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独行法反対首都圏ネットワーク

☆小沢氏講演録 
 .国公立大学通信 2003.03.01(土) 抄 
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国公立大学通信 2003.03.01(土) 抄

--[kd 03-03-01 目次]--------------------------------------------
[1] 小沢弘明「国立大学法人化法案を巡る状況と今後の運動の方向について」
[2] 国立大学法人法案閣議決定報道:NHK、朝日、読売
[3] 首都圏ネット事務局「国立大学法人法案」の公表について2003年2月28日
[4] 法人法案に対する全大教「声明」2003.2.28
[5] 豊島耕一「項目の順序自体が重要な「声明」である --- 全大教の声明について」
[6] 2/24国大協理事会における検討の結果について(報告)と資料
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各位

小沢氏が先週北大で行なった講演記録を北大ネットワークでオンライン化しま
した[1]。

           ◆ ◆ ◆ ◆◆ ◆ ◆ ◆◆ ◆ ◆ ◆◆ ◆ ◆ ◆

「教育基本法原理主義者」を標榜する豊島氏が、独立行政法人化の国家統制を
批判の核心に据えるべきことを説いています[5]。学外から見れば最もわかり
やすい問題点が、大学社会内部では余り深刻に思われていないのはなぜでしょ
うか。

一つの原因は、現在の「国家統制」は戦前とは違って財政誘導などを通し巧妙
に行なわれているため、時代錯誤の言葉のように感じる人が多い、という点に
あるのでしょう。

しかし、もっと大きな原因は、文科省は「大学の味方」だから国家統制という
言葉は的外れだ、という考えにあるのではないでしょうか。国立大学法人は、
文科省を委託者とする受託者ですが、文科省という組織自身は歴史的に一貫し
て受託者であり続けたわけですーーその委託者は、といえば、戦前であれば軍
部・財閥、戦後であれば産業界・財界と言えるでしょう。そして再び軍部が強
くなれば軍部の委託を受託するでしょう。それゆえに「国家統制」は、現在の
文科省の「善意」とは無関係に制度化してはいけないわけです。本当は、文科
省自身が、未来の文科省の罪業を準備するような真似をしてはいけないのです。

大学への「国家統制」の実質的中身は、文科省を通して時々の最も強い世俗的
勢力が大学を利用することであり、今回審議される国立大学法人制度が実現し
た場合には、「世俗的勢力」は、国家の諸装置を通し間接的に大学を利用する
ことに留まらず、外部役員制度と運営協議会委員における過半数外部者制度と、
企業からの研究費への政府補助金上乗せ制度による財政誘導により、直接的に
大学を支配することはほぼ確実です。教育基本法第10条は、教育行政による
「不当な支配」だけでなく、「世俗的」勢力による不当な直接的支配ももちろ
ん禁止しているわけです。国立大学法人制度設計は教育基本法第10条に幾重
にも違反していると言えると思います。

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国立大学法人法案が閣議決定され、やっと国立大学関係者全員が、国立大学法
人化の是非を詳細に議論できる時が来ました。国会で審議している議員の方々
が日本社会のために何が良いかを的確に議論できるように、研究と教育の当事
者の率直な見解を表明し伝えていくことが必要です。わずかな時間しかないか
もしれませんが、国立大学法人法案(77ページ)[3]を最低限一読しましょう。
これが私達の研究と教育を支配するルールとなる可能性が高いのですから。
                                                             (編集人)

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[1] 小沢弘明「国立大学法人化法案を巡る状況と今後の運動の方向について」
(2003.2.21 独立行政法人化問題を考える北大ネットワーク講演会記録)
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「・・・この行政改革という話のときに必ず出てくるのが、行政改革によって
「小さな政府」を実現する、これが削減の論拠になっているわけです。しかし、
日本はすでに非常に「小さな政府」なんです。これは、国家公務員も地方公務
員も含めてですけれども、公務労働の従事者というところを考えてみますと、
日本はすでに先進資本主義国の中では最低水準の「小さな政府」です。しかも、
財政政策や景気対策ということとも関係してきますけれども、だいたい不況の
ときというのは、例えば、僕はヨーロッパ史が専門ですけれども、ヨーロッパ
の福祉国家であれば、不況のときは公務労働に従事する人を増やして失業者を
吸収し、それによって購買力を高めて、消費活動を刺激する政策をとるわけで
すけれども、日本は逆をやってですね、民間が血を流しているのだから公務員
も血を流して、首を切って、というようなことをやっていくからデフレスパイ
ラルになっていくのです。

ですから、おそらく政策合理性という観点から見ると、行政改革という形にも
なっていない。むしろこの間示されたのは天下りが増加するということであり
ますし、くわえて、「国立大学法人」になっても現行の国立大学で行われてい
るのと同じようにですね、文部科学省の幹部職員のローテーション、全国の大
学を回っていく、こういうシステムは維持されることになっておりますので、
これは行政改革にもなっていないという批判が可能であると思います。

では、産業政策になるのかということですけれども、これもちょっと怪しいと
いうことであります。まず、現状の分析や現状に対する反省が全く欠如してい
る。すでに科学技術基本計画の5カ年計画の17兆円が終わって、今度は第二期
の24兆円に入っていますけれども、巨大な研究費が湯水のように特定分野には
注ぎ込まれているわけです。研究費を使い切れなくてどうしようかといってい
る研究室が一方ではあるんです。隣の研究室では、日常的な研究経費にも事を
欠くという非常に不思議なことが行われていて、そういう政策についての評価
というのが行われていないわけであります。例えば、核研では、だいたい研究
者一人あたり年間6000万とか7000万とかの研究費がつくと聞いたことがありま
す。そういう研究費をポンと与えられたときに、研究者がどう行動するかとい
うと一年中仕様書を書いている、こういう器材を購入したいとか、こういうこ
とをやりたい、最後は、この微分方程式を解いてくれというのを民間委託する
んですね(笑)。そうやってお金を使う。これはある種の公共事業の別形態で
ありまして、重点投資というのはこういう無意味な金の使い方を行ってきてい
るわけです。

  それがありつつ、逆に、一般的なところでは日常的な研究費というのが水光
熱費で消えてしまって、教育研究資源の不足が現実化しているという状況であ
ります。例えば、千葉大学では、2年前から大学院の博士課程の建物ができた
んですけれども、建物は公共事業だからつくってくれるんですが、維持運営費
というのはつけてくれないわけです。そうすると研究費がその分減るというわ
けです。建物は公共事業でつくるけれども、しかし、その中身、具体的な教育
研究活動に従事できるような環境はつくられないということになります。イン
テリジェントビルにするという謳い文句で高速LANの端末はここまできている
んですけれども先につなぐものがない、そういう状況になっています。

法人化は産学連携をさらに進めるためだという謳い文句がありますけれども、
これも現実にはあまり関係ないわけですね。ベンチャー企業の育成とかそうい
うようなことは法人化とは関係なくすでに北大でも行われていますし、1月に
行った神戸大学でも門を入って一等地のところにベンチャービジネス何とかセ
ンターという建物がすでにできておりまして、やっているわけであって、それ
自体は法人化とは直接の関係がないと考えられます。・・・」


「・・・では、こういう改革によって、教育研究活動が活性化するかというと、
これは活性化しないですね。すでに、大学人はみんな疲れているわけですね
(笑)。冗談ではないほど膨大な書類と中期目標・中期計画を何度も書かされ、
しかし、何度書いても意味がない。意味がないのに書かなきゃいけないという、
こういう作業を繰り返しておりまして、知的産業にとって非常に打撃的な雰囲気
というものが蔓延しています。こういう雰囲気が蔓延していると、だいたい人は
怒るか、怒っている人はこういうところに来ているんですけれども、あきらめる
か、つぶやくかぐらいしかないわけですね。こういう大学という場にとって非常
によくない雰囲気がすでに蔓延している。・・・」

「・・・何よりも、あきらめたり、単につぶやいているだけではなくて、積極的
に文句をいうことが大事でありまして、この間の状況を見ていきますと、文句を
いって潰されたところなんてないんですね。例えば、教員養成系の再編統合の問
題で、大体文句をいったところは止まっているわけです。できないんですね。鹿
児島大学の田中学長はこの数年一貫して文句をいってきましたけれども、それに
よって鹿児島大学が不利益を受けたことはないんですね。むしろ文科省は一生懸
命建物とかをつくって懐柔に努めようとしたらしいですけれども(笑)。学長は
最後まで懐柔されなかったわけです。それと同時に、文句を言う活動として、こ
の後、雑誌の『世界』でもう一回特集が組まれる予定ですし、それから『現代思
想』も特集を組むそうですし、首都圏ネットではブックレットの発行を視野にお
さめておりますので、これらを通じて問題のありかを示していきたいと思ってお
ります。

また、あるべき大学像というのをわれわれの側が考えて、それを批判の論拠、批
判の基礎にすえていくことが必要だと思います。つまり、こういう運動を行って
いくと、今の国立大学が良いのかということが必ず出てくるわけですけれども、
私の考えでは、今の国立大学ではダメだということをやはり基礎にすえなければ
いけない。今の国立大学のままではダメだ、ということですね。・・・」
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[2] 国立大学法人法案閣議決定報道
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[3] 首都圏ネット事務局「国立大学法人法案」の公表について2003年2月28日
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[4] 法人法案に対する全大教「声明」2003.2.28
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[5] 豊島耕一「項目の順序自体が重要な「声明」である --- 全大教の声明について」
[he-forum 05146] 2003.2.28
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[6] 2/24国大協理事会における検討の結果について(報告)と資料
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
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