国立大学法人法体制の検証  情報 シリーズ

2010年3月29日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

No.1 国立大学法人評価の実態(1)―虚偽と隠蔽

1-1 一律の基準による評価は行わないはずだった

○国立大学法人評価委員会決定「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の各年度終了時の評価に係る実施要領」2004年10月25日、平成18年2月20日一部改正(文部科学省サイト)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/sonota/06030716.htm

国立大学法人評価委員会による評定

進捗状況は、以下の5種類により示す。なお、これらの水準は、基本的には各国立大学法人等の設定した中期計画に対するものであり、相対比較することは意味を持たないことに留意する。

○国立大学法人評価委員会決定「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の中期目標期間の業務実績評価に係る実施要領」2007年4月6日(文部科学省サイト)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/sonota/07042601.pdf

国立大学法人評価は、上記の趣旨から、法人の個性、特色等を踏まえて行うものであり、一律の相対評価は馴染まないことに留意する

1-2 いつの間にか一律の評価基準が設定されていた

○国立大学法人評価委員会総会(第30回)2009年11月6日
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/1288222.htm

事務局説明

「7つの法人においては法令上審議すべき事項が報告事項として扱われていたために、例年どおり評定を1つ下げるという取り扱いをしております……」
「学生収容定員の充足につきましては、課程ごとの充足率が90%を満たしていない場合に例年どおり評定を1つ下げるという取り扱いにしております……」
「教職員の個人評価につきましても教員または職員の個人評価を実施して、その結果の処遇への反映が平成20年度に初めて行われた場合には今回例年どおり評定を1つ上げるという取り扱いをしております……」
「その次の丸では男女共同参画につきましては、政府全体の方針を踏まえ今回から共通事項として取り上げたものですが、各法人において推進に向けた取り組みが確認されております。特に特色ある積極的な取り組みについては評定を1つ上げると、取り組みが著しく乏しい場合には1つ下げるという取り扱いをしております……」

文部科学省が一律に設定した基準をクリアしているかどうかで評定が上下することが「例年通り」行われているのだという。

だが、年度評価に関する実施要領のどこにもそんなことは書かれていない。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/sonota/06030716.htm(再掲)

※事務局説明につづく野依委員長の発言

なお、この年度評価は各法人が行う教育研究の特性、あるいは、法人運営の自主性・自律性に配慮しつつ、各法人の中期目標・中期計画の達成状況について総合的に評価するものでありまして、相対評価ではないということに留意して対外的にも説明してまいりたいと思います。

○高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室「国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果の概要」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1289385.htm

「基本的には順調な進捗状況にあり、一部の法人において進捗状況に遅れが見られる」
「取組が不十分な法人も見られ、今後、早急な対応が求められる」

「留意」すべきなのは評価委員会事務局(国立大学法人支援課)ではないのか?

1-3 評価結果を「相対評価」として利用するのは「誤解」のはずだった

○国立大学法人評価委員会総会(第15回)2006年6月19日
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/06062901.htm

事務局(文部科学省)  一部の国立大学関係者の中には、何か中期目標期間終了時の評価が、例えば評価に基づいて1位から87位ぐらいまで順番をつけて、上位10位以内に入ればプラス10パーセントみたいな形で機械的にやるとか、Aが何個あればプラス何パーセントみたいに、何か評価結果で機械的に資源配分が決まるような誤解をされているところもございますけれども、そうではなくて……評価結果をまず国立大学法人の方にお返しいたしまして、各国立大学法人で、その評価結果を踏まえた見直し案として、次期中期目標、中期計画を検討していただき、……ちゃんと評価結果を踏まえたものになった次期の中期目標、中期計画案であるならば、それに必要な予算措置を講ずるというふうな手順になる……

1-4 「誤解」が現実になってしまった

○「国立大学法人運営費交付金への評価結果の反映について」国立大学法人評価委員会総会(第32回)2010年1月20日、配付資料
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2010/01/28/1289460_4_2.pdf

ようするに評価結果を得点化し、合計点の順位(相対評価)によって法人間の運営費交付金を再配分するということ

○各紙報道
「国立大の評価を初めて反映 トップは奈良先端科技大」『共同通信』2010年3月24日
「文科省が国立大を順位付け…トップは奈良先端大』『朝日新聞』2010年3月24日
「文科省が国立大を順位付け…トップは奈良先端大」『読売新聞』2010年3月25日
「文科省、国立大に初のランク付け 交付金に反映」『日本経済新聞』2010年3月25日
「交付金に評価を初反映=奈良先端大がトップ−国立大」『時事通信』2010年3月25日
「文科省:国立大を数値評価 交付金の傾斜配分額公表」『毎日新聞』2010年3月26日

評価分の配分結果一覧が公にされたわけでもないのに、各紙は同じような順位や金額の記事を一斉に掲載した。文部科学省当局がランキングを資料化し提供しているのではないか?

1-5 重大な方針変更は不透明な手続きで行われた

○「国立大学法人等の運営費交付金に関するワーキンググループの設置について」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2009/04/02/1259551_14.pdf

相対評価による運営費交付金の配分方針を決めたワーキンググループは、2009年3月12〜19日の間に設置が持ち回りで審議され、26日の総会に検討結果を提出したことになっている。開催回数や日時は明かされておらず、活動の実態があったかどうか疑わしい。そもそも、国立大学法人評価委員会に運営費交付金の配分方針を審議する権限はない。

○首都圏ネットワーク事務局批判声明「国立大学法人評価委員会「第26回」「持ち回り」総会は捏造ではないのか?―評価委員会に不透明かつ不正常な運営を改めることを求める」2009年5月23日
http://www.shutoken-net.jp/2009/05/090525_4jimukyoku.html

(以下、つづく)