独行法反対首都圏ネットワーク


独行法情報速報  No.4    特集:大学評価問題考察
2001.5.9 [he-forum 1899]  「千葉大学情報分析センター速報NO4」


独行法情報速報  No.4    特集:大学評価問題考察

2001.5.8 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
【提言】競争的研究補助金に伴う間接経費については、取得者個人への「戻し配分」を行わず、大学全体並びに当該部局の教育研究活動の活性化・発展のために適切な活用を行うべきである。
〈理由〉今年度から競争的研究補助金(例えば科研費基盤Aなど)の30%が間接経費として大学に支給されることになる。この間接経費をどのように配分するかは、今後の大学財政運営の基本に関わることなので、厳密な議論に基づく正確な全学的方針の確立が極めて重要である。まず、このような形での間接経費の設定の是非については議論のあるところであるが、文科省『平成13年度国立学校特別会計予定額の概要』にあるようにこの間接経費導入が、「近年の競争的資金の拡大によって、直接研究に使われる経費は増加してきたが、これに伴う諸経費の負担が年々大きくなっている」という認識の下に設定されていることは注目されてよい。膨大な水道電気代を要する設備備品が導入されれば、直接に部局経常経費を圧迫する。科研費執行に伴う実務の増加が部局等の通常事務を圧迫するなどなど、具体例を考えればこの認識は正しい。従って、「競争的研究補助金を獲得した研究者の所属する国立大学等に対して」(下線:引用者)支給されるのである。すなわち、大学全体ならびに当該部局における経常経費・通常事務への圧迫を除去ないし軽減のために間接経費を活用すべきであり、そのことによって間接経費が教育研究活動の活性化・発展に寄与することになろう。一部に研究者個人への「戻し配分」を主張する向きもあるが、申請された研究課題に対する経費は科研費等による直接経費でまかなうのが筋であり、間接経費を研究の直接経費に流用するのは不当との謗りを免れない。さらに間接経費の一部「戻し配分」を、大型競争的研究補助金獲得への“報償”などと位置づけるに至っては言語道断である。そもそも科研費等の獲得の基礎となった研究は、部局や学科における教育研究活動の中で 成しえたものなのである。「戻し配分」をしないとした東京大学の方針を以下に添付する。
【開示1】東大財務企画委員会=2001.3.19(抜粋)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010412toudaikouhi.html
1.平成13年度予算配分に関する事項について
(3)競争的研究補助金(科学究究費補助金及び出資金)の間接経費の取り扱いについて
    ・更なる研究の活性化に活用する。但し、個人に、対し戻し配分はしない。間接経費は、大学分50%に折半する。
  ・大学分は、教育研究基盤校費の配分を減じないために使用する他、全学共通経
費へ繰入れ、全学的に教育研究の助成及びその環境整備等に使用し、その使途については透明性を高めるため、財務企画委員会へ報告する.
・ 部局分は、部局の教育研究の活性化のために活用する。
【開示2】経済産業省、文部科学省の「国立大学法人法(案)」
経産省官僚グループ試案:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/houjinho-keisan.html
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/houjinho-keisan-kaisetsu.html
文部省・国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議作業委員 運営組織・機構図案
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010419sosikidu.htm
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【開示3】大学評価問題をめぐる現状と評価方法の課題------国大協第8常置委員会の提言を中心に(2001.4.20学内シンポジウム『大学評価と予算』報告レジメ)
1 大学評価問題の経過と現状
 2000年4月 大学評価・学位授与機構の発足------評価業務の開始
       国大協第8常置委員会の設置
     7月 機構の大学評価委員会「大学評価実施方針」「平成12年度の大学評価実施計画」決定
     8月 文部科学省 独法化に関する調査検討会議「目標評価委員会」第1回 以後毎月1回開催
     9月 第8常置委員会「大学評価の進め方に関する要望」→機構「回答」(10月 2001年1月 機構・大学評価委員会「平成12年度に着手する大学評価の内容・方法等について」「実施要綱」決定
         第8常置委員会「大学評価の現状と課題に関する調査」(調査 
11月)まとめ
     2月 機構、説明会開催
     3月 第8常置委員会「大学評価・学位授与機構への対応についてのアンケート」、「大学評価に関するシンポジウム」実施
  2 千葉大「学内評価検討委員会の検討結果報告書」(平成12年12月12日)の問題点
(1) 評価活動とりくみへの拙速性
* 「平成12年度内に可能な範囲での学内評価を開始し、その成果を得るべき」
*  委員会規程を制定せずに評価委員会選出(「速報」第2号参照)
(2) 「学内評価の目的」とその方法の不明確性(資料1 参照)
* 「大学全体の観点」から「共通の基準」で「構成する部局」を評価する--------
大学全体の観点・基準とはなにか。設置の理念・目的を異にする各部局にたいし、共通の基準で評価できる範囲・分野はなにか
-------資金配分が目的か、明確な共通基準の確立なしに配分の根拠となる数値化された評価はどうして可能か
(3)学内評価委員会の性格づけ
* 「学長の補佐機関」としての評価委員会、部局は資料提出者、専門部会による4段階評価の実施--------部局の自己評価・自主評価を基本としていない=部局にたいする「外部評価」 ⇒ 「第三者による評価は、大学独自の自己評価と有機的に組み合わされてこそ、真に有効なものとなることは、大学評価機関の創設準備委員会報告の強調するところ」という国大協の主張とも矛盾
3 大学評価にたいする考え方の基本
 (1)「国大協大学評価に関する特別委員会WG最終報告」から
* 評価機関の理念--------「大学の外の視点から大学を評価し、それによって大学の自助的な改革を促し」⇔ 現実には評価のための評価機関になる危険性
* 評価の対象分野--------テーマ別の評価--------「大学の現状に即して、大学の主体的な改善努力を活性化するようなテーマと形態を設定することが、評価を効果あるものとし」
* 国立大学としての取り組み--------「教職員による自主的な評価体制が確立され、十分な活動能力が確立されていて初めて、大学は評価において主体性を発揮することができる」
(3) 国大協第8常置委員会「大学評価についての基本的留意点について」から
* 自己点検・評価システムを効果的にするための4つのポイント(資料2)
・ 大学評価は大学のクオリティ・アシュアランス(質の向上)のためにある-------
-質の内容は国により大学により違いがあり・・・・
・ 大学が自らクオリティ・アシュアランスができる力は基準の設計力から始まる---
-----基準なき評価はありえない。基準を設計するとは大学の個性を主張するビジョン、計画、目的・目標を表現することである
・ 権限と責任に基づくメカニズムやプロセスが見えないところに評価はない
・ 評価には情報やデータをマネジメントするシステムが必要である
(4) 国大協第8常置委員会2001年3月シンポジウムでの報告から
* ・への補足1--------ローカル、ナショナル、グローバルといったレベル別の「
クオリティのスタンダード(基準)」がある
* ・への補足2--------アシュアランスは自己評価の方法が基本、同時に外部機関
による評価の方法が不可欠
* ・への補足--------大学の自己評価は、大学の基本的任務と目標からなるクオリティ・スタンダードを設定し合意・共有することから始まる
4 なにから始めるべきか
(1) 自主的な学内評価体制の構築は必要である
(2) 大学・各部局の自己評価の基準の設計--------それぞれの設置の理念・目的を評価基準にまで具体化する
(3) その基準=クオリティ・スタンダードについての学内合意・共有の作業
(4) 評価活動・業務の整備・合理化--------大学にとっては研究と教育が生産的活動で、評価業務はそのためのいわばメンテナンス、本末が転倒されてはならない。これまでの自己評価や大学基準協会の評価などを整理し、活用できる体制整備
【レジメへの解説補足】
[1]評価問題の現状で留意されるべき点は、評価機構の発足もあり学内評価体制の整備は必要となっているが、そのさいまず評価問題についての国大協での検討の成果をふまえて取り組むべきこと。
[2]資料1「学内評価検討委員会の検討結果報告書」(報告書の特に問題となる部分)――これらの評価活動は、もっぱら各部局がそれぞれの観点から定めた基準によるものであり、大学全体の観点からの評価を大学みずからが展開するにはいたっていない。しかし、大学全体として、それを構成する部局の状況について共通の基準によって客観的に把握することは、現在の日本の国立大学が置かれた状況・・(中略)・
・においては、最大の急務のひとつである―――評価結果の公開は、このような政策展開の透明度を向上させることに繋がる。たとえば、学長裁量経費の配分等に際しても学長の裁量の根拠とすることが可能であり・・・(以下略)
[3]資料2「大学評価についての基本的留意点について」(http://res-info.nagoya-u.ac.jp/ kokudai/ryuuiten.PDF)は、国大協第8常置委員会が「各国立大学が最小限留意すべき事柄を確認しておくことは大切であると考え」まとめたもの。4つのポイントの本文はレジメに引用しておいたが、その第2、第3ポイントの解説を全文、紹介しておく。「基準なき評価はありえない。基準を設計するとは大学の個性を主張するビジョン、計画、目的・目標を表現することである。日本の大学の場合は、個性を主張する力が形成されてい
ないという現実を直視することから始めた方がよい。そして、表現したビジョン等は自分の大学の構成員が常に口に出して説明できる内容と分量であることが大切である。なぜなら、それを実行しなければならないのは、まず学内構成員だからである。それを忘れると、外部にのみアピールすることが目的であるような錯覚に陥りやすい。」「誰がどのような権限と責任で評価をするのか明らかになっていないところやある
いは評価の仕組みや流れが明確になっていない場合は、公表された評価の結果に信用と信頼が得られない。信用と信頼のない評価結果は意味がないことに留意したい。」
[4]繰り返し本センターが提言しているように、きちんとした評価システムができる以前に、評価と資金配分を連動させるべきではない。安易な連動は、評価システムの構築を歪め、妨げる危険性が大きいことが留意されるべきである。                   



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 【独法化をめぐる動向】情勢の中心を把握するために
  現在の問題の焦点は、大学自体をその構成員が自らの長を選出できず、自らの組織の運営に関与できないシステムに改変してしまうのか否か、ということにある。現在、以下のような日程と論点が明らかとなっている。これは、まさに大学の自治、大学という存在そのものの危機が眼前に迫っているとみるべきである。いま求められているのは、これらの論点と日程に積極的に関与することである。千葉大学では教職員組合が5月18日の東京大学職員組合主催の緊急大集会(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1852.html)を支持している。
○文部科学省の調査検討会議は、5月中にも「中間報告案」を出し、7〜9月に「中間報告」を提出する。従来の例からみて、この「中間報告」がほぼそのまま2002年3月に予定されている「最終報告」となると考えられる。
○国大協は、設置形態検討特別委員会の作業委員連絡会議において、現在「中間まとめの原案」を作成している。これは5月21日の特別委員会において「中間まとめ案」となり、6月12, 13日の国大協総会に提案されるとみられる。
○この二者の検討作業において、文部科学省の「中間報告」と国大協の「中間まとめ」との間にある種のすりあわせが行われようとしている。国大協の作業委員連絡会議に文部科学省の官僚が参加しているという情報もある。
○文部科学省の調査検討会議における議論(開示2参照)は、独立行政法人通則法の大学への適用の適否をこえて、いまや大学という存在そのものに関わる議論へと進んでいる。現在の焦点は、1)学長を大学の構成員の意思によって選出するのか否か、2)評議会、教授会などを単なる「審議機関」に変えてしまうのか否か、である。
○文部科学省の案では、経営と教学を分離し、財界人など学外者を重要な構成員とする「理事会」、「運営審議会」、「運営協議会」、「経営評議会」などが提案されている。他方、これらの組織が経営のみならず教学についても決定するという案も出されている。
○経済産業省の官僚グループが作成した「国立大学法人法(案)」(開示2参照)では、産業界、自治体などの学外者が過半数(ないし三分の一以上)を占める「運営会議」を設置するとしている。この「運営会議」が経営と教学の双方の意思決定を行い、学長を選考する。そのため、評議会も教授会も廃止することが予定されている。
○4月12日に出された民主党の「国立大学の独立行政法人化に関する中間報告」は、独立行政法人化について、(1)将来、地方移管あるいは民営化するまでの過渡的な形態と明確に位置付けること、(2)身分を非国家公務員型とすること、(3)国益的見地からのみ国立大学院大学を残すこと、を条件としている。また、経営と教学を「明確に分離し」、「経営に関する過度な教授会自治を排する」とし、「経営の専門家の拡充」による「執行部体制の強化」をうたっている。
○このような動向に対し、国大協の作業委員からも異論が出されている。3月21日の
組織業務委員会に出された、「作業委員の立場」と題する二通の文書(http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1823.htm,
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130412-04.pdf) には、調査検討会議の議論が、通則法による独法化の制度設計を越えて、今までの大学運営の根本を覆すに至ろうとしている事態への強い危機感が表明されている。大学自治をめぐる議論は、いまや重大な局面を迎えているのである。
【情報へのアクセス】
独立行政法人反対首都圏ネットワーク (http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html)/
全大教近畿  (http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/)/
北大総長室 (文部科学省、国大協の資料) (http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency.htm)/
大学評価・学位授与機構(NIAD)  (http://www.niad.ac.jp/)
国大協第8常置委員会HP (http://res-info.nagoya-u.ac.jp/kokudai/index.htm


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http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/


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