元文科省官僚が文科省廃止を公言

佐賀大学の豊島です.
「学習指導要領」改訂問題を扱った16日の毎日新聞の記事の中で,元文科省官僚の寺脇研氏が文科省廃止論を打ち出しています.いわく,「地方分権が進めば、指導要領や文科省はいらない」とのことです.ウェブにもあります.

 「『落ちこぼれ増える』 授業時間増に疑問−−京都造形芸術大教授・寺脇
研氏」
 http://mainichi.jp/life/edu/news/20080216ddm010010165000c.html
  (スクロールして下から3分の1くらいの所)

氏は現役時代にテレビなどにも出演して,文部省・文部科学省のスポークスマンを務めた人です.この記事にあるように「ゆとり教育の『旗振り役』と言われた」人ですから,今回の改訂に批判的なのはうなずけますが,名の売れた元官僚が,自分の出身官庁のことを「いらない」と公言するのは珍しいのではないでしょうか.

私自身は,文科省のようなイデオロギー官庁は百害あって一利なしで,従来から廃止論を主張していますが[註1,2],文科省の元官僚の口から同じ意見が聞かれるのには少々驚きます.

文科省は,文部省の時代からずっと,教育の国家統制という教育基本法違反の常習犯で有り続けています.最近では,沖縄戦をめぐる「教科書検定」に見られるように,教育内容の歪曲でも有名になりました.

大学関係者の間でも,文部科学省廃止論について真剣に検討するべきだと思います.

ついでながら関連する演劇の情報です.
文科省=地方教育委員会のラインで押しつけられてくるもので,最も目立ち, うっとうしく,また時節柄も想起されるのが,例の「日の丸・君が代」の強制です.これを扱ったあの「歌わせたい男たち」の東京公演と全国ツアーが間もなく始まります.
http://www.nitosha.net/stage/tour.php
朝日舞台芸術賞グランプリや読売演劇大賞を受賞した永井愛の作品で,主演はテレビや映画で活躍している戸田恵子です.東京は今月29日から3月23日まで,全国ツアーは3月25日の埼玉に始まり,最後が5月1日の山口です. 地方でもこの舞台が見られるのはうれしいニュースです.卒業式,入学式がたけなわの時期にぶつけているのが素晴らしいですね.

----------------------
[註1] たとえばずっと昔の投稿の5項をご覧下さい.国立大学の「法人化」が国会で決められた一月ほど後の文章です.
「『意見』の根幹は項目設定(アジェンダ・セッティング)にある」
http://www.shutoken-net.jp/2003/08/web030809_1toyoshima.html
[註2] 文科省廃止と言っても,国に教育行政がなくてよいということではないので,そのような純粋に「事務」を扱う役所は必要です.しかしそのために現在の文科省を「改革」するという程度では,今の悪弊からは到底抜け出られないでしょう.

関連する弊ブログ記事もご覧下さい.
元文部官僚による文部科学省廃止論

http://blog.so-net.ne.jp/pegasus/2008-02-17

豊島耕一
http://blog.so-net.ne.jp/pegasus/
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/Default.html
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/
佐賀大学理工学部物理科学科
840-8507 佐賀市本庄町1
phone/fax: +81 952-28-8845