2010/06/18 みんなの党アジェンダ2010成長戦略 より
(3)「科学技術の振興」
○前年比較での予算配分方式から目標設定方式へ
従来の研究開発は、官僚が予算配分を行い、研究者は単年度ごとに予算当局への報告など
に追われ、肝心の成果がいつまでたっても出ないことになりがちだった。そもそも、官僚が
見込みある研究開発プロジェクトを見極められるという前提が間違っており、その後の成果
の評価・管理も十分できていなかった。
10年以内に光合成を人工的に出来るようにして温暖化問題を解消するとか10年以内に
自分の細胞から自己と同じ遺伝子情報を持つ臓器による移植医療が出来るようにするといっ
た夢のある大方針を政治が国民との契約のもとに掲げ、その開発実現に向けて責任の所在を
はっきりさせた形で予算を配分する方式に変換させる。
そうしたことの実現を通じて、これからの科学技術振興では、「官僚統制」から脱却するこ
とが重要。例えば、寄付税制を拡充して「全額税額控除」の導入などを行い、国民が、政府
を通じてではなく直接、研究機関に寄付することを促進。研究開発減税の拡充など。(スペン
ディングから寄付・減税へ)
○研究機関の強化
もとより、国は基礎科学振興費用の資金の最大の出し手であり、基礎科学研究費用は増加
させるが、そうした予算配分に依存した研究機関から、自律的に資金を集め、厳しい競争の
中で成果を競う研究機関に脱皮させることで研究成果を増やしていく。具体的には東大民営
化などを象徴事例とする。民営化することで、市場のニーズにあった大学を作るのが重要と
考える。例えば、今後ソフト開発分野の人材が足りない状況でも、電子工学科の定員は増や
せないし、教官も非常勤以外兼業が禁止されている。これでは、実務家が大学教育を行えな
い。大学は、最高のサービス産業であるという認識が必要だ。
○日本文化産業
メディアコンテンツ、ファッション、食、観光などの領域は、新たな輸出産業として大きな
ポテンシャルを有する。ただし現状では、担い手である企業の殆どに世界市場を積極的に攻
めるマインド、経営スキル、企業体力が欠如。また、関連する諸産業に横串を通し、日本の文
化価値を総合的に訴求・展開する国家戦略も欠如。これらを大きな産業群に育てるためには、
・カテゴリー横断的な、日本文化産業全体のブランドコンセプトの創出(例:英国の
“Cool Britannia”戦略、韓国の“Cool Korea”戦略)
・カテゴリー×エリア軸での重点が明確で、かつ統合的な戦略の策定
・重点地域市場における現地支援プラットホームの設立(市場調査、現地パートナーの紹
介・交渉、共同流通網の構築などシェアードサービス的機能を提供)
・関連産業の再編と強いブランドポートフォリオの形成(例:多数の高級ブランドを束ね
る持株会社LVMH)、これを可能とするファンド機能とマネジメントチームの組成など
が必要。
○科学技術の振興
基礎研究の振興はもちろん重要だが、開発した技術を世界市場で金にするためには「規格
競争」に国としてしっかり取り組むことが重要(例:通信、スマートグリッド、電気自動車、
地デジなど、重要産業の多くに該当)。WTO以降の国際標準化の波の中で、ISO(国際標
準化機構)・IEC(国際電気標準会議)などで影響力を持ち得ず、関連産業の機会損失が
大きいのが現状。
<教育の抜本強化>
○教育の最終的な責務は国にあるという認識のもと教育を抜本強化する。具体的には、教育
基本法に沿って、教師の資質を高め、教育力の向上を図り、学習時間の確保と学力の向上
を目指す。世界に通用するたくましい日本人を育てる。
○「ゆとり」が「放縦」とならないよう基礎教育・公教育を充実させる。
・義務教育段階での読み書き計算の徹底と道徳教育の教科化
・少人数・体験・個性重視。理系離れへの対応。手に職を持つ教育、生き抜く教育等を重視。
・自国や他国の歴史や文化を正しく学び、愛国心や郷土愛を学校教育の中で育む
・教員の質と数を充実。
・教員の政治活動を全面禁止
・親の貧富で教育格差が広がらない環境整備。高校、専門学校、大学等の高等教育へ奨学
金制度の拡充(出世払い・返済不要型の活用等)。
○学校を地域社会に開放する。公立中学、高校の水準を向上させる。また、何でも学校がや
るという考え方から家庭の役割、地域の役割も考えることも必要。
○大学を競争にさらし、研究機能とともに、教育サービス機能抜本強化。
・東大の民営化など(再掲)。産業と大学の関係を更に密接にする必要がある。産業のサー
ビス機関としての大学の位置づけも重要。
○優秀な研究者や学生が国境を越えて能力を高め活躍する機会を拡大
最先端のイノベーションを実現するには、国内にこもらず、世界の優秀な人材との交流・
切磋琢磨が必須。現状の日本の問題は、①国内の大学が魅力に乏しく外国の研究者・学生を
集められない、②一方で、日本人学生は内向き志向が強まり海外留学者数は減少。
・アジア域内での大学単位の相互認定、(従来の量的目標設定を超えた)留学生拡大施策の
推進など。