独行法反対首都圏ネットワーク


国立大学農学系学部長会議声明
2001.6.11 [he-forum 2087]        国立大学農学系学部長会議声明

各位


去る、6月8日、国立大学農学系学部長会議は「国立大学農学系学部長会議声明」と国大協長尾会長宛「国立大学法人化についての検討に関する要望」を発表しましたのでお知らせします。

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                   平成13年6月8日


国立大学農学系学部長会議声明

−大学にふさわしい制度設計を−


                    国立大学農学系学部長会議

1.はじめに
さる6月1日に開催された国立大学協会理事会は、来るべく総会にむけて「国立大学法人化についての趣旨」(以下、趣旨)、「国立大学法人化についての基本的な考え方」(以下、考え方)、「国立大学法人化の枠組」(以下、枠組)を確認されました。
農学系大学・学部を有する40国立大学・学部と6公立大学・学部等の学長・学部長で構成する国立大学農学系学部長会議は、平成11年4月の閣議において、「国立大学の独立行政法人化を大学改革の一環として検討し、平成15年までに結論を得る」ことが決定されて以来、国立大学の独立行政法人化が専ら業務の効率性向上という行政改革の視点から提起されたことに強い危機感を提示した国立大学協会と基本認識を共有してきました。
国立大学農学系学部長会議は、困難な状況の下にありながらも種々の委員会を設置し、真摯な論議を進めてこられた国立大学協会に対して、心からの謝意を表するものです。また、「考え方」の「高等教育および学術研究に対する国の責務」に指摘されているように、わが国の高等教育に対する公的投資が欧米諸国に比べて極めて低い水準にとどまっている現状を改善することの重要性を国立大学協会が重視されていることは、私たち国立大学農学系学部長会議の認識と一致するものです。しかしながら提示された「枠組」には、必ずしも「考え方」に謳われた気高い精神が生かされていないように思えます。


2.過度の競争は教育や学術を衰退させるおそれがあります

昨年5月に招集された国立大学・大学共同利用機関長等会議において、文部大臣が説明されたように、「短期的には成果を予測しがたい先駆的な研究や基礎的な研究、社会的需要は少ないものの重要な学問の継承などに果たしてきた国立大学の役割や、学生が経済状況に左右されることなく、自己の関心や適性に応じて、分野を問わず大学教育を受ける機会を確保する上で果たした国立大学の貢献」は、今後の国立大学の在り方を論ずる上で決して忘れてはならない点であると、私たち国立大学農学系学部長会議は考えております。
しかし、国立大学協会理事会で確認された趣旨等には、「教育および研究面における国際的競争力の強化」や「広く大学間で切磋琢磨」することの重要性が、あまりにも強く押し出されすぎているという感を、残念ながら否むことができません。もちろん私たち国立大学農学系学部長会議は、健全な競争が社会の発展を促すことを否定するものではなく、国立大学が競争的環境から無縁であると主張するものでもありません。これまでも国立大学人は、教育研究において、また社会・国際貢献等において切磋琢磨してきましたし、今後より一層努力することを決意しております。 
過度な競争的環境に身を置かれた国立大学において、「短期的には成果を予測しがたい先駆的な研究や基礎的な研究」が推進されるでしょうか。また「社会的需要は少ないものの重要な学問」が継承されるでしょうか。大学の教育研究が効率のよい対象や方法に特化するという歪みが助長されないでしょうか。
農学は、地域に密着した教育研究を推進してきた国立大学の他分野と同様に、さまざまな課題において地域性を重視してきました。過度な競争的環境によって均衡のとれた従来の農学教育研究が弱体化することを、私たち国立大学農学系学部長会議は危惧いたします。


3. 学部の成熟した自主性・自律性は、大学運営に貢献します

大学の自主性・自律性の大切さは繰り返すまでもありません。そのために「学長を中心とする執行部体制を強化し、大学の管理運営の責任体制を明確化」されることは当然のことと考えます。
私たちはそれに加えて、大学の真の自主性・自律性は、その構成単位である学部の自主性・自律性を保証し、構成員のエネルギーを最大限に引き出すことを可能にするネットワーク型の運営体制を構築することによって達成されることを指摘しておきたいと思います。それは成熟した地域社会が、その構成単位である地域住民の自主性・自律性の尊重によってこそ達成し得ることと同じです。また、「大学の管理運営のアカウンタビリティや社会の要請の取り入れ等の観点から、学外有識者の役割を強化する」ことは重要な視点ですが、大学運営への学外者の参画は大学自治の原則を尊重しながら進めることもまた、重要な視点です。国立大学に対する社会からの批判や期待はきわめて多様なものがあり、それらの多くは国立大学へ
の期待のあらわれとして真摯に受け止めるべきものですが、ときには学問の自由を守るために受け入れ難い批判がないとはいえません。健全な社会を構築するために、大学は種々の批判に対する選択眼をもち、ときには的確に反論することが求められているのではないでしょうか。
私たち国立大学農学系学部長会議は、社会との間で責任ある論議と交流を積み重ねることによって、より開かれた大学づくりを進めるとともに、成熟した学部運営の構築のために努力を続けることで、大学の真の自主性・自律性の確立に貢献していく決意を表明するものです。
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                        平成13年6月8日

国立大学協会
会長 長尾 真殿


    国立大学法人化についての検討に関する要望



                   国立大学農学系学部長会議 会長 林 良博


国立大学農学系学部長会議(以下、本会議)は,6月7,8両日に開催した総会において、別紙の声明を採択いたしました。声明は、6月1日に開催された貴協会の理事会において確認された「国立大学法人化についての趣旨」等に対する国立大学農学系学部長会議の率直な感想をまとめたものです。


農学系大学・学部を有する40国立大学・学部と6公立大学・学部等の学長・学部長で構成する本会議は、国立大学の独立行政法人化が専ら業務の効率性向上という行政改革の視点から提起されたことに強い危機感を提示された貴協会と基本認識を共有してきました。


本会議は、困難な状況の下にありながらも種々の委員会を設置し、真摯な論議を進めてこられた貴協会に対して、心からの謝意を表するものです。しかしながら、貴協会理事会で確認された「国立大学法人化についての基本的考え方」を具体化するための「国立大学法人化の枠組」につきましては、いま一度ご再考願いたく、お願い申し上げます。


 国立大学を取り巻く環境が日1日と厳しさを増しておりますこと、また時間的制約があまりにも厳しいことは十分に承知しておりますが、貴協会が一丸となって「国立大学の法人化問題」に対処されますことが、この難局を乗りきるために不可欠であると本会議は考え、お願い申し上げる次第です。

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服部 昭仁(Dr. Akihito Hattori )
北海道大学大学院農学研究科
生物資源生産学専攻
畜産資源開発学講座 
畜産食品開発学研究室
Meat Science Lab. 
Division of Bioresource & Product Sci.
Graduate School of Agriculture
Hokkaido Univ.
060-8589 Sapporo, JAPAN
(tel) 81-11-706-3881
(fax) 81-11-716-0879
e-mail: hattori@anim.agr.hokudai.ac.jp




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