九大など、途上国農家の販売支援システム 社会事業に取り組む『日本経済新聞』2010年9月3日付

『日本経済新聞』2010年9月3日付

九大など、途上国農家の販売支援システム 社会事業に取り組む

 九州大学は通信システム会社と組み、途上国の低所得者層(BOP=ボトム・オブ・ピラミッド)向けに、携帯電話などを使った農作物の販売支援システムを構築、このほどバングラデシュで運用を始めた。農家は自動音声ガイダンスに従い、携帯電話の簡単なキー操作で農産物の価格と数量を公開、インターネットの売買市場に参加できる。九大は今回の運用でノウハウを蓄積、社会問題をビジネスで解決する「ソーシャルビジネス」(社会事業)の普及につなげたい考えだ。

 九大大学院システム情報科学研究院がモバイル・テクニカ(東京・中央)とシステムを構築、このほどバングラデシュの3カ所の農村で運用を始めた。総事業費は3年間で1億5000万円。国際協力機構(JICA)から業務を請け負った。

 システムは音声自動応答装置(IVR)を活用し、携帯電話のほか、村の公共施設に備えたパソコンで利用する。農家が通信センターに電話をかけるとIVRが応答。流れてくる音声ガイダンスに従い数字キーを操作して、売りたい作物の種類や量、価格を送信する。

 例えばトマトなら「1」、ナスなら「2」と打ち、次に売りたい量や価格を打ち込む。情報は都市部の大手スーパーなどが参加する電子取引市場に送られ、売買が成立すれば出荷する仕組み。

 バングラデシュの農村はこれまで農作物の販路が近隣に限定され、取引価格も安かった。だが、同国の経済成長に伴い都市部の富裕層向け食品市場が拡大。土作りや肥料などに配慮した栽培技術で育てた野菜は、2~3倍高い価格で売れるといい、ICT(情報通信技術)を活用してBOP農家の所得向上を図る。

 高付加価値の野菜を栽培するための技術情報も公共施設を通して九大や現地の非政府組織(NGO)が提供。農家から受け付けた相談もデータベース化する。

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