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国大法人化 競争を重視 文科省中間報告原案 学長に経営責任
2001.6.28 [he-forum 2205] 東京新聞06/28
『東京新聞』2001年6月28日付
国大法人化 競争を重視
国立大学法人化の枠組みを検討していた文部科学省は二十七日、学長を教学・経営両面の最高責任者とすることや大学間の再編・統合を促進することなどを盛り込んだ法人化の事務局原案をまとめた。第三者評価に基づく重点的な資金配分の導入や自助努力による財源調達機能の充実を打ち出すなど、競争重視の姿勢を強調。学内組織の在り方などで未確定部分もあるが、法人化の全体像が初めて浮かび上がった。
原案は、識者による調査検討会議の議論を基につくられ、同日開かれた同会議の小委員会に提出された。今後、詰めの調整を行い、九月までに中間報告をまとめる。
原案では、検討の前提として(1)大学改革の推進(2)国立大学の使命(3)自主性・自律性―の三点を提示。大学の裁量が広がることによる自律性の向上など、法人化の利点を生かして国立大学を活性化させるべきだとする考えを示した。
そのうえで▽国が責任を負う大学として世界的な教育・研究の拠点とする▽大学運営全般にわたる透明性を確保し、情報公開を徹底する▽国民や社会の声や知恵を大学運営に生かす―など、法人化した大学の在り方に言及した。
具体的な枠組みでは▽学長は経営と教学の最終責任者とする▽学科の設置や改廃を国公私立とも大学裁量とする▽評価の結果を資源配分に反映させる▽学長が不適任の場合は、学内の審査を経て主務大臣が学長を解任できる仕組みを導入する▽職員の身分は公務員型を基本とするが、非公務員型も含めて考える▽学費は国が示す一定の範囲内で各大学が設定する―などの点が示された。
解説
文部科学省がまとめた国立大学の法人化案は、大学の裁量を広げる一方で、厳しく改革を迫るものとなった。国立大の再編・統合を進めることなど、先の経済財政諮問会議に遠山敦子文科相が提出した「構造改革の方針」(遠山プラン)を色濃く反映しており、法人化を機に、国立大の種別化や競争の激化が進むことは確実だ。
法人化は当初、行政改革の流れの中で「独立行政法人」として持ち上がった。しかし、これまで自治を保障されてきた大学を定型的な業務と同一視する発想には、大学人などから反発が相次いだ。そこで同省を中心に「大学改革としての法人化」を構築し直した結果が、今回の案だ。
法人化した国立大では、学長が教学と経営の両面の責任者となり、副学長を中心とするサポートが強化される。学科の設置などは自由化され、使途を特定しない運営費交付金などの予算は年度を越えて使える。教官の兼職規制は緩和される。
大学運営の自由化が進む半面、評価に基づく資金配分が徹底され、自助努力による資金調達も迫られる。情報公開が徹底され、経営に失敗した学長は、学内手続きを経て文科相に解任される。
法人化により、旧帝大などの有力大学と、その他の大学の財力には今より差がつくだろう。基盤の弱い地方国立大や単科大は、統合・再編を含めた厳しい生き残り競争を迫られることになる。
そうした中で必要なのは、先進各国の中で特に貧困な大学への公財政支出を充実させることだ。それがなければ、法人化が知的基盤崩壊の序曲になる恐れがある。
(加古陽治)
(以下略)