《声明》国立大学法人評価委員会「第26回」「持ち回り」総会は捏造ではないのか?―評価委員会に不透明かつ不正常な運営を改めることを求める

         2009年5月23日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局



要旨
 文部科学省のホームページによれば、国立大学法人評価委員会の「第26回」総会は、「平成21年3月12日から19日で持ち回り開催」されたことになっている。

参照URL 国立大学法人評価委員会(第26回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/1259573.htm

 しかし、「第26回」総会の開催方法・日程・配付資料には多数の矛盾がある。これらの物証と状況から、われわれは、「第26回」総会を開催したとする文部科学省の発表は捏造ではないかという強い疑念を抱く。
 文部科学省および国立大学法人評価委員会はかかる事態を招いた責任を明らかにし、それが不正行為であることが判明したならば、責任者を処分すべきである。当然のことながら、この間行われた決定は白紙に戻さなければならない。そして、不正行為が二度とくり返されることのないよう、大学等の関係者に開かれた透明性ある組織運営により、あらためて審議を行うべきである。


1. 運営規則および公表資料から確認できるゥ矛盾
(1) 「持ち回り」は例外であり、緊急的な場合にのみ許される
 国立大学法人評価委員会は、2007年12月の総会で運営規則の一部を改正し、次のような条項を加えた。

(書面による議決)
第三条 委員長は、やむを得ない理由により委員会の会議を開く余裕がない場合においては、事案の概要を記載した書面を委員及び当該事案に関係のある臨時委員に送付し、その意見を徴し、又は賛否を問い、その結果をもって委員会の議決とすることができる。
2 前項の規定により議決を行った場合は、委員長が次の会議において報告しなければならない。
3 前二項の規定は、分科会及び部会の会議について準用する。

 今回開かれたとされる「第26回」の「持ち回り」総会とは、この「書面による議決」のことだろう。だとすれば、総会を「持ち回り」にしなければならないような「やむを得ない理由」とは何だったのか。文部科学省HPに公表されている委員会資料にはまったく説明がない。

(2) 「第26回」総会の内容は、「持ち回り」で開催するには重大すぎる
 「第26回」総会で委員に諮られたとされるのは、第2期の国立大学法人運営費交付金の配分方針の審議という最重要事項を担うワーキンググループの設置の可否である。われわれがすでに指摘したように、国立大学法人評価委員会の運営規則は、委員会内にワーキンググループなる組織を設置することを認めていないのであるが、かりにそれを設置することについて委員会の合意があったとしても、今回の議題は「持ち回り」開催で承認してもよいような軽いものとは思えない。

(3) 総会開催日程が接近しており、ワーキンググループの活動は不可能である
 「第26回」総会の「持ち回り」開催が締め切られたとされる3月19日から、「第27回」総会が開催された3月26日開催までは1週間しかない。「第27回」総会において、このワーキンググループがいつ活動したのかを示す資料が配付されていないため確認することができないが、かりに、文部科学省の説明通り、3月19日にすべての委員から了承がとれ、「国立大学法人等の運営費交付金に関するワーキンググループ」の設置が承認されたとしても、十分な時間・回数のワーキンググループを開催し、審議を行うには、あまりに期間が短い。

(4) 「第26回」総会の開催中に、「第26回」総会の案内が通知されている
 3月13日、「第26回」総会が「持ち回り」総会が開催(3月12〜19日)されている最中であるにもかかわらず、3月26日に「第26回」総会を開催する案内することが通知されている。

参照URL
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/kaisai/1256457.htm
国立大学法人評価委員会(第26回)の開催について
平成21年3月13日
文部科学省
1.日時
平成21年3月26日 木曜日 15時から17時
2.場所
文部科学省東館 3F1特別会議室
3.議題
国立大学法人及び大学共同利用機関法人の中期目標期間の業務の実績に関する評価について
中期目標・中期計画の変更について
平成20年度評価の評価チーム体制について  等

(5) 3月13日に開催通知された「第26回」総会予定議題の中には、運営費交付金に関する件が入っていない

(6) 総会議事録に「持ち回り」を裏づける発言がない
 「第26回」総会の「持ち回り」が事実であるならば、その決定プロセスを裏づける総会議事録が存在するはずである。しかしながら、5月15日になってようやく公表された第25回総会においても、会議の最後の事務局アナウンスで、次の総会は3月26日に開催すると述べられているだけである。

 以上の物証および状況証拠から、われわれは、「第26回」「持ち回り」総会は、文部科学省が発表した通りに開催されていなかったのではないかと強く疑う。さらには、この総会で設置され、「第27回」総会に報告を行った「国立大学法人等の運営費交付金に関するワーキンググループ」には活動の実態がなかったのではないかと疑う。

2. 真相を究明し、責任を明らかにすること求める
 国立大学法人評価委員会が、3月26日の総会において第2期中期目標期間の運営費交付金に関する方針を了承したのは、4月17日の総務省、政策評価・独立行政法人委員会に結果を報告する必要に迫られたからだろう。そのため、事務局は下準備をすすめ、3月13日、来る3月26日に「第26回」総会を開催することを通知した。
 ところが、3月16日、首都圏ネットワークから、文部科学省「国立大学法人等の組織・業務全般の見直し」の方針を批判する声明(≪声明≫ 国立大学法人法(第30条ほか)すら蹂躙する文部科学省「国立大学法人の組織・業務全般の見直し」の違法性を告発するhttp://www.shutoken-net.jp/2009/03/090316_5jimukyoku.html)が出された(※声明は3月14日付で作成されたが、MLへの配信など一般に公表されたのは16日であった)。ここでは、「国立大学法人等の組織及び業務の見直しに関するワーキンググループ」の設置経緯を検討し、評価委員会がまとめたとされる「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」が、文部科学省と一部メンバーのみの密室協議でまとめられたものだと批判した。
 このような批判があることを知った文部科学省は、3月26日に、事前に設置の承認を得られていない「国立大学法人等の運営費交付金に関するワーキンググループ」がいきなり報告を行い、これを承認すれば、さらなる批判を招くと考えたのではないか。そして、ワーキンググループの設置の承認をとりつけたように体裁を取り繕おうと画策したのではないか。3月12〜19日の、「やむを得ない事情」はなく、日程的に矛盾し、かつ無理がある「第26回」「持ち回り」総会は、このようにして捏造された。
 万一、われわれの疑った通りであったならば、文部科学省は、ありもしない評価委員会の活動を捏造し、国立大学関係者と国民の目を欺いていたことになる。かかる不正行為は絶対に許されることではない。文部科学省および国立大学法人評価委員会の責任者は責任を厳しく問われることになる。

3. 国立大学法人評価委員会の組織運営を徹底的に見直し、関係者および国民に開かれたものとすべきである
 今回のように異常な事態を招いた根本的な原因は、一昨年来、運営費交付金の「選択・集中」と国立大学の「再編・統合」を執拗に求めている財務省の圧力に屈服し、文部科学省が、国立大学法人の第2期中期目標期間を、国立大学の「機能別分化」をすすめる期間と位置づけてしまったことにある。この方針により、大学の中長期的なアカデミック・プランに基づいて目標を形成していくという、国立大学法人法も許容している中期目標の策定手続きを根本からくつがえしてしまったことは、先に私たちの声明が批判した通りである。
 本来ならば、主務省がこのように誤った政策方針をとろうとしたとき制止するのは、大学の教育・研究に関する専門的識見を持つメンバーで構成される評価委員会の役割である。外部の圧力に惑わされることなく議事運営を行っていれば、説明不可能な事態に陥ることも避けられたはずである。
国立大学法人評価委員会は不正行為を二度とくり返すことのないよう、国立大学法人法案の国会審議の際に挙げられた附帯決議に示されている初心に返り、徹底的な組織運営の見直しをすべきである。国立大学法人の目標・評価および財政のあり方について、大学の現場の実態を汲み取り、関係者とともに真摯な議論を重ねるべきである。そして、国民に対して公開を義務づけられている機関として、次の会合を開催するまでに議事録を公表し、外部に対して議論の流れが理解できるようにすべきである。

参考資料
国立大学法人法の国会附帯決議(評価委員会 第1回総会配付資料)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/03110501/009/003.pdf

以上