『産經新聞』 2010年7月5日付
【教育動向】上がり続ける私大の初年度納付金 学部でも大きな差
今年4月から公立高校の無償化がスタートしましたが、子育て世帯の多くからは、「心配なのは高校よりも大学の教育費」という声が出ています。そんななか、2009(平成21)年度の私立大学入学者が大学に支払った初年度納付金が過去最高となったことが、文部科学省の調査でわかりました。大学教育に対する家計負担の軽減が、改めて大きな課題となりそうです。
調査結果によると、初年度納付金は平均131万2,146円で、前年度に比べ0.2%(3,085円)増えました。内訳を見ると、授業料が85万 1,621円(同0.4%増)、入学金が27万2,169円(同0.5%減)、施設設備費が18万8,356円(同0.6%増)となっています。入学金は、入学辞退者による入学金返還訴訟の影響で、00(平成12)年度から少しずつ減っていますが、代わりに授業料が増加する傾向にあります。4年前(05<平成17>年度)と比較すると、授業料が2.5%増、入学金が2.8%減、施設設備費が3.6%減となり、総額では0.5%増。授業料の値上げが、初年度納付金増額の大きな要因となっていることがわかります。主な学部別(昼間部)に学生一人当たりの初年度学生納付金の平均額を見ると、
▽「文・教育」118万6,885円(前年度比0.2%増)
▽「法・商・経」113万295円(同0.3%増)
▽「理・工」140万6,590円(同0.4%増)
▽「薬」211万7,717円(同2.7%減)
▽「医」501万4,708円(同2.6%減)
▽「歯」493万434円(同1.2%減)
--となっています。もともと授業料が高額な学部が値下げをする一方で、学生数が多い学部では、授業料をわずかに値上げすることで、全体の収支を合わせようと工夫していることがうかがえます。
系列別では、
▽文科系115万1,978円(授業料73万6,938円、入学金25万6,378円、施設設備費15万8,662円)
▽理科系149万9,808円(各103万7,190円、27万2,203円、19万416円)
▽医歯系498万811円(各296万8,656円、100万9,619円、100万2,536円)
▽その他146万2,696円(各93万4,559円、27万8,279円、24万9,858円)
です。
数字からもわかるように、実際の納付金額が学部によって大きく異なっているのが、私立大学の特徴です。進学のための資金を考える際には、子どもの進路希望に沿った計画を立てることも必要でしょう。
このほか、初年度納付金の調査項目には含まれていませんが、「実験実習料」などの名目で、別途納付が必要な場合があります。それを加えると、初年度納付金は平均145万1,859円(文科系122万7,058円、理科系164万1,630円、医歯系842万517円、その他162万261円)に跳ね上がりますので、特に理科系や医歯系への進学希望の場合は注意してください。
日本の高等教育は、私立大学が大きなウエートを占めています。実質的な大学全入時代を迎えるなかで、私立大学教育費の家計負担も、単に進路選択による「自己責任」としてとらえるのではなく、日本の教育全体の問題として考えるべきでしょう。返済の必要がない給付奨学金の充実など、家計負担軽減のための施策が、早急に望まれます。
(提供:Benesse教育情報サイト)