松川資料室を存続 『朝日新聞』福島版2010年3月26日付

『朝日新聞』福島版2010年3月26日付

松川資料室を存続

●学内外で研究 基金も設立へ 福島大

福島市内の東北線で列車が脱線転覆し、乗務員3人が死亡した冤罪事件「松川事件」の研究拠点となっている福島大の松川資料室について、同大は存続する方針を決めた。大学予算の減少などで存続が危ぶまれていたが、引き続き研究員を雇用する。(北川慧一)

資料室は、事件の風化を防ごうと、同大が1988年10月に設置した。裁判資料や元被告らの手紙、当時の新聞や雑誌記事など約10万点を収集している。07年4月には、県松川運動記念会と同大が資料の整理や公開に関する協定を結び、さらに内容の充実を図ってきた。

管理しているのは伊部正之名誉教授=労働経済学。07年3月の退職後も研究員として大学に残ったが、今年3月で任期が切れる。人件費予算などが削減される中、同大は資料室の常勤の研究員を廃止し、年間60日程度勤務する非常勤職員を配置することなどを検討。これに対し、記念会側は「正規の身分保障がなければ事件の研究は継承できない」と反発していた。

同大によると、資料室は現在のまま継続し、同記念会との協定も更新する。また、伊部名誉教授を引き続き雇用し、資料の収集や整理を担当してもらうという。

さらに同大は、松川事件研究のための「プロジェクト研究所」を設置し、学内7人、学外7人の研究者で構成。事件の背景や裁判などについて総合的に研究し、資料室を活用するとしている。一方、事件研究のための基金も設立し、全国から研究資金を集めることを目指すという。

◇松川事件:1949年8月17日未明、福島市の松川駅近くで列車が脱線転覆し、乗務員3人が死亡。国鉄の労組幹部ら20人が逮捕、起訴され、一審・福島地裁で死刑5人を含め被告全員に有罪が言い渡された。その後、被告のアリバイを示すメモが出てくるなどし、63年に最高裁で全員の逆転無罪が確定した。

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