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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学独立行政法人化問題週報抄
 .[he-forum 4949] 国立大学独法化問題週報 102 抄
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To: 高等教育フォーラム <he-forum@ml.asahi-net.or.jp>
Subject: [he-forum 4949] 国立大学独法化問題週報 102 抄

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             国立大学独立行政法人化問題週報抄
        Weekly Reports  No.102 2003-01-13 Ver 1
            http://ac-net.org/wr/wr-102.html
         総目次:http://ac-net.org/wr/all.html
     講読(無料):http://www.mag2.com/m/0000031268.htm
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                            年頭にあたって

国立大学の独立行政法人化が国会で審議される年が始まりました。2月下旬に
は法案が公開されると伝え聞きますので、法案大綱はすでに確定しているはず
です。それが未公開のままであることは、内容が長期間国民の目に曝されれば
「国立大学法人化」のばけの皮がはがれ国会審議が混乱し政府の「予定」が狂
うことを恐れているのでしょうか。この期の及んでも秘密主義を続けているこ
と自身が、「嘘で固めた」国立大学法人化政策を進める存在が感じている心細
さを証しているように感じます。

構造改革の痛みを担う「弱者」とは「個人という存在」であり、構造改革で強
くなりうるのは「組織」だけです。大学構造改革も同じです。「強くなる」か
もしれないのは「組織」であり、教育・研究の仕事場であった大学は、構成員
に組織への忠誠を要求し、それに服しない構成員を圧迫する「組織」に変貌し
ますーーそうしなければ違法とされる組織になるのですから。そして、その組
織は中央官庁に忠誠を誓わなければ存続できなくなるのです。個人が組織に従
属する度合がもともと強い日本社会で、このような制度変更をすることの結末
は、想像するだにおぞましいものがあります。

政治的にはマイナーに見えた問題が国の行く末を左右することは良くあること
です。どうか、大学関係者の方は、法人化への賛否にかかわりなく、これから
の数ヶ月、事の推移を注意深く見守り、当事者としての責任を全うされること
をお願いします。
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                                目  次
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[102-0] 内容紹介
 [102-0-1] 朝日の連載記事
 [102-0-2] 日本学術会議に関するパブリックコメントへの内閣府「回答」
 [102-0-3] 一日中教審についての青木氏から文部科学省への公開質問状
 [102-0-4] 九州大学の任期性導入問題
 [102-0-5] 読売報道「レベル低い国立研究所は廃止」について
 [102-0-6] 国立大学におけるの過度の教員流動性による弊害
 [102-0-7] インターネットのメディアの萌芽期
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[102-dgh] 独立行政法人問題
 [102-dgh-1] 「2/01 国立大学の独法化・再編統合に反対する交流・・・
 [102-dgh-2] 「1/16 国立大学法人化・教員養成系学部の統廃合問・・・
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[102-uni] 大学の動き
 [102-uni-1] (毎日03-01-01)九州大:助手以上の全教員対象に任期制・・
  [102-uni-1-1] 全大教「任期制の導入問題に関する緊急要望書」・・・
  [102-uni-1-2]「京都芸大に法制化任期制は要らない」
  [102-uni-2] 東北大が募集人員削減 少人数教育の徹底
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[102-ikn] 意見
 [102-ikn-1] 編集発行人から朝日新聞社会部への手紙(2003-01-06)
  [102-ikn-1-1] 「転機の教育 大学の力」朝日連載 2003-01-01〜01-10
 [102-ikn-2] 渡辺勇一氏(新潟大学教授)の独立行政法人問題関係文書
  [102-ikn-2-1] 1999-10-25:  独立行政法人は決して容認できる制度・・・
  [102-ikn-2-2] 2001-04-01: 学生による授業評価をどう見るか
  [102-ikn-2-3] 2001-06-24:  日本の科学研究のあり方
  [102-ikn-2-4] 2001-10-29:  独法化についての文科省への意見・・・
  [102-ikn-2-5] 2003-01-06: 学生による授業評価の平均値は後期に高く
  [102-ikn-2-6] 「学生にとっての大学改革」
 [102-ikn-3] 鹿児島経済大学三教授からの新年のメッセージ(2003-01-04)
  [102-ikn-4] 佐藤真彦(横浜市立大学)「徹底論証:学問の自由と大学の自治
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[102-acd] 研究問題
 [102-acd-1] 内閣府:日本学術会議に対する意見募集の結果について
 [102-acd-2] (読売03-01-08)レベル低い国立研究所は廃止、文科省が3月に選別
  [102-acd-2-1]  国立大学協会事務局から読売新聞社への抗議文書 1999-12-10:
 [102-acd-3] (朝日03-01-09) 核融合研究、拠点集約へ 京大・九大施設は廃止
  [102-acd-4] (毎日03-01-10) 科研費の繰り越し容認へ 補助金流用受け財務省
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[102-doc] 文献紹介
 [102-doc-1] 渡邊洋三「日本社会はどこへ行くー批判的考察ー」1990.5.21
 [102-doc-2] 渡邊洋三他「日本社会と法」1994.5.20
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[102-mda] メディア問題
 [102-mda-1] メディアの辺境地帯サイト
  [102-mda-1-1]「新年のご挨拶2003-01-01」
  [102-mda-1-2]マスコミの自浄能力喪失小史 1995-2002
 [102-mad-2] My News Japan
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[102-kd] (転載)国公立大学通信[kd 03-01-05]
 [102-kd-1] 「大学教員の流動化と地方大学の振興計画および大学制度全般
 [102-kd-2] 「組織への精神的隷属を強化する懸念」
 [102-kd-3] ネット上公開されている意見等の紹介
 [102-kd-4] 「11・30一日中教審」の運営方法に関する公開質問状
  [102-kd-4-1] 参考:大岡みなみ氏傍聴メモ
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[102-0] 内容紹介

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[102-0-1] 朝日の連載記事

朝日が新年に「大学の力 転機の教育」を連載した[102-ikn-1-1]。内容は、政
府や産業界が飴と鞭で大学に強要しようとしている変革を、時代の要請である
かのように客観性を装って描くことと、欧米やアジアの諸国に遅れを取るとる
なという論調に終始しており、国民の判断を誤らせる危険を感じた。戦前、政
府と財界を代弁し戦争を煽った新聞社があったが、時代に迎合せず時代を超え
た普遍的視座や価値を国民に提示する使命において、少数の記者の個人的努力
は輝いているが、組織としての日本のマスメディアは、何か変ったのだろうか。

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[102-0-2] 日本学術会議に関するパブリックコメントへの内閣府「回答」

112人の意見の概要と内閣府の「回答」の表[102-acd-1]がインターネットで公
開されている。勧告権を残すべきであるという編集者の意見に対する回答は
「法的権限に頼るのではなく、内容の科学的水準や中立性によりその権威を高
め、政府や社会に尊重されるようにするべき」というもの。選挙結果にあぐら
をかいて、政策の水準や中立性による「権威」もなしに「法的権限」を振りか
ざしているのは誰か?法律を思い通りに作りかえ法的権限をほしいがままにし
ているセクタが、日本国憲法で保障されてはいるが司法が真剣に守ろうとしな
い諸権利以外に何も法的権限のないセクタに対し「法的権限に頼るな」と言え
るのだろうか?

  また、前会員が後任後継者を推薦できる「co-optation」制導入を批判する
意見もいくつか掲載されているが、紋切型の回答を繰り返えしているだけであ
る。独立行政法人化のような大きな問題について意見募集しながら、意見に対
しに回答どころか整理すらしなかった省に比べれば、多少はましではあるが、
このような形式的コメントで終わりにするのであれば、国民の意見を聞いた、
というより愚弄した、という方が適切であろう。

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[102-0-3] 一日中教審についての青木氏から文部科学省への公開質問状

教育基本法の「見直し」について、東京で昨年11月30日に開かれた「一日中教
審」で意見発表した中で、だた一人、見直しに明確に反対の意見を述べた青木
氏が、発表申込の意見分布を調査した結果、採択された意見の分布に情報操作
の疑いを持ち、12月6日に文部科学省に公開質問状を出している[102-kd-4] が、
同氏のサイトによれば、昨年の12月23日でも回答がないという。このような重
要な事件についても、マスメディアは完全に沈黙している。これほどマスメディ
アの情報操作を明証するものはないだろう。また、入場者の持ち物の検査まで
するほどの異常に厳重な警備は、ある種の人々が、基本法の「改正」をどれほ
ど重要なものと考えているかを証明している。

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[102-0-4] 九州大学の任期性導入問題

「大学の教員等の任期に関する法」(*1)第四条に明白に違反する「改革案」に
ついて、文科省高等教育企画課は「任期制は異動を活性化し、教員の新たな出
会いを通して新しいアイデアを生み出す目的で導入した。総合大学で全教官を
対象にするのは初めてだと思う。」と話しているという[102-uni-1]。法治国
家の教育行政が言うべきことだろうか。


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[102-0-5] 読売報道「レベル低い国立研究所は廃止」について

研究所の「レベル」を判断する際に、任期制を導入しているか否かも重要な点
としてカウントするという[102-acd-2]。一体どういう「評価」なのだろうか。
各研究所には mission がある。そのmission の固有性がまず問題であろう。
いくらなんでも、この記事にあるような馬鹿げたことを文部科学省が言うだろ
うか。読売が得意とする政策誘導記事[102-acd-2-1]の一例ではないか?

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[102-0-6] 国立大学におけるの過度の教員流動性による弊害

大都会にはない国立大学では、教員の流動性が高すぎで支障があることを島根
大学の廣嶋教授が、教育基本法見直しへのパブリックコメント[102-kd-1]の中
で指摘している。文部科学省は、教員の流動性の実態を当然把握していると思
うが、統計を公表したことはないし、マスメディアも調べようともしない。

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[102-0-7] インターネットのメディアの萌芽期

  マスメディアの一面的な報道や情報操作を批判するジャーナリストや個人が、
インターネット上で種々の試みをしている。すでに数多くのものがあるが、
「まだ旧体制下の新聞社と月極契約をしている人達へ」[102-mda-2-1]という
サイトを運営している元日経記者が、My News Japan というサイトを開設した
[102-mda-2]。ジャーナリストの精神を失わないプロの努力が新しメディアに
成長していくことを祈りたい。

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[102-dgh] 独立行政法人問題

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[102-dgh-1] 「2/01 国立大学の独法化・再編統合に反対する交流討論・決起集会」
独行法反対首都圏ネット事務局

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[102-dgh-2] 「1/16 国立大学法人化・教員養成系学部の統廃合問題懇談会のご案内」
日本共産党国会議員団 2002-12-13

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[102-uni] 大学の動き

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[102-uni-1] (毎日03-01-01)九州大:助手以上の全教員対象に任期制導入を
検討 総合大で初

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[102-uni-1-1] 全大教「任期制の導入問題に関する緊急要望書」02-12-24

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[102-uni-1-2]「京都芸大に法制化任期制は要らない」

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[102-uni-2] 東北大が募集人員削減 少人数教育の徹底

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[102-ikn] 意見

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[102-ikn-1] 編集発行人から朝日新聞社会部への手紙(2003-01-06)

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[102-ikn-1-1] 「転機の教育 大学の力」朝日連載 2003-01-01〜01-10

(1) 知の戦場  人材集め国境なき競争

(2) 全入時代へ  学生に異変 教え方模索

(3) 産学連携  急接近 危機感がバネ

(4) 第三者評価  緊張感が生む質の向上
(5) 教養復権  音楽と文学 融合授業も
(6) 実学の進化  プロ養成 時代が後押し
(7) 地域と共に  生き残りへ社会貢献
(8) 進む国際化  開放へ押し寄せる波(おわり)

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[102-ikn-2] 渡辺勇一氏(新潟大学教授)の独立行政法人問題関係文書

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[102-ikn-2-1] 1999-10-25:  独立行政法人は決して容認できる制度ではない

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[102-ikn-2-2] 2001-04-01: 学生による授業評価をどう見るか
(生物科学52巻4号 2001.4)

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[102-ikn-2-3] 2001-06-24:  日本の科学研究のあり方
(国立大学独立行政法人化問題週報58号 コラム)

「・・・安斎育郎氏は、その著「理科離れの真相」(朝日新聞社)の中で、バ
ブル時の、政府高官の「日本の科学技術はもう十分だ」という発言を示し、こ
の時代に理科履修のための授業時間が激減した事実をあげている。

 バブルが崩壊した後、今も低迷を続けている現在の日本において、財界と為
政者が科学を推進するシステムに極めて強い支配力を発揮し続けているのは、
上記の事情の裏返しである。今回発表された「大学の構造改革の方針」には、
尾身氏が表した「科学技術立国論」の目指した方向が、より粗野に凶暴な形で
表出している。・・・」

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[102-ikn-2-4] 2001-10-29:  独立行政法人化についての文科省への意見

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[102-ikn-2-5] 2003-01-06: 学生による授業評価の平均値は後期に高く
なる

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[102-ikn-2-6] 「学生にとっての大学改革」

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[102-ikn-3] 鹿児島経済大学三教授からの新年のメッセージ(2003-01-04)
鹿児島経済大学三教授を支援する全国連絡会サイト

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[102-ikn-4] 佐藤真彦(横浜市立大学)「徹底論証:学問の自由と大学の自治
の敵,橋爪大三郎「あり方懇」座長の危険性と国公立大学独立行政法人化の行
き着く先」2003年1月10日

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[102-acd] 研究問題

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[102-acd-1] 内閣府 政策統括官:日本学術会議に対する意見募集の結果について
(2002-12-16)

(意見*No18 の概要) 科学技術政策を、政治的に独立した立場から監視し勧告で
きる権限を持つことが不可欠である。従って「勧告権」は今後も必要である。

(意見No18 に対する統括官の考え方) 「科学技術政策に関する提言は日本学術
会議の基本的機能の一つとして重要ですが、これを有効なものとするためには、
法的権限に頼るのではなく、内容の科学的水準や中立性によりその権威を高め、
政府や社会に尊重されるようにするべきであると考えます。」

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[102-acd-2] (読売2003-01-08)レベル低い国立研究所は廃止、文科省が3月に選別

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[102-acd-2-1]  国立大学協会事務局から読売新聞社への抗議文書 1999-12-10:

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[102-acd-3] (朝日03-01-09)核融合研究、拠点集約へ 京大・九大施設は廃止

参考:第12回総合科学技術会議議事録2001.11.28より
(白川英樹総合科学技術会議議員発言録収録

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  [102-acd-4] 科研費の繰り越し容認へ 補助金流用受け財務省
(毎日03-01-10)

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[102-doc] 文献紹介

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[102-doc-1] 渡邊洋三「日本社会はどこへ行くー批判的考察ー」1990.5.21
岩波新書120 ISBN 4-00-430120-3
#(13年を経た今、市民的自由を徹底して抑圧する方向に時代は動きつつある。)

p234「自民党は日本が自由社会であることを強調するが、それは企業にとって
の自由でしかなく、市民にとっての自由ではない。西側の国で、日本くらい市
民にとって自由のない国はない。市民的自由を抑圧する法システムとそれを支
える国民意識を改革することが望まれる。」

p234 日本を「自由社会」にするために。

この新しい法システムの基軸は何か。それは日本国憲法の「個人の尊厳」を中
心にすえることである。集団主義にかくれていままで見えなかった「個」を取
り出し、それを基盤にすえて、個人の主体性、自由、人権、自己決定権、幸福
追求権を花開かせるような法システムをつくつことが、改革の目標ではなかろ
うか。もし自由社会というならば、とりあえず最低、これだけの改革は不可欠
であるという若干の指摘して結びとしたい。

(1)言論の自由、体制批判の自由を保障すること。・・・

(2) 秘密主義をやめて、市民の自由な意見をオープンに反映する手続き、制度
をつくること。・・・

(3)政治が教育に介入することをやめること。・・・教師みずからの信念にも
とづいて主体的な教育ができなければ、それはもはや教育とはいえない。そし
て、教育の自由のない国は自由主義の国家に値しない。・・・

(4)政治的自由を保障すること。・・・数百万人に及ぶ国家公務員や地方公務
員は、政治的自由をいちじるしく制約されている。・・・

(5)司法の独立と裁判官の市民的自由を保障すること。・・・検察官はもとよ
り裁判官にも市民的自由がない・・・」

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 [102-doc-2] 渡邊洋三他「日本社会と法」1994.5.20
岩波新書335 ISBN 4-00-430335-4

「p189 公共性とは

ここでいう民主主義の視点とは、一言でいえば、国民あるいは社会的弱者であ
る民衆の立場から公共性の中身を問い直すということである。より具体的には
次の3つの原則が大切である。

  第一に、行政と市民との間に対立がある場合には、強力な権力を背景にして
活動する行政と、財力、知識および時間的余裕などすべてにおいて行政にはまっ
たく敵わない市民との間に、できるかぎり対等・公正という原則が貫かれるよ
うにすることである。第二に、市民相互間、とくに巨大な力をもつ大企業と、
力をもたない一般市民との間に対立がある場合には、両者の対等性を積極的に
実現することである。そして、第三に、これらを実現するために、行政情報と
企業情報を市民に公開させ、またそれを前提にし、それと結びつけて、市民が
行政施策の形成・決定過程や執行過程に積極的に参加することである。

p190 二つの公共性

  さて、このような原則を前提として、民主主義憲法の価値序列の要請にした
がった公共性のあり方について考えてみると、何よりも、市民の生存権を保障
することこそが、実質的意義における公共性の中身であると見ることができよ
う。これをここでは「市民的・生存権的公共性」と呼ぶことにする。

  ところが、資本主義国家の現代行政の実態は、市民の利益ではなく、国家の
利益(国益)を担うものとして現われる。そこでは、形式的に「公共」という衣
をまといながら、実質的内容は大企業の担い手やそれと結びついて特権的階層
など一部の人たちを守るものとなっている。今日、日本の政治でもっとも問わ
れている、政財官界の癒着構造といわれるものは、官=行政が、政と財との橋
渡しをし、「公共」=「国益」の名において、一部の私的利益の追求を助ける
メカニズムであることは明らかであろう。このような、公共性自体が歪曲され
ている現実の行政は、「国家的・特権的公共性」と呼ばれるのにふさわしい。」

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[102-mda] メディア問題

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[102-mda-1] メディアの辺境地帯サイト
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[102-mda-1-1]「新年のご挨拶2003-01-01」
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[102-mda-1-2]マスコミの自浄能力喪失小史 1995-2002
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[102-mda-2] My News Japan
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[102-mda-2-1] 「まだ旧体制下の新聞社と月極契約をしている人達へ」

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[102-kd] (転載)国公立大学通信[kd 03-01-05]

中央教育審議会中間報告「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本
計画について」(cf:[kd 02-12-14])に対するパブリックコメントを紹介します。
また、ネット上にある数多くの意見表明や資料提供の一部を紹介します
[102-kd-3]。

最近の国大協総会と同様に、会場内外の厳重な警備体制の下で、11月30日
に東京で開催された「一日中央教育審議会」の発表者である青木茂雄氏から文
部科学省への公開質問状[102-kd-4]と、ジャーナリストの大岡みなみ氏の傍聴
記録[102-kd-4-1]も紹介します。

青木氏の公開質問状にある

  「教育基本法の「改定」問題を国民に問うのがこの会の趣旨である。したがっ
  て、賛成・反対同数の意見発表者を選ぶべきである。同数でなければ、賛成・
  反対の数に比例して意見発表者を選ぶのが筋である。私が確かめた範囲でも、
  反対の意見は30通を越えている。実際はもっと多くが反対意見であったは
  ずである。しかし、意見発表者のなかで明確に反対意見を述べたのは私ひと
  りである。おかしいではないか。どうしてそうなったのか、その理由を説明
  していただきたい。」

  「12月2日(月)に私が電話で生涯学習政策局政策課に聞いたところ、賛
  成・反対の数に比例するのではなく、意見の内容に応じてとのことであった
  が、そうであるとするならば、同趣旨の意見(「愛国心」を条文に盛り込め
  というもの)が3人もあったが、おかしいではないか。これはどうしてか?
  理由をご説明願いたい。」

などの質問は、情報操作の有無を問うものであり、日本社会全体が回答を知る
必要があります。文部科学省は無回答や曖昧回答では済ませられないものと思
います。発行人が知る限り、この公開質問状をマスメディアが報じていないよ
うですが、もしもそうだとすると、不偏な広報という初歩的使命すらジャーナ
リズムは怠っていることにならないでしょうか。

--[ kd 03-01-05 目次]----------------------------------------------
[102-kd-1] パブリックコメント:廣嶋清志「大学教員の流動化と地方大学の
    振興計画および大学制度全般の評価制度の導入・整備について」
[102-kd-2] パブリックコメント:編集発行人「組織への精神的隷属を強化す
る懸念」
[102-kd-3] ネット上公開されている意見等の紹介
[102-kd-4](転載)青木茂雄「11・30一日中教審」の運営方法に関する公開質問状
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--[begin kd 03-01-05-1]--------------------------------------------
[102-kd-1] 廣嶋清志(島根大学法文学部)「大学教員の流動化と地方大学の振興計画
および大学制度全般の評価制度の導入・整備について」
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文部科学省生涯学習政策局政策課  政策審議第一係御中

「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について
(中間報告)」に対する意見

「大学教員の流動化と地方大学の振興計画および大学制度全般の評価制度の導
入・整備について」

島根大学法文学部  廣嶋清志


  まず,以下の点について述べます。

第3章 教育振興基本計画の在り方について
(2)「知」の世紀をリードする大学改革の推進
(i)「知の拠点」を支える教育研究環境の整備
○教員・学生の流動化の促進(のうちの教員の流動化について)

 一般的に適度の流動化については賛成です。しかし現在,私の所属する学科
ではむしろ全体的に流動傾向が高く,学科,学部の運営の中心となるべき経験
ある教官が少なすぎるという問題が存在しています。地方大学の研究教育上の
諸条件の不利に加え,教官の家庭生活上の不利な条件(たとえば子弟の教育環
境)もあるため大都市の国立,私立大学に人材が常に流出するという傾向が続
いています。教員の固定化というのは大都市の一部の国立大学に限られた状態
ではないでしょうか。むしろ地方大学の教員の流動性の低下,定着化に知恵を
絞ってもらいたい。このことは地方に大学が存在することの意義をどのように
考えるかということに関連します。

(ii)教育研究機能の充実 のところで,「我が国の大学が世界に伍(ご)し
ていけるだけの競争力を持つ健全な「知の拠点」となるための機能を継続的に
果たしていくために」と書かれている趣旨は結構ですが,その結果,群馬大学
と埼玉大学の合併に見られるように,たとえば島根大学も島根県にある必要が
ないなら,大阪か神戸に出て行った方が競争力を持つ点でははるかに有利で効
率的ということになります。今回の計画はこういう傾向を助長することを当然
と考えているのでしょうか。高等教育機関は地域社会の発展性に重要な影響力
をもっています。教育計画は地方の地域社会の発展を支え,促す側面を持つよ
う十分考慮しなければならないと思います。

 これと重要な関連をもつのが,(iii)評価制度の導入・整備です。個々
の大学における評価というのは,現状での制度と予算を前提としての評価が中
心となると思われ,個々の大学に関連する制度的な枠組み自体の評価というの
はほとんど行われないか,行われにくいものと考えられます。したがって,大
学制度全体を適正に評価する評価制度を独自に導入・整備しない限り,現状で
は日本の大学の発展にとって重要な障害となっているものと思われます。とく
に,現在までのところ文部科学省の科学研究助成金は大学間の配分において極
めて偏っている,つまり地方大学に著しく不利になっていると見られます。こ
のような文部科学省の科学研究助成金の配分状況についても評価制度を導入・
整備し,適正な評価を行うべきであると思われます。

以上。
--[end kd 03-01-05-1]----------------------------------------------

--[begin kd 03-01-05-2]----------------------------------------------
[102-kd-2] 編集発行人「組織への精神的隷属を強化する懸念」
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--[begin kd 03-01-05-3]------------------------------------------------
[102-kd-3] ネット上公開されている意見等の紹介
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[102-kd-3-1] 井深雄二氏(日本教育行政学会、名古屋工業大学)パブリックコメント

[102-kd-3-2] 井深雄二「教育振興基本計画と教育改革の手法」
教育学関連15学会共同公開シンポジウム2002年12月7日
「教育基本法改正問題を考える―中教審「中間報告」の検討」

[102-kd-3-3] 愛知教育大学教職員組合秋季大会[教育基本法の改悪に反対する決議]

[102-kd-3-4] 教育と文化を世界に開く会:呼びかけ人コメント

[102-kd-3-5] 子どもと教科書全国ネット21事務局長声明 2002.11.14

[102-kd-3-6] 加賀谷いそみ「教育基本法改悪の動き」[aml 31297] 2002.12.13
#(戦後の経緯と、最近の動きの詳細な記録)

[102-kd-3-7] 教育基本法全国ネットワークサイト

[102-kd-3-8] 子どもと教育・文化 道民の会
ー憲法・教育基本法・子どもの権利条約を守り、生かそう!ー

[102-kd-3-9] 「一日中央教育審議会」意見発表(2002、11、30)               
青木茂雄(都立高校教員)「教育基本法は変えるべきではない」

[102-kd-3-10] 教育基本法改正問題
#(報道クリップ集)

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[102-kd-4](転載)青木茂雄「11・30一日中教審」の運営方法に関する公開質問状
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[102-kd-4-1] 参考:大岡みなみ氏傍聴メモ:「2002年11月30日(土曜日) 
「国民の声を聞く」公聴会」

「・・・教育基本法の「見直し」に向けて中教審がまとめた「中間報告」に対
し、「幅広い国民の意見をうかがう」ために開かれた公聴会だが、会場の内外
はものものしい警備体制が敷かれ、ボディーチェックと荷物検査まであって、
会場は緊張した空気に包まれた。・・・」

「・・・「公聴会なんて『国民から意見を聞きました』というアリバイ作りに
すぎない」という批判があるが、公正に意見発表者を選んだとはとても考えら
れない状況で、アリバイにもなっていないとしか思えない。むしろ、傍聴者か
ら「国民は完全に馬鹿にされてるんじゃないか」といった感想が出るほどの公
聴会だった。とっても怖くて嫌な時代になったなあ…。」
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編集発行人:辻下 徹 tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
関連ページ:http://ac-net.org/dgh/
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End of Weekly Reports