大学界との「対話」と大学予算の「充実」を -平成22年度予算編成に関する緊急アピール- 平成2 1 年1 1 月2 6 日 国立大学協会

http://www.janu.jp/active/txt5/yosan091126.pdf

国大協企画第100 号
平成21年11 月26日

文部科学大臣
川 端 達 夫 殿

社団法人 国立大学協会
会長 濱田純一

大学界との「対話」と大学予算の「充実」を
―平成22年度予算編成に関する緊急アピール―

1 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。
2 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いて下さい。
3 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

平成2 1 年1 1 月2 6 日
国立大学協会

大学界との「対話」と大学予算の「充実」を
-平成22年度予算編成に関する緊急アピール-

平成22年度予算について、本協会は、去る10月13日に政府への要望を行ったところですが(「平成22年度国立大学関係予算の確保・充実について(要望)」)、その直後に明らかになった概算要求の内容や予算編成に関する動向、行政刷新会議の下で行われているこれまでの事業仕分けの結果に接し、ここに、下記の点について緊急のアピールを行います。

1 大学予算の縮減は、国の知的基盤、発展の礎を崩壊させます。

これまで大学予算は削減を迫られてきましたが、平成22年度概算要求においても、多くの事業が厳しく抑制されています。社会的な問題となっている医師不足解消のための医師養成や大学病院の機能強化、大学奨学金等の充実といった重要課題については、「事項要求」という位置付けに止められています。万一、このような状況を踏まえた適切な対応がなされないならば、これまで大学が国民からの負託に応えるために行ってきた様々な取組の継続は困難となり、大学改革は頓挫してしまいます。その影響は、日本の未来を担う若者に対し、直接に及ぶことになるだけでなく、日本国民の市民生活を支える国力基盤の弱体化につながることになります。

かねて、公財政支出の対GDP比、政府支出に占める投資額の割合などの指標を通じ、日本の大学関係予算の貧しさはつとに指摘されてきました。私たち大学関係者は、先進諸国中最低レベルの公的投資の水準や家計における重い教育費負担といった問題の是正を訴え続けてまいりました。総理は、所信表明演説の中で、「コンクリートから人へ」の投資の転換を強調し、「すべての意志ある人が質の高い教育を受けられる国を目指していこう」という意思を示されました。「「架け橋」としての日本」という国づくりについても、資源小国であるわが国にとって国力の基盤は何よりも「知」と「技」にありますから、国家の知的基盤である大学の教育研究の振興を抜きには考えられません。その言葉の実行のためにも、事業内容の必要な精査は行いつつも、大学に対する公的投資の拡充に向け、政治のリーダーシップを強く発揮されることを切に望みます。

2 国立大学財政の充実に関する基本姿勢を貫いて下さい。

民主主義における選挙結果の重みに照らし、予算編成に当たってマニフェストの内容が重視されることは当然であると私たちは理解しております。

かねて私たちの訴えてきたとおり、国立大学法人運営費交付金は法人化以降5年間で720億円もの減少を見、その規模は小規模な国立大学23校分の消失に相当します。こうした一律的な削減方針の見直しは喫緊の課題と考えますが、今回の概算要求では、大学病院の経営改善や医師不足対策などの特別な事項を除けば、基礎的な経費は引き続き減額されています。さらに、こうした概算要求の規模さえも維持できないとなれば、私たちと国民との間の約束でもある新たな中期目標・計画(第2期:平成22~27年度の6年間)の策定・実行にも支障が生じかねません。事業仕分けの中では、基礎研究、哲学など多様な学術、芸術・文化の重要性、地方の大学の存在意義などについても意見が示されており、運営費交付金の必要性が理解されたものとして心強く受け止めております。こうした意見が適切に反映されることを望みます。

また、基盤的経費を確実に措置するとともに、大学間の競争的環境を醸成することを通じて各大学の改革への取組を促すような国公私立大学共通の競争的経費の充実が必要であり、この二つの仕組みをバランスよく組み合わせた支援が必要です。特に、世界トップレベルで活躍できる優秀な次の世代の育成のためには「グローバルCOE」や「国際化拠点整備事業」などの補助金の充実が不可欠です。

選挙時の民主党の政策文書には、「世界的にも低い高等教育予算の水準見直しは不可欠」、「国立大学法人に対する運営費交付金の削減方針を見直し」、「国立大学病院運営費交付金については、・・・速やかに国立大学法人化直後の水準まで引き上げ」等の記述があります(「民主党政策集INDEX2009」)。これまでの国会審議においても、こうした方針に沿った対応がなされてきたものと承知しています。

日本の教育研究の水準の維持・向上、教育の機会均等の確保に関わる国立大学の存在意義に照らして、「見直し」の原点に立ち返ったご対応(削減方針の撤廃、国立大学への投資の充実)を願う次第です。

3 政府と大学界との「対話」は、大学政策にとって必須不可欠です。

大学は、教育基本法の定めるとおり、その自主性・自律性が尊重されることが求められます。また、それ故にこそ、公共的な使命を果たし、社会に貢献し得る存在です。他の分野にも増して、大学に関わる政策形成過程は、透明で開かれたものであるべきであり、それには政府と大学界との緊密な「対話」が必須不可欠であると考えられます。その際、法人化以降の政策の成果と課題を検証することは、もとより重要なことです。大学にとって、運営の自由度の拡大や民間的マネジメントの導入など、法人化そのものには極めて大きな意義・メリットがあり、これを最大限生かすべく、引き続き努力を重ねてまいります。しかしながらこれまで、それを生かすための財政措置が不十分であったという点に課題があります。こうした反省に立って、今後、国立大学政策に関して、政府と大学界は、新たな国づくりに向けた「対話」を深めることが最も大切です。

総理は、所信表明演説の中で「絆」の大切さを語られました。私たちは知の共同体である大学間の「絆」を強め、そのことをもって国民からの負託に応えていこうと考えています。政府関係者をはじめとする各界において、このことを改めて御理解をいただき、大学界との「対話」の窓を閉ざされぬよう、また、本アピールの内容を真摯に受け止めて下さるよう、お願いします。このことを通じて鳩山首相の提唱された「大学の教育力・研究力の強化」を実現していただきたいと願うものであります。

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