平成22年7月9日
- 教育力や研究開発力向上のための公的投資の拡充を!! -
(共同声明)
中国地区国立大学長会議
鳥取大学長 能 勢 隆 之
島根大学長 山 本 廣 基
岡山大学長 千 葉 喬 三
広島大学長 浅 原 利 正
山口大学長 丸 本 卓 哉
菅内閣の下で策定された「財政運営戦略」と「新成長戦略」が目指す「強い経済」と「強い財政」は,我が国が置かれている経済・財政の危機的状況に照らし,当然実現されるべきものです。同時に,「新成長戦略」は,「強い人材」の育成が,成長の原動力として未来への投資であることを踏まえ,教育力や研究開発力を世界最高水準にするための効果的な公的投資を拡充する旨,明記しています。
国立大学は,「持続可能な成長を担う若年層や知的創造性(知恵)(ソフトパワー)の育成」(「新成長戦略」より)の欠くべからざる土台であり,我が国全体に係わる新しい未来を切り開く存在でなければなりません。「強い大学」の実現を目指し,国立大学の教育研究環境の整備や教育改革,学生の経済的支援の充実を図ることが,日本の確かな未来を切り開くものと確信します。
一方,「財政運営戦略」の「中期財政フレーム」によれば,平成23年度からの3年間は「基礎的財政収支対象経費」について前年度を上回らないこととされ,巷間1兆円以上とも言われる社会保障関係経費の伸びを勘案すれば,いわゆる「政策的経費」は年率8%の減となります。大学の人件費を含む国立大学法人運営費交付金もその対象とされ,削減額は,単年度だけでも927億円(3年間の総額で約2,800億円)と,平成16年度から22年度の6年間の減額の総合計(830億円)を上回るものであり,また,中国地区5国立大学の平成22年度運営費交付金の総額(約806億円)をも大きく上回る,すさまじい削減を求められることが予想されます。この金額の予算削減は,大規模大学の存立基盤を揺るがすのみならず,中・小規模国立大学の運営が立ち行かなくなる規模の減額であり,地方国立大学の地域における教育,行政,医療などの場で活躍する優秀な人材育成,高度で先進的な医療の提供,地域企業等への研究成果の還元等の使命を果たすことが不可能となります。
我が国の高等教育への公財政支出は既にOECD 諸国の最下位という状況です。その上,このような更なる過酷な削減を行うことは,天然資源に乏しく,科学・技術と人材に頼るしか術のない我が国においては,まさに国益に係わる致命的な施策となります。ついては,平成23年度概算要求における「国立大学運営費交付金」については,削減の対象とせず,「新成長戦略」に基づき,長期的な観点から予算配分が行われるよう強く要望します。