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平成13年度国立大学長会議における文部科学大臣挨拶

                             平成13年6月14日(木)

4月末の小泉内閣発足に伴いまして、はからずも文部科学大臣に就任いたしました遠山でございます。旧知の方もいらっしゃる学長の皆様方とこういうかたちで一緒に仕事ができますこと、本当に嬉しいはずなのですが、その責任の重さに身の引き締まる思いがいたします。ここで、学長の皆様方の日頃の御尽力に感謝申し上げますとともに、この難局にあって、どうぞ改めてのお力添えと御協力をお願い申し上げます。
 本日の国立大学長会議の開催に当たりまして、関係するいくつかの事柄につきまして、私の所見の一端をお話させていただきます。
 まず第一に、これからの国立大学の進むべき方向について申し述べます。
 20世紀後半、急速に経済発展をみた我が国社会も、90年代以降、残念ながら経済が長期にわたって低迷し、社会に閉塞感が充満しております。これまでうまく機能してきた仕組みが、21世妃の社会には必ずしもふさわしくないことが、明らかになってまいりました。このような状況下で、日本の大学も大学改革を目指して、教育、研究の充実、大学運営の改善に取り組んでこられたことに敬意を表します。しかしながら、今もって、日本の大学は、国民の期待に十分に応えているとはいえず、産業界をはじめとする社会からのさまざまな批判もあり、これらを謙虚に受け止め、さらに改革への努力がなされるべきでありましよう。その前提の上で、私は、「大学の構造改革なくして、日本の再生と発展はない」との信念の下に、国立大学を、活力に富み、国際競争力のある大学にするため、三つの方針で改革を実行すべきものと考えております。これからの日本にとって、国立大学がその役割と責務を果たすことは極めて重大と考えるからです。
 ここで、既に報道されておりますが、過日11日の経済財政諮問会議において私が発表した資料を用いながら、御説明申し上げます。
 その第一点は、「国立大学の再編・統合を大胆に進める」という方針です。
 戦後、我が国の国立大学は、旧制の大学に専門学枚等を含め、新制大学全69校で発足いたしました。その後、経済成長に伴う人材養成の必要性や国民の進学意欲の高まりなどを背景に、一貫して拡充整備が進み、今日の99校こ至っています。
 しかし、現下の厳しい経済、財政状況や、法人化の流れも考慮しつつ、将来への更なる発展を目指して各大学の運営基盤を強化するためには、大胆かつ柔軟な発想に立って、大学間の再編、統合等を進めることが不可欠であると考えております。
 すでに、山梨大学と山梨医科大学、筑波大学と図書館情報大学などを始めとして、一部の大学間では、学長のご見識とリーダーシップの下に、新しい大学づくりのための積極的かつ具体的な検討が強められており、心から敬意を表したいと思います。
 学長の皆様から、将来の大学像を年頭に、それぞれ特色としっかりした内実をもった、真に国民の期待に応えられる国立大学を目指して、積極的に、再編、統合等の大胆な計画をお聞かせいただきたいのでございます。皆様のご意見を伺いながら、最終的には当省の責任において具体的な計画を策定したいと思っております。
 第二点は、「国立大学に民間的発想の経営手法を導入する」という方針です。
 国立大学の運営の在り方については、一昨年の学校教育法等の改正を踏まえ、各大学で新しい運営方法を意欲的に採り入れていただいていますが、法人化に際しては、そのメリットを最大限に生かせるよう、いわば民間的発想の経営手法を積極的に導入し、民営化という議論もある中で、むしろ大胆に民間型の手法をとり入れることが必要になると私は考えております。
 幸い、この点については、国立大学協会でも真剣な検討が行われ、先に、国立大学協会内の特別委員会から報告がまとめられております。また、当省に置かれた調査検討会議においても、具体的な検討が進んでおり、この秋にも中間まとめが予定されていますが、私としては、これらの検討状況を踏まえつつ、国立大学が社会の期待に応えて、より活性化することを願っているものでございます。
 第三点は、「大学に第三者評価による競争原理を導入する」という方針です。
 私は、大学の教育研究の世界に、いわゆる市場原理をそのまま適用するのは必ずしも適当でないと考えていますが、他方、第三者による評価システムを通じて、より競争的な環境を整えるえることは、大学の教育研究の活性化や水準の向上にとって、極めて重要なことと思います。
 この点、国立大学については、大学の評価・学位授与機構等による第三者評価の本格的な導入が予定されているところですが、皆様の御協力によりしっかりした評価システムを構築し、各大学の個性や特色に留意しつつ、国公私立、各種学問分野を通じ、世界をリードするトップクラスの大学の育成に力点をおいていくことが、今、当省に求められている
最大の責務の一つであると考えでおります。
 以上、本来ならば、まず学長の皆様にお示しした上で、と思っていたのですが、経済財政諮問会議において、大変なスピードで、いわゆる「骨太の方針」が固まりつつある状況を踏まえ、我が省の責任において、大学の構造改革の方針を明らかにしたものでございます。この大きな決意の背後には、国立大学のあり方に対し、厳しい眼が注がれいることを想起していただきたいと思います。いろいろな御意見もあろうかと存じますが、要は、「これなら大学に重点投資をしてよいだろう」との世上の期待と支援をとりつけて、もっと「世界を相手に勝てる大学」「国民から信頼される大学」になってほしいのであります。学長の皆様方におかれても、国立大学の更なる飛躍のために、御理解と御協力を賜りますようお願いいたします。
 なお、11日の会議では、「大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プラン」も配布しております。これは、今後、政府の産業構造改革・雇用対策本部等の場で具体的に提案していくつもりのものであり、大学を核とした改革の柱として、 世界最高水準の大学作り、・人材大国の創造、・都市・地域の再生の三つを掲げて、改革の方向性と具体的な施策を示しております。特に、大学としての社会への貢献のほか、産業界等からの支援と協力の促進も含めた産学提携の強化の必要性など問題提起しております。このプランにつきましても、御理解いただくとともに、「大学が変わる、日本を変える」という意気込みを持って、産業界や他省からの注文を受身で取り入れるのではなく、大学側として積極的な取組を進めていただようお願いいたします。
 第二に、過日、大阪教育大学の附属小学校で起きた痛ましい事件に関連して申し上げます。
 何ともやりきれなく、心痛む事件でありまして、二度とこのようなことがおこらぬよう、学校における安全管理の徹底について、我が省としても、最大限の対応に努力してまいりますが、政府全体としての安全な社会づくりのための取組の検討も重要になってくると考えております。
 幼い子どもたちや患者さんなどをお預かりしている大学はもちろん、全ての大学において、従来の常識が通用しなくなりつつあるという現状を踏まえて、万金の安金管理が図られるよう、御配慮をお願いいたします。
 関達して、各種の危機管理について申し添えます。
 昨今、附属病@における医療事故や不正経理事件、大学入試に係るミス等が発生しております。それぞれの事柄に応じて、原因や背景は多様であるものの、どうぞ学長の皆様が先頭に立って、学内の注意を喚起し、再発防止策を徹底するとともに、適切かつ迅速な善後策等に遺憾なきを期していただくようお願いいたします。
 最後に、日下精力的に進めでおります教育改革について申し上げます。
 一国の未来は教育の成否にかかっております。今、我が国の教育はさまぎまな問題を抱えておりますが、何といっても、まず、国民の学校教育への信頼を取り戻し、「学校が良くなる、教育が変わる」ことを目指して、国民が期待する教育改革を断行することが不可欠であります。その大きな道筋は、既に教育改革国民会議の最終報告等を踏まえて取りまとめられた、「21世紀教育新生プラン」に示されており、現在、私としましても、自ら先頭に立って、その実現に取り組んでいるところです。
 具体的には、まずは緊急に対応すべき事項として、今国会に学校教育法をはじめとする教育改革関連法案を6本提出し、その成立に全力をあげて取り組んでおります。今回の法改正が成立すれば、日本の初等中等教育においては、社会奉仕体験活動等の充実により、児童生徒の社会性や豊かな人間性が一層育まれるととも、指導の不適切な教員対しては他の職への転職を可能とし、また、児童生徒の問題行動への対応等が、より適切にとり得るようになります。さらに、高等教育においては、大学における飛び入学の促進等により、一人一人の能力・適性に応じた教育が一層推進されることになります。
 教育基本法の見直しと教育振興基本針画の策定については、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、省内で検討を行った上で、中央教審議会等で幅広く国民的な議論を深めていくこととしております。
 また、4月11日には、中央教育審議会対して諮問を行い、現在、高等教育に関しては、「今後の高等教育改革の推進方策について」幅広く御審議いただいております。その審議の動向こ御留意いただくとともに、学長の皆様からも、いろいろな 会に御示唆等をいただければ幸いに存じます。
 以上、目下重要と考えるいくつかの問題について申し述べました。学長の皆様方におかれましては、多事多難な中、御苦労をおかけいたしますが、当省としても必要な支援は最大限にいたしますので、リーダーシップを十二分に発揮され、国立大学が社会の期待に応え、より活発で充実した教育研究活動を展開し、新世紀の日本を担う力を発揮して下さるよう、一層の御尽力をお願い申し上げまして、私のあいさつといたします。



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