福井大、予算獲得に危機感 20日、街頭署名で訴え『朝日新聞』福井版2010年9月19日付

『朝日新聞』福井版2010年9月19日付

福井大、予算獲得に危機感 20日、街頭署名で訴え
 

 来年度の国立大学の研究や教育活動にあてる予算の行方に、福井大学が危機感を強めている。文部科学省の概算要求では大学予算は一見増えているが、他省庁との「政策コンテスト」を前提とした「特別枠」が増額分の3倍近くもあり、結果次第で大幅な削減があり得るからだ。福田優学長ら教職員約50人は20日、福井市や敦賀市の街頭に立って危機を訴え、予算獲得への協力や署名を呼びかける。

 政府が全省庁の政策的経費を概算要求段階で前年度より原則10%カットする方針を打ち出したのを受け、福井大文京キャンパスで8月、全職員を対象に説明会が開かれた。

 「試算どおりに予算を削られていくと、教職大学院で教員養成ができなくなる」。教員から悲痛な声があがった。

 10%削減が当てはめられれば、今年度99億円だった予算は来年度に約10億円減る。福井大の試算では、すべての学部やセンターの1年間の運営経費に匹敵し、常勤教員削減なら2割、授業料値上げなら5割増に相当する。福田学長は「国立大学の必要性と責務を広く県民に訴える。大学として署名活動や辻立ちの演説をする」と、教職員らを前に力を込めた。

 国立大は2004年の独立行政法人化の後、毎年予算を1%ずつ削減され、福井大の減額幅はすでに11億円に達している。教職員手当の支給を一部凍結するなど、研究や教育に影響がないようやりくりしてきたという。

 それでも、世界で先進的という窒化物半導体による次世代太陽光発電システムの研究でさえ、装置は企業の中古品を改造して使い、実験室にほこりが入らないようにするクリーンルーム化も未整備のままだ。福田学長はこうした実情を7月、視察に訪れた川端達夫文部科学大臣に説明し、予算確保の「直訴」も試みていた。

 今回の概算要求で、大学予算にあたる運営費交付金は前年度より324億円増え、1兆1909億円になった。しかし、これは「特別枠」の884億円を含む。特別枠は、10%カットの代替措置として雇用拡大や経済成長につながる事業に設けられたが、「1兆円超」の財源に、各省庁の要望額は計2兆9千億円を超え、予算を実際に獲得できるかは不透明だ。

 特別枠の政策コンテストを前に、政府は9月下旬から、一般から意見を募集するパブリックコメントを実施する。このため、福田学長や大学理事らは20日、福井市のJR福井駅前や同市大和田町のショッピングセンター「エルパ」、敦賀市内の街頭で、技術の革新や経済成長の基礎を支える大学の役割を市民に訴え、パブリックコメントへの協力や署名を募る。

 福田学長は「地方の小規模大学は、崩壊の瀬戸際に立たされている。危機意識を訴える第一矢を、福井から発信したい」と話している。(田中章博)

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