免許更新制継続、教師「廃止のはずが…」「仕方なく」駆け込み受講『読売新聞』2010年9月17日付

『読売新聞』2010年9月17日付

免許更新制継続、教師「廃止のはずが…」
「仕方なく」駆け込み受講

2009年に制度が始まったとたん、政権交代により「抜本見直し」が打ち出された教員免許更新制。

教員の間には廃止を見込み、約1万1000人が今年4月時点で必要な講習を受けていないが、民主党の参院選敗北で当面の存続が濃厚だ。講習を受けないと免許が失効する最初の期限まであと半年。翻弄(ほんろう)される現場からはいらだちの声も上がった。

迫る期限

「講習の内容は、知らなければ教師を続けられないようなものではないと思う。本当は受けたくなかった」

来年3月が更新期限で、今年7月になって講習を受けた北海道の道立高校の男性教諭(45)はそう胸の内を明かす。更新制の廃止を掲げた民主党政権になり、制度はなくなると思っていたが、「教壇に立てなくなるから仕方がない」と、いわば滑り込みの受講だった。

2012年3月に更新期限を迎える大阪府の府立高の理科教諭(53)も、制度はなくなると思い、講習を受けるつもりがなかった。だが見通しが立たない中、受講する同僚教員らが徐々に増えた。さすがに「このまま無視するとまずい」と思い、先月、受講先を探したが、近場の大学の受講募集は既に締め切られていた。

東京23区内の区立小の女性教諭(45)は、昨年の夏休み期間に都内の大学で講習を受けた。ガスバーナーやアルコールランプなど実験器具の扱い方のコツや、子供たちを取り巻く環境の変化を学ぶことができ、「自腹で3万円払った価値はあった」という。ただ、受講には1週間ほどかかり、夏休みをつぶしたり、平日の夕方以降の子供と向き合う時間を減らしたりする必要がある。「更新制が継続されるのは、複雑な気持ち」という。

教組が要請

更新講習を行う大学側でも、当初の「廃止」の情勢に講習開設を見送る動きが広がった。文部科学省によると、今年度、必修の講習を開設した大学は、昨年度より82校少ない239大学。通信制の講習を除き、対面で受講する講座の定員は、11万4000人から6万6000人まで減った。「すぐに制度が廃止される可能性があった」(お茶の水女子大)「十分な受講生の確保が見込めなかった」(東洋大)などの理由だ。

当面の制度存続が濃厚な今、通信制の講習に申し込みが相次いでいる。インターネット講習を開設する桜美林大(東京都町田市)の担当者は、「夏ごろから問い合わせが急に増えた」と話す。「今からでも間に合うか」という声が多く、今月16日までに受講を決めた455人の4割にあたる180人は7月以降の申し込みで、うち約70人は、来春更新期限を迎える教員だという。

教室と受講会場をテレビ会議システムで結んでいる星槎(せいさ)大(北海道芦別市)では、「駆け込み受講」に対応するため、今年度実施予定だった155の講習に加え、年末にかけ新たに30講習を実施することを決めた。

相模原市で12月に開催する講習は、地元の「湘北教職員組合」の要請。同教組では更新制には反対しているが、鹿島哲夫書記長は「廃止を求める運動は運動として大切だが、組合員の生活も大切ですから」と話した。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com