『朝日新聞』2010年4月16日付
東大、新日石と新エネ研究の施設を建設
東京大学は新日本石油と共同で、新エネルギーの産学・国際・他部局連携の場となる「産学連携新エネルギー研究施設」を建設する。東大先端科学技術研究センターが中心になり、太陽電池向け化合物半導体や有機系材料などの分野で、応用研究に特化するのが特徴だ。東大には環境・エネルギー関連の組織が複数あるが、研究施設の設置は初めて。完成は2011年3月の予定。
新施設は7階建てで床面積は7000平方メートルで、このほど着工した。東大先端研と新日石が05年から実施する組織連携を発展させた取り組みだ。資金は東大、東大先端研、新日石が用意した。金額は未公表。新エネルギー全般が対象だが、実績の上がっている太陽電池を柱に、新テーマにエネルギー貯蔵・輸送を追加して拡大する。先端研建物内にある新日石社員常駐の「ENEOSラボ」は、新施設に移動して現在の6人を10人程度に強化する。
新施設は東大先端研の新エネルギーでの産学連携、外国の大学・研究機関との国際連携、学内他部局との連携で活用する。たとえば東大工学系研究科から材料・メカニズム理論を手がける教員らが入居する。新日石も補完関係にある他企業の参加を希望している。
先端研はこのほど米アリゾナ州立大学再生可能エネルギー研究所と協定を結び、太陽光の全波長領域を利用する化合物半導体の共同研究を計画中だ。フィンランドのアボアカデミー大学とも、色素増感太陽電池の効率向上での共同研究が決まった。これらの活動に新施設の貢献が期待される。
東大にはエネルギー連携工学研究センターやサステイナビリティ学連携研究機構など、複数の環境・エネルギーの組織がある。いずれも教員らをネットワーク化したもので、研究は個別研究室で行われているため、拠点となる施設の設置は注目されそうだ。