『日本経済新聞』2010年11月2日付
横国大・横浜市大、医療通信研究へ共同拠点 横須賀に
横浜国立大学と横浜市立大学は情報通信の研究集積拠点「横須賀リサーチパーク」(YRP、神奈川県横須賀市)内に医療用通信システムの研究拠点を開設する。2011年3月に本格稼働し、無線技術を使った認知症患者などの行動追跡システム、カプセル状の内視鏡を使った治療方法などを研究。周辺の研究機関と連携しながら、早期実用化を目指す。
YRPは横須賀市などが開業し、NTTドコモやNECの研究拠点などが入居している。横浜国大などはこれらの研究拠点と連携できると考えた。
両大学が独立行政法人の情報通信研究機構(NICT)、フィンランドのオウル大学と組んで、YRPのベンチャー棟内に共同研究拠点を開設する。研究者は約40人。
重点研究分野としているのが、「UWB(超広帯域)無線」と呼ばれる高速通信技術を使ったシステム。専用端末から発する情報を、約100メートル離れた受信機で読み取れる特長がある。
病院内に受信機を設置すれば、認知症患者が病院内のどこにいるかを把握できるという。現在主流のICタグを使った無線システムでは、端末は受信機に数メートル以内に近づけないと情報が読み取れない。病室のドアの出入り確認程度しか使えず、患者の行動を詳細に追跡するのは難しい。
カプセル状の内視鏡を使った通信システムの研究も進める。この通信技術を使い、カプセルが体内にある状態で、ハイビジョン画像でリアルタイムで内臓の様子がわかるシステムを目指す。体内の状況が細かく把握できるように、カプセルに内蔵した2つの超小型カメラが上下左右に動かせるようにする。
高画質の医療用動画像を遠隔地間で送受信できるよう衛星通信を使った実験も実施する。
横浜国大は通信工学研究で強みを持つが、医学部など医学分野の研究機能は備えていない。一方、横浜市大は医学部がある。両大学が組むことで、通信工学と医学を連携した研究を推進していく。オウル大は携帯電話端末世界最大手のノキアと連携するなど情報通信分野の研究が活発という。