トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大法人化を閣議決定、脱「一律」に戸惑う大学も 
 .『読売新聞』Yomiuri On-Line 2003年2月28日付 
--------------------------------------------------------------


『読売新聞』Yomiuri On-Line 2003年2月28日付

国立大法人化を閣議決定、脱「一律」に戸惑う大学も


 99の国立大学を法人化する国立大学法人法案が28日、閣議決定された。
国の機関という立場を離れ、国立大に経営の独自性を与える一大改革だが、授
業料の決め方や、文部科学省から派遣されている大学職員の処遇など、「全国
一律」に長く慣れてきた国立大関係者には、戸惑いも見られる。

 全国立大が加入する国立大学協会(東京・本郷)の事務局員は、昨年暮れ、
公正取引委員会から呼び出しを受けた。霞が関に出向くと、公取委から「授業
料は一律にこうしましょう、なんて決めると問題になりますからね」とクギを
刺された。「護送船団」から脱却できるのか、“競争の番人”が厳しく見つめ
る。

 法案では、「学校の授業料その他に関し、必要な事項は省令で定める」とさ
れた。国が一定の範囲を示し、その中で各大学が、自らの経営戦略によって額
を決めることになる。

 国大協で、学生問題を担当する鮎川恭三・愛媛大学長は、「学生たちも、学
費が上がるのを心配しているようだ」と話す。法人化後も、国から「運営交付
金」として財政支援を受けるが、学生には、自由になった大学が値上げに動く
ことへの警戒感がある。鮎川学長は、「国立と名前が付いている以上、そんな
に勝手はできない」と語る。

 国立大の年間授業料は今年度、どこの何学部だろうと49万6800円。私
立は、文系が平均約70万円、理系約95万円、医学系約300万円と、学部
差が激しい。医学部の初年度は、平均930万円だ。文科省は今後、国立大に
授業料の範囲を示す際、文、理、医系などの差をつけるか、決めかねている。

 今まで一律だった論拠は、貧富を超えた教育の機会均等、分野に偏らない人
材育成など。一方で、「医者になって稼ぐなら応分の負担を」「カネのかかる
学部の実費負担は当然」という意見も強い。議論は続く。

    ◇

 現在、国立大の事務職員は3万6000人で、課長以上の約2200人は、
文科相の任命。うち約1000人は、もともと国立大に採用された後、文科省
に引き抜かれた職員で、再び大学に“出向”している人材だ。

 ところが彼らは、来年4月1日、国家公務員から法人職員に身分が変わり、
任命権者が学長になる。会社に例えると、異動で来ていたはずが、地元企業の
社員になってしまうわけだ。

 文科省の板東久美子・人事課長は、「任命権者が学長になると、大臣の辞令
1枚で簡単に呼び返せた今までとは違う」と話す。各大学が独自性を出すと、
給与水準もポストもばらばらになり、人事交流は一筋縄でいかなくなる恐れも
ある。

 ただ、板東課長は、「当面の移行期間は、本人の希望を細かく聞いて、学長
と相談していくことになる」とも言う。

 国立大に異動勤務中のある課長は、「全国異動で動いて来たのを、急に止め
たら収まらない。人事も、予算配分を握っている文科省の裁量通りなのは変わ
らないはず」と話した。