11年度予算:編成大詰め ぎりぎりの調整続く『毎日新聞』2010年12月17日付

『毎日新聞』2010年12月17日付

11年度予算:編成大詰め ぎりぎりの調整続く

厚生労働省関連予算について折衝する細川律夫厚労相(左)、野田佳彦財務相(中央)、玄葉光一郎国家戦略担当相(右)=東京・霞が関の財務省で2010年12月17日、植田憲尚撮影 税制改正大綱がまとまったことを受け、11年度予算編成は24日の政府案決定に向け、ラストスパートに入った。17日は野田佳彦財務相と玄葉光一郎国家戦略担当相の2人が、各省庁の大臣との間で主要案件についての閣僚折衝を始め、文部科学省の「小学校の少人数学級化」などが決着した。ただ、基礎年金国庫負担の財源探しや、子ども手当の地方負担の扱いなど、なお難題も残されており、ぎりぎりの調整が続いている。【坂井隆之、植田憲尚】

 「ターミネーターが来襲したのかと思った。これからの交渉はSP(警護官)を付けなければいけない」。野田財務相は16日の会見で、ボディービルが趣味の馬淵澄夫国交相を人気映画の主人公にたとえ、交渉の厳しさを冗談まじりでこぼしてみせた。

 焦点は、国交省所管の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の剰余金(最大1.5兆円)。財務省は、基礎年金の国庫負担割合を50%に維持する財源(2.5兆円)確保のため、全額を国庫に返すよう求めている。これに対し、国交省は「鉄道支援に充てるのが筋」と一部を機構に残すべきだと反発する。馬淵氏は16日、財務省に突然、乗り込み、野田氏に直談判。想定外の強硬姿勢に、財務省は目標としていた週内決着を断念せざるを得なかった。

 さらに週明けから厳しい交渉が予想されるのが、子ども手当財源の地方負担を巡る総務省との折衝だ。11年度から3歳未満の子ども手当を7000円上積みするために必要な約2400億円の財源のうち、財務省は約400億円の負担を地方側に求めている。しかし、地方の反発は強く、16日に開かれた政府と全国知事会との会合では「(上積みは)国が一方的に決めたもので負担を求めるのはおかしい」との不満が噴出。総務省も地方の声を受け、後には引けない状況になっている。

 地方交付税を巡っても、財務省が「景気持ち直しで地方税収が増えている」として減額を迫っているのに対し、総務省は10年度とほぼ同額の17・6兆円を要求。来春に統一地方選が控える中、政府・与党内から地方への配慮を求める声が強まるのは確実だ。

 11年度予算編成では、国債費を除く歳出を71兆円以下に抑えるとともに、新規国債の発行を44兆円に抑制する目標が定められている。公共事業を約5%削減する方針を固めるなど、厳しい要求圧縮が進められているが、一方で歳出膨張圧力も強まっている。予算編成の最終盤に向け、閣僚間のつばぜり合いは激しさを増しそうだ。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com