【教育動向】重すぎる教育費、低所得者の6割近くにも『産經新聞』 2010年12月9日付

『産經新聞』 2010年12月9日付

【教育動向】重すぎる教育費、低所得者の6割近くにも

中学校から高校、大学へと進むにつれて、教育費がかさんでいくことは、保護者の方々が日々実感されていることと思います。そんななか、日本政策金融公庫の調査で、年収に占める在学費用の割合が、平均で4割近く、低所得者層では6割近くにも上ることがわかりました。しかし数字の裏には、もっと深刻な事態も見えてきます。

調査は、同金庫が行っている「国の教育ローン」(高校以上の在学生が対象)を利用する世帯を対象に、毎年実施しているものです。今回は2010(平成22)年2~3月、約5,400世帯の回答を集計しました。

高校入学から大学卒業までにかかる費用(子ども一人当たり)が2009(平成21)年度に1,000万円を超えたことは、昨年の記事でもお伝えしました。10(同22)年度はさらに約52万円アップして、1,059万8,000円に上っています。学校種別の年間平均は、高校99万円、大学153万円などとっています。

小学生なども含めた子ども全員の在学費用について、世帯年収に占める割合を見ると、平均で37.6%。前年度に比べ、3.9ポイント上がっています。より深刻なのは、低所得者層です。年収800万円以上の高所得者層では27.2%(前年度比1.4ポイント増)であるのに対して、600万円以上800万円未満の世帯では30.0%(同0.2ポイント減)、400万円以上600万円未満の世帯では37.7%(同2.0ポイント増)ですが、200万円以上400 万円未満の世帯では56.5%(同8.2ポイント増)と、実に半数を超えて60%に迫る勢いになっているのです。

ここでちょっと、立ち止まって考えてみましょう。調査の対象は、国の教育ローンを利用している世帯です。56.5%という数値は、たとえ年収の半分以上をつぎ込むほどの無理をしてでも、子どもを進学させる覚悟を決めた家庭であるということになります。そのうえ、卒業までは利息分だけでもよいとはいえ、15 年以内で返済を続けなければなりません。裏を返せば、そんな現時点での負担や将来の返済に不安を感じて、子どもに進学をあきらめさせたという家庭が、相当数あることを推測させます。

教育費のねん出方法を聞いても、ほかの支出を節約するだけでなく、奨学金を受けている世帯が53.3%(同1.0%ポイント増)を占めています。しかし日本学生支援機構の大学生向け奨学金は、今や有利子のものが主流となっています。年功に応じた収入増はおろか、子どもの就職さえ難しくなる現在、ローンと奨学金のダブル返済に、ますます及び腰になる家庭も少なくないと見られます。

文部科学省は2011(平成23)年度概算要求で、高校生の給付型奨学金事業(高校版就学援助)の創設や、大学などの奨学金事業の充実などを盛り込んでいますが、その予算化はもとより、さらなる教育費支援策を検討してほしいものです。

(提供:Benesse教育情報サイト)

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