事業仕分け:第2弾、対象事業決まる 頼みの仕分け、効果のほどは 『毎日新聞』2010年4月21日付

『毎日新聞』2010年4月21日付

事業仕分け:第2弾、対象事業決まる 頼みの仕分け、効果のほどは

◇「重複」ターゲット

独立行政法人(独法)を対象にした「事業仕分け第2弾」の対象事業が20日、決まった。受注した事業を他の独法や公益法人に丸投げする構造や、東京23区外に本部を持つ独法の「東京事務所」が多いことなどに焦点をあて、無駄・非効率をあぶり出す。ただ、民主党が掲げる政策に充てるための財源捻出(ねんしゅつ)効果は限定的。支持率低下に苦しむ鳩山由紀夫首相は政権浮揚効果を期待するが、党内には「仕分けでカバーできる時期は過ぎた」との声も出ている。【田中成之、影山哲也】

仕分け第2弾の焦点の一つは「重複」だ。

枝野幸男行政刷新担当相と仕分け人の尾立源幸参院議員らは20日、「国立大学財務・経営センター」(本部・千葉市)、「大学評価・学位授与機構」(本部・東京都小平市)が23区内に持つ「東京事務所」が入るビルを視察した。104の独立行政法人中、23区内に東京事務所を持つのは7法人。そもそもの必要性を現場で見るのが狙いだ。

意見交換で同センターの豊田長康理事長が「最近特に医学論文数が低下していて由々しき問題だ。原因の一つは大学病院の機能低下。交付金が大幅に削減されている」と訴えると、枝野氏は「その思いは我々も共有しており、『ごもっとも』で終わってしまう。我々の問題意識は、建物の全フロアの平面図と、それぞれの部屋が何に使われているかということだ」と切り返した。

職員とのやり取りでは、昨年度は「6~7割」とされた同センターの貸し会議室の稼働率が、1日1回でも利用されればその日は「100%稼働」としていたと判明。尾立氏は「粗っぽい説明だ。民間ではあり得ない」と苦言を呈した。

枝野氏はこうした事務所について「本当に必要かどうか、という観点で、他の独法の東京事務所にも『横串(よこぐし)』を刺す(波及させる)」と意気込み、管理部門の再編統合で予算の効率的な配分を目指す。

第1弾で批判を浴びた科学技術関連の仕分けは、今回も取り上げられる。枝野氏は研究開発を主要業務とする独法38法人のうち、13法人を仕分け対象に選定。研究分野が重複する独法を統合して「国立研究開発法人」(仮称)を新設し、5~10法人に再編する意欲を見せる。

ただ、尾立氏が19日に理化学研究所(埼玉県和光市)を視察した際に研究テーマの重複をただすと、ノーベル化学賞受賞者の野依良治理事長が「重要な課題であれば、いろんなところで競争的に研究が行われるのは当たり前だ」と反論。野依氏はその後、記者団にも「植物の研究でも、理化学研究所は基礎的な問題、農水省の研究所では食料問題の解決により直接的にかかわる形でやっている」と説明し、単純な統合は難しいと強調した。

◇捻出「数百億円」 政権浮揚、限定的か

昨秋に鳩山政権が実施した事業仕分け第1弾は、予算編成過程の一端を公開したことで国民に支持され、報道各社の世論調査でも「評価する」と答えた人が7~8割に上った。首相は第2弾を通じ、「政治とカネ」の問題や、普天間移設問題で急落した内閣支持率に歯止めをかけ、財源捻出も図る「一石二鳥」を狙うが、効果は限定的になりそうだ。

毎日新聞が17、18日に行った世論調査で内閣支持率は33%に急落。「支持しない」も初めて半数を超え52%となった。参院議員の一人は「国民から鳩山さんが首相に不適格と見られ始めている」と指摘する。

しかし、仕分け第2弾による歳出削減は、財務省関係者が「数百億円程度」と語るように大きな効果は見込めない。

首相は当初、過大な期待をかけていたが、2月19日に枝野氏や蓮舫氏らと会食した際、左右に陣取った両氏から「額は出ませんから」と注意され続けた。その後、首相は仕分けと歳出削減を直結させる物言いは避け、20日の行政刷新会議でも「行政のアカをまた洗い流す」と述べる程度にとどめた。

党内からは「今、仕分けをやっても国民からは『まず小沢、鳩山を仕分けろ』と言われるのではないか」(若手)と悲観的な声も漏れ始めた。

◇第2弾仕分け人

「事業仕分け第2弾」の民間仕分け人は次の通り。

赤井伸郎大阪大大学院准教授▽荒井英明神奈川県厚木市こども育成課長▽安念潤司中央大法科大学院教授▽市川真一クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジスト▽石渡進介弁護士▽上山直樹弁護士▽奥真美首都大学東京教授▽長隆東日本税理士法人代表社員▽小幡純子上智大法科大学院長▽梶川融太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員▽川本裕子早稲田大大学院教授▽木下敏之前佐賀市長▽熊谷哲京都府議▽河野龍太郎BNPパリバ証券チーフエコノミスト▽小瀬村寿美子厚木市人権男女参画課長▽伊永隆史首都大学東京教授▽高橋進日本総合研究所副理事長▽土居丈朗慶応大教授▽富田俊基中央大教授▽中村卓元埼玉県草加市長付特命理事▽永久寿夫PHP総合研究所常務▽南淵明宏大和成和病院院長▽橋本昭アグロス胡麻郷社長▽原田泰大和総研専務理事チーフエコノミスト▽速水亨速水林業代表▽福嶋浩彦中央学院大教授▽前田敦利弁護士▽松井孝典東京大名誉教授▽松本悟一橋大大学院教員▽水上貴央弁護士▽南学横浜市立大エクステンションセンター長▽森信茂樹中央大大学院教授

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