわからない。地元で進学し、就職に有利な資格が取れる学部を選ぶ傾向になっている」と話している。

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