学生の声 大学変える…岡大で29校真剣トーク 全入時代 教職員と共に知恵『読売新聞』2010年9月7日付

『読売新聞』2010年9月7日付

学生の声 大学変える…岡大で29校真剣トーク
全入時代 教職員と共に知恵

全国の大学生と教職員が集まり、授業の改善や理想の大学像について議論する交流イベントが、岡山市北区津島中の岡山大で4、5両日、開かれた。大学改革の一環として7年前に始まった取り組みで、今年は29大学から約100人が参加した。全入時代を迎え、大学を取り巻く環境が厳しさを増す中、より良いキャンパスにしようと、学生と教職員が知恵を絞る現場を取材した。(末善悠太)

イベントの初日、会場となった教室に参加者の笑い声が響いた。「大学生活」と聞いて連想する単語を、学生と教職員が交互に紙に書きだしたところ、学生が「授業」「単位」「留年」と書いたのに対し、教職員側が「語り合い」「学生結婚」「マージャン」と書くなどイメージのギャップが浮き彫りになったからだ。

バブル景気の頃、学生生活を謳歌(おうか)したという、大阪大大学教育実践センターの服部憲児准教授(43)は「当たり前だと思っていた学生像と異なり、今の学生がまじめなことに驚いた。今後の授業改善などに反映できそう」と受け止めた。

岡山大では2001年、各学部から推薦された学生と教授らによる「教育改善委員会」が発足した。きっかけは、学生から講義名を列挙したシラバス(授業計画書)が分かりにくいとの指摘があり、曜日別のものに書き直したことだった。

04年の独立行政法人化をにらみ、大学の魅力を高めたいと考えていた大学側は、学生の意見が参考になることを実感し、シンポジウムを開催。これが委員会につながった。橋本勝岡山大教育開発センター教授(55)は「教職員だけで大学を変えていくことに限界を感じていた」と振り返る。

委員会では、学生が新入生向けの履修相談会を開くなど学生主体の改革を進めた。学生のアイデアを基にした一般教養の講義科目も誕生した。就職に役立つ敬語や礼儀作法を身につける「知らなきゃやばい大人のマナー」や、人気漫画「ドラえもん」の道具を題材に科学技術の基礎を学ぶ「ドラえもんの科学」などで、新入生らに好評という。

交流イベントは、こうした取り組みを他大学にも広げようと、04年に始まった。

今年のイベント2日目には、「大学で身につけたい能力」をテーマに、学生と教職員が「コミュニケーション力」や「就活突破力」などのテーマ別に7グループに分かれて議論した。

コミュニケーション力を選んだ、北九州市立大文学部2年山本佳奈さん(20)は最初、大学では会話する技術を学びたいと考えていたが、議論を通じて考えが変わったといい、「自分を相手に伝えるためには、表現力や知識、行動力など様々な能力が必要と分かった。大学でしっかりと考える力を学び、社会に出て生かしたい」と力を込めた。

イベントのスタッフを務めた、岡山大工学部2年の佐藤奈央子さん(19)は、「教職員の立場からアドバイスをもらえて、自分自身も成長できたし、大学改善のヒントも得られた」といい、語り合うことの大切さを実感していた。

時にまじめに熱く、時に笑いながら語り合った2日間。学生と教職員がイベントで得たものを、それぞれの大学に持ち帰って生かすことができれば、キャンパスライフはもっと素晴らしいものになると感じた。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com