『佐賀新聞』2010年11月1日付
24時間医師常駐、小児救急部スタート 佐賀大医学部
佐賀大学医学部は本年度から、小児救急部を本格的にスタートさせた。付属病院に24時間、小児科専門医が常駐。診療の充実を図るとともに、若い医師に「大人と異なり、症状の見極めが難しい」とされる小児診療の経験を積ませている。
小児救急部設置は国の基金を活用した研究事業の一環で、2013年度まで4年間。15年以上のベテラン医師2人、10年前後の専門医3人に研修医2人が加わる計7人態勢で昼勤、夜勤のローテーションを組んでいる。緊急時に起こされて対応する「当直」ではなく、夜勤シフトを組むことで、小児科医の労働状況を和らげる狙いもある。
佐賀大学医学部によると、付属病院の時間外受診は子どもが8~9割を占める。そのうち、命にかかわるものは1~2割。従来の救急部体制では、子どもでも小児科以外の医師が診察することが多かったが、症状は似ていても疑うべき病気は大人と異なることは多いという。「子どもは注射一つ難しく、苦手意識を持つ医師が多いのが現状」と医学部長の浜崎雄平小児科学教授は指摘する。
新方式は教育に主眼を置いた取り組みで、救急、小児救急両部の医師が協力する。救急部の医師は小児医療の特徴を学び、小児科医は外科的な処置など幅広い技術を身につける。専門分野を超え、相互の領域を学び合う。小児救急部に所属する医師の一人は「傷を縫う手技など、別の専門を持つ医師から学ぶことは多い」と話す。
医師の数を増やすだけでなく、検査技師や事務職員らの充実も必要なことから「何時でも診察できると言える態勢ではない」(同部)というが、患者は平日夜間で2倍、土日祝日で2~3倍に増えているという。浜崎医学部長は「若い医師をトレーニングすることで、小児救急を担う人材を育成し、将来的には小児科医不足が続いている唐津市などに人材を供給していきたい」と話す。