法曹養成 法科大学院の改善速やかに『宮崎日日新聞』社説2010年9月29日付

『宮崎日日新聞』社説2010年9月29日付

法曹養成
法科大学院の改善速やかに

 新司法試験の合格率が低迷している法科大学院などの再編、統廃合が加速しそうだ。文部科学省が2012年度にも、低迷が続く法科大学院への補助金は削減すると決め、中教審の特別委員会へ報告した。

 法曹(裁判官、検察官、弁護士)を養成する法科大学院は04年以降、74校も開校した。乱立状態といっていい。

 今年の新司法試験を見ると、合格者ゼロは2校、修了生の合格率が5%未満は6校もある。受験者全体の合格率は過去最低の25%だった。修了しても大半の学生が合格できないようだと人材が集まらず、さらに合格率が低迷する。そうした悪循環がここ数年、目立っている。

■志願者は3分の1に■

 文科省の方針は荒療治の感があるが、現状を見ればやむを得ないだろう。実施まで約1年の時間が残されている今のうちに、全国の法科大学院が速やかに事態の改善に取り組むよう求めたい。

 法曹人口の増加と質の維持・向上は大きな政策課題だ。そのための確固とした仕組みをつくらないといけない。

 法科大学院の修了者には新司法試験の受験資格が与えられる。開校当初は人気を集めた法科大学院だが、10年度は志願者数が3分の1に急減。入学者数もピーク時の7割に減った。

 まず、法科大学院の教育の質が問われなければならない。特別委は今年1月、14校に重点的な改善が必要と指摘した。このうち1校が11年度以降の学生募集停止を発表、撤退を表明した。教育内容が問題視される傾向はさらに強まるとみられる。

■地域バランス配慮を■

 今回、文科省は入試の競争倍率が2倍以下で選抜機能が働いておらず、新司法試験の合格率も1けた以下に低迷している場合、補助金を削減するとした。

 法科大学院は一般の大学院より国立大学運営費交付金と私学助成金が優遇されている。この部分が削られる。優遇措置が税金による援助である以上、甘えは許されない。国民の納得が得にくい状況では削減はやむを得ない。

 ただ、地方に定着する弁護士の養成に力を注いだり、仕事を持つ学生のため夜間に開講したりしている法科大学院もある。

 配置の地域的バランスも重要だ。大都市ばかりに偏在すれば、地方の学生が通えないなど好ましくない状況が生まれる。こうした場合には政策的に残す配慮もすべきだろう。

 意欲も能力もある学生への新たな支援策も考える必要がある。奨学金制度の拡充もその一つ。例えば、法曹になった後、日本司法支援センターの常勤弁護士として地方へ赴任するといった公的な仕事に一定期間就いた場合は返還を免除する制度など考えてもらいたい。そのための財政的な措置を文科省に望みたい。

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