東北大、中小と技術開発拡大 携帯液晶や部品測定『日本経済新聞』2010年8月31日付

『日本経済新聞』2010年8月31日付

東北大、中小と技術開発拡大 携帯液晶や部品測定

 東北大学と地域の中堅・ベンチャー企業との技術開発プロジェクトが活発になってきた。プラスチック成型の大東精密(宮城県亘理町、斎藤裕之社長)とは携帯電話などの液晶画面向けのフロントライト技術の案件に着手。画像処理のティーワイテクノ(山形市、工藤美紀子社長)とは光計測技術を使い自動車部品などを測定する装置の開発を急ぐ。産学連携で地域産業の競争力を上げる機運が高まっている。

 大東精密は、液晶ディスプレーの研究で著名な内田龍男名誉教授らの協力を得て、携帯電話などの液晶画面をフロントライト式にする技術の開発を始めた。液晶画面の光源は現在、後ろ側から照らすバックライト方式が主流だが、フロントライト方式は画面の前側に導光板を配置し、奥の液晶を照らす仕組みだ。

 太陽光や屋内照明などの明かりを取り込んで画面表示の光源を補助できるため、機器の電力消費を軽減できる。またバックライトは日中の屋外では太陽光などにより画面が見づらくなるが、フロントライト方式ではこれも抑制できるとみる。導光板の形状などを工夫し、より低電力で高性能のライトをつくる技術を蓄積。今年度に試作し、今後の実用を目指す。

 ティーワイテクノの案件は、青木孝文教授の高速・高精度の情報処理技術を活用する。物体にレーザー光をあて、位置などのデータを多数捕捉。高速で処理し、物体の形状や寸法などを高精度に把握する装置をつくる。光学カメラで撮影する場合に比べ、物体の奥行きなどの確認も容易という。自動車部品や工業製品の生産現場の検査システムなどで実用を見込む。

 新たに発足したベンチャー企業もある。4月設立の東北マイクロテック(仙台市)は大規模集積回路(LSI)などを研究する小柳光正教授と協力。従来は1層式に回路を搭載するLSIについて、多層式に回路を搭載することでLSI全体の処理性能の向上や小型・低コスト化につながる技術に取り組んでいる。

 東北の産業の競争力を引き上げるには、産学連携の一段の推進は不可欠になりつつある。東北の製造業は新興国企業などとの競争を踏まえ、新技術による企業革新が課題だ。一方、東北大もこの1年余りで情報知能や環境科学、材料といった分野で産学連携に関する複数の組織が立ち上がるなど機運が高まっている。

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