独行法情報速報 No.6 特集:独法化問題新局面
2001.6.230 [he-forum 2210] 個別大学の生き残り策追求は大学システム破壊への道.今こそ全大学の横断的連帯を
独行法情報速報 No.6 特集:独法化問題新局面
2001.6.29 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
個別大学の生き残り策追求は大学システム破壊への道.今こそ全大学の横断的連帯を
6月14日文科省より『国立大学構造改革方針』が提示されるに至って、独法化問題は新たな局面を迎えました。独立行政法人問題千葉大学情報分析センターは、
全学の教職員の皆さんがこれまでの議論の蓄積の上に新局面を冷静に分析・議論し、歴史の試練に耐えうる正確な対応をされることを訴えるものです。あれやこれやの生き残り策への埋没は、大学を出口のない迷路に引き込み、大学システムの崩壊へと直結する危険があります。今、必要なことは全大学の横断的連帯です。このような見地から、本センターは独法化問題ならびにそれと事実上リンクした学内問題に関して6月28日開催された評議会に対して以下の提言を行ないました。
【提言1】国大協は臨時総会を7月に開催し、文科省「大学構造改革方針」の是非について議論すべきである。磯野学長は7月5日の国大協理事会において臨時総会開催のために御奮闘いただきたい。
〈解説〉6月27日磯野学長より急展開する大学情勢についての所感が「学長メッセージ」(http://www.chiba-u.ac.jp/JP/soumuka/message2.htm)として千葉大学ホームページ上に発表された。事態の深刻さについては学長と認識を共有するものであるが、実践的方針としての「2.今年中に千葉大学の改革案を作らねばならない」「3.全学的な規模で千葉大学改革のうねりを起こそう」は、算を乱して文科省『国立大学構造改革方針』を受け入れることになりかねず、賛成できない。まずこの間の経過を冷静に見つめ直してみる。
第1に、6月12-13日の国大協総会では、長尾会長の「何とか『特別委員会報告』を“了承”ないし“受理”したことにして欲しい」という要望が退けられ、単に“受け取った”という線で落ち着いたに過ぎない。従って、多くの批判的意見が噴出した『特別委員会報告』は国大協の方針となっていないことに留意しておく必要がある(開示1参照)。
第2に、11日の経済財政諮問会議と14日の国立大学学長会議に提出された『国立大学構造改革方針』(開示1)については、磯野学長も指摘されているように従来の議論を「飛び越えた」ものであり、当然のことながら国大協ではいっさい討論されていない。
以上の経過を考えるならば、我々がなさねばならぬことは、次の2点となろう。
1)文科省『国立大学構造改革方針』(開示2参照)は、日本の大学システムを根底から覆し、個別大学を分解、放逐・縮小(地方移管、民営化)する危険がある。“我先に”と「改革案」策定作業とその実行を競うような愚行をしてはならず、まず何よりも厳密な検討を急ぎ全学的に行なうべきである。重要なことは、文科省『国立大学構造改革方針』が国大協『特別委員会報告』で示された『枠組』を通じて実行されようとしていることである。その意味で独法化は吹き飛んだのではなく、まさに独法化を通じて文科省『国立大学構造改革方針』が推進されると見なければならない。
2)国大協レベルでは、速やかに臨時総会を開催し、文科省『国立大学構造改革方針』について議論の上、態度を決定すべきである。6月1日理事会後の、また6月13日総会後の長尾会長記者会見内容には国大協内部議論の経過を踏まえていない独断が含まれているのではないかという疑念が払拭できない。この点も臨時総会では議論すべきである。国大協理事という重責を担う磯野学長には、国大協がその本来の「国立大学連合体」としての機能を発揮するよう奮闘されることを切望する。なお、8分の1の大学(13大学)が要求した場合は臨時総会を開催しなければならないという国大協会則の活用も考えられてよい(開示3)。
【提言2】評議会は、「教育研究高度化経費の創設」(10%重点経費)を認めるべきではない。
〈解説〉6月19日部局長会議に「教育研究高度化経費を創設し、配分率は教育研究基盤校費の10%とする」との提案がなされ、本日の評議会にかけられる。このいわゆる「重点配分」案については、既に本センターが「速報」で繰り返し批判しているように極めて問題の多いものである。
第1に、創設の理由が不鮮明である。“独法化を控えて大学がよい評価を受けるために”という本末転倒した理由ではないかと疑われる。
第2に、重点配分対象となる経費項目案も例示されたに過ぎず、しかも重大なことに、配分の方法はおろか配分決定機関も決まっていない。こんな杜撰な方針で財政が運営されてよいのであろうか。
第3に、10%の根拠も示されていない。確かに従前経費の組み替え分が5.45%あり、実質的な重点配分への拠出は4.55%とされている。しかし、部局長会議資料によれば、4.55%以上の配分減となる部局は、法経(11%)、文(9%)、工(8%)、理(7%)、園(6%)、自然(6%)、教育(5%)である。大学本部事務局配分を今年度微増(0.3%)させなければならないのと同じ理由で部局中央経費の削減は殆ど不可能であることを考慮すると、削減の負担は学科レベルまで下ろさざるをえず、教員1人当りの配分減は部局での削減率の3倍近くになる場合もある。これで本年度の教育研究活動が本当にできるのだろか。
【提言3】「教養教育改組方針」については、千葉大学におけるこれまでの普遍教育に対する総括のうえに、検討をすすめるべきである。コア科目をめぐる議論も体系的議論が依然として不足しており、拙速な実施は避けなければならない。
〈解説〉6月26日、第3回大学教育委員会が開催され、「教養教育の改革について」が審議された。多賀谷委員長からの経過報告のあと、コア科目をめぐるサプライ側の学部の意見、デマンド側の意見が述べられ、最終的には提案された議題1の「教養教育改組について(案)」「コア科目一覧(案)」が6月28日の評議会に提案されることになった。しかし、いまだはっきりしていないコア科目数と領域の設定(6月26日の大学教育委員会に提案されたコア科目数は10であって、それ以前に各学部で検討してほしいと言われていた科目数は12である)の問題をはじめ、そもそも教養教育についての理念を明確にしないまま、このまま進めることは、これまでの千葉大学で蓄積されてきた普遍教育の成果を洗い流してしまうことになりかねない。依然として審議継続中の部局もあることを考慮するならば、拙速を避けることが今特に重要である。
***************************************
【開示1】国大協総会における議論
設置形態検討特別委員会から“報告”された「国立大学法人化の基本的考え方」と「国立大学法人化の枠組」に対して,ノノノそれぞれ代表質問を行った。これらを受け,討論に入った。数多くの学長方が発言され,議論百出の状態となった。客観的に見て,大部分は「枠組」に対する批判的意見であった。何度か長尾会長から,この「報告」の取り扱いについて,何とか“了承”ないし“受理”したことにして欲しい,との要望があったが,“了承”や“受理”はありえない,“再検討”することにしてはどうか,等の意見が圧倒的に多く,会長の要望は受け入れられなかった。結局,国大協総会は「報告」を受け取ったが,この「報告」に対して種々の意見が出された,という趣旨で記者会見に臨むことで合意された。(鹿児島大学長の報告より抜粋 http://
www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/108/)。
【開示2】文科省『国立大学構造改革方針』
基本文献は、以下の2つである。なお、【開示4】も参照されたい。
(1) 国立大学長会議における遠山文部科学大臣挨拶〈6月14日〉
後者の一部を以下に掲載する。
大学(国立大学)の構造改革の方針:活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくりの一環として
1 .国立大学の再編・統合を大胆に進める。
○各大学や分野ごとの状況を踏まえ再編・統合
・教員養成系など→規模の縮小・再編(地方移管等も検討)
・単科大(医科大など)→他大学との統合等(同上)
・県域を越えた大学・学部間の再編・統合 など
○国立大学の数の大幅な削減を目指す
◆スクラップ・アンド・ビルドで活性化
2 .国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。
○大学役員や経営組織に外部の専門家を登用
○経営責任の明確化により機動的・戦略的に大学を運営
○能力主義・業績主義に立った新しい人事システムを導入
○国立大学の機能の一部を分離・独立(独立採算制を導入)
・附属学校、ビジネススクール等から対象を検討
◆新しい「国立大学法人」に早期移行
3 .大学に第三者評価による競争原理を導入する。
○専門家・民間人が参画する第三者評価システムを導入
・「大学評価・学位授与機構」等を活用
○評価結果を学生・企業・助成団体など国民、社会に全面公開
○評価結果に応じて資金を重点配分
○国公私を通じた競争的資金を拡充
◆国公私「トップ30 」を世界最高水準に育成
【開示3】国大協会則より
第11条 会長は、必要があると認めたときは、臨時総会を招集することができる。
2 会員総数の8分の1以上の大学から、議題を示して要求があったときは、会長は
、臨時総会を招集しなければならない。
【開示4】文科省、中間報告原案を作成
国立大学法人化の枠組みを検討していた文部科学省は二十七日、学長を教学・経営両面の最高責任者とすることや大学間の再編・統合を促進することなどを盛り込んだ法人化の事務局原案をまとめた。第三者評価に基づく重点的な資金配分の導入や自助努力による財源調達機能の充実を打ち出すなど、競争重視の姿勢を強調。学内組織の在り方などで未確定部分もあるが、法人化の全体像が初めて浮かび上がった。
原案は、識者による調査検討会議の議論を基につくられ、同日開かれた同会議の小委員会に提出された。今後、詰めの調整を行い、九月までに中間報告をまとめる。
原案では、検討の前提として(1)大学改革の推進(2)国立大学の使命(3)自主性・自
律性―の三点を提示。大学の裁量が広がることによる自律性の向上など、法人化の利点を生かして国立大学を活性化させるべきだとする考えを示した。
そのうえで▽国が責任を負う大学として世界的な教育・研究の拠点とする▽大学運営全般にわたる透明性を確保し、情報公開を徹底する▽国民や社会の声や知恵を大学運営に生かす―など、法人化した大学の在り方に言及した。具体的な枠組みでは▽学長は経営と教学の最終責任者とする▽学科の設置や改廃を国公私立とも大学裁量とする▽評価の結果を資源配分に反映させる▽学長が不適任の場合は、学内の審査を経て主務大臣が学長を解任できる仕組みを導入する▽職員の身分は公務員型を基本とするが、非公務員型も含めて考える▽学費は国が示す一定の範囲内で各大学が設定する―などの点が示された。
〈解説〉文部科学省がまとめた国立大学の法人化案は、大学の裁量を広げる一方で、厳しく改革を迫るものとなった。国立大の再編・統合を進めることなど、先の経済財政諮問会議に遠山敦子文科相が提出した「構造改革の方針」(遠山プラン)を色濃く反映しており、法人化を機に、国立大の種別化や競争の激化が進むことは確実だ。
法人化は当初、行政改革の流れの中で「独立行政法人」として持ち上がった。しかし、これまで自治を保障されてきた大学を定型的な業務と同一視する発想には、大学人などから反発が相次いだ。そこで同省を中心に「大学改革としての法人化」を構築し直した結果が、今回の案だ。法人化した国立大では、学長が教学と経営の両面の責任者となり、副学長を中心とするサポートが強化される。学科の設置などは自由化され、使途を特定しない運営費交付金などの予算は年度を越えて使える。教官の兼職規制は緩和される。
大学運営の自由化が進む半面、評価に基づく資金配分が徹底され、自助努力による資金調達も迫られる。情報公開が徹底され、経営に失敗した学長は、学内手続きを経て文科相に解任される。
法人化により、旧帝大などの有力大学と、その他の大学の財力には今より差がつくだろう。基盤の弱い地方国立大や単科大は、統合・再編を含めた厳しい生き残り競争を迫られることになる。
そうした中で必要なのは、先進各国の中で特に貧困な大学への公財政支出を充実させることだ。それがなければ、法人化が知的基盤崩壊の序曲になる恐れがある。(加古陽治)
#:文科省中間報告案は現在に全大教が電子化しつつありますが、本速報印刷までに間に合いませんでした。本センターHPに載せますので御覧下さい。
独法化問題についての教授会、学長等の見解
【開示5】千葉大学理学部の見解〈2001.6.11〉
【開示6】千葉大学文学部の見解
【開示7】国立大学農学系学部長会議(2001.6.8)
【情報へのアクセス】
HPと郵便口座を開設しました
目次に戻る
東職ホームページに戻る