『毎日新聞』北海道2010年12月11日付
ノーベル賞:鈴木・北大名誉教授受賞 佐伯学長にインタビュー
◇新研究の芽育てる
鈴木章・北海道大名誉教授(80)のノーベル化学賞受賞の意義や今後の北大の教育・研究体制の方向性について、佐伯浩学長(69)に聞いた。
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最近、大学での研究は成果を早く出すことばかりが求められているが、個人の独創的な考え方に基づきじっくり研究した鈴木先生の業績がノーベル化学賞を受賞した意味は大きい。今回の受賞で、北海道大の名前が世界中に知られ、中国人留学生が「こんな素晴らしい大学に入学できて良かった」と話していると聞きうれしい。
いま学内で、世界や国内でのトップレベルの研究分野にどんなものがあるか、リストアップを進めている。北大には鈴木先生の有機化学以外にも、人獣共通感染症や社会心理学を使って個人の心が社会の形成にどうかかわるかという研究、宇宙の成り立ちの解明に重要な同位体顕微鏡の開発など、優れた研究が行われている。今年度中に冊子を作り、「北大を特徴づける研究は何か」を社会にアピールしたい。
北大が次のノーベル賞を目指していくには、新しい研究分野に人を振り向けていくことが大切。過去の研究成果の継承も大事だが、研究テーマや組織を絶えず見直し、社会の変化に対応し、新しい研究の芽を育てていくことが重要だろう。
来春から総合入試が始まる。大学に入学した初年時は幅広い教養を身に着け、そのうえで自分の専門を見つけようという狙いがある。ノーベル賞受賞もあり、道外での説明会には予想以上に大勢が訪れ、優秀な人が集まってくれると期待している。(談)