大学財政危機打開をめざす国会内ポスターセッション
5th Circular
「法人化にあたって新たに発生した経費」の推計方法
2004年10月12日
国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局
4th Circularで「法人化にあたって新たに発生した経費」(法人化経費)を把握して、全国総計を求め、それを補正予算要求に組み込む方針を提示しました。そもそも法人化経費は国から別途支給されるべきものでした。ところが、各大学に配分された運営費交付金の中で措置されたために各大学における予算を実質的に減少させ、その減少率が学科レベルの現場では増幅されて教育研究活動に深刻な影響を与える要因の一つとなっているからです。こうした事態は、「運営費交付金等の算定に当たっては、・・・法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。」(参議院文教科学委員会附帯決議緒第12項)に明白に違反しています。そこで、各大学において法人化経費を把握することをお願いしたのです。予算情報が十分開示されておらず、法人化経費が把握できない場合は、2nd Circularのワークシート1(WS1)http://www.shutoken-net.jp/040911_1ws1.htmlの第2項を用いて、推計してください。
ワークシート1(WS1)の2項「法人化に伴う費用」の見積もり方式とその根拠
1.各大学における「恒常的法人化経費」の算出方式
[手順1] 当該大学の教職員数Aの東京大学の教職員数(7559名)に対する比を計算する。
a=A/7559(有効数字4桁まで計算)
[手順2] 当該大学の総支出額Bの東京大学の総支出額(2144億円)に対する比を計算する。
b=B/7559(有効数字4桁まで計算)
[手順3] 次式により、各費用の算出を行う(単位億円)。ただし小数点以下3桁目を四捨五入する。
<3-1> コンピュータ・システム・サポート経費(人事,財務会計,病院管理会計)
X1=0.70×b(億円) ; ただしX1 <0.05の場合はX1=0.05とする。
<3-2> 職員研修費用(労務・人事管理, 会計基準等・衛生管理者研修等)
X2=0.18×a(億円) ; ただしX2<0.03の場合はX2=0.03とする。
<3-3> 職員採用試験実施経費(募集要項・問題作成等)
X3=0.26×a(億円) ; ただしX3<0.03の場合はX3=0.03とする。
<3-4> 銀行手数料(振込手数料,ファームバンキング利用料等)
X4=0.96×b(億円) ; ただしX4<0.05の場合はX4=0.05とする。
<3-5> 保険料(雇用保険,労災保険,児童手当拠出金,火災保険,自動車保険,損害賠償責任保険等)
X5=12.91×a(億円) ; ただしX5<0.03の場合はX5=0.03とする。
<3-6> 法定監査人費用等(弁護士・会計士等費用)
X6=1.18×a(億円) ; ただしX6<0.03の場合はX6=0.03とする。
<3-7> 役員人件費
X7=0.2×役員数
<3-8> 労働安全衛生法見合いの維持費
X8=0.75×a(億円) ; ただしX8<0.03の場合はX8=0.03とする。
[手順4] 次式により、総費用Tの算出を行う(億円)。
T=X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7+X8
2.上記の算出方式の根拠
上記<3-1>〜<3-8>項の各費用の算出は、極めて困難である。その理由は、
(i) 法人化1年目のため、正確な値が分からず、他のデータ等から予測しなければならないため,
(ii) 上記予測に必要な信頼に足る詳細なデータが公開されていないため,
等である。一方、東京大学においては、法人化前に上記費用の詳細な予測が行われており、そのデータは利用可能である。
そこで本算出方式においては、各大学におけるおおよその費用を見積もるため、入手可能な「教職員数」および「総支出額」のみを用い、東京大学の試算額との比を用いて計算を行うことを考えた。
まず「総支出額」と深い関わりを持つと考えられる<3-1>,<3-4>の項目については、当該大学と東京大学の「総支出額」の割合に東京大学の予測経費を掛けることにより、算出を行った。ただし計算結果が500万円を下回る場合は、その項目の経費は500万円とした。これは経費規模が小さくても、最低必要な額があると判断したためである。
同様に、「教職員数」と深い関わりを持つと考えられる<3-2>,<3-3>,<3-5>,<3- 6>,<3-8>の項目については、当該大学と東京大学の「教職員数」の割合に東京大学の予測経費を掛けることにより、算出を行った。ただし計算結果が300万円を下回る場合は、その項目の経費は300万円とした。これは教職員数が少なくても、最低必要な額があると判断したためである。
また項目<3-7>については、役員1名あたり0.2億円の経費とした。
以上のようにして各項目に対する必要経費を見積もり、その合計を取ることにより総経費の見積額を算出した。
[註] 上記の計算において、もし「総支出額」が不明もしくは信頼性に欠ける場合は、その代わりに「教職員数」を用いて計算を行っても、その違いは僅かであると考えられる。いくつかの大学の試算では、その食い違いは1割程度であった。
3.その他
上で算出した費用は、法人化に伴い恒常的に必要となった費用の見積もりである。しかし上記以外にも、大学法人が負担しなければならなくなる可能性のある費用として、次のものが考えられる。
(T) 共済組合負担金
(U) 借入金償還額
これらの費用については、平成16年度は手当されたが、平成17年度以降は未定であり、もし手当されない場合には、おおよそ次の額がさらに必要となる。
(T) 共済組合負担金 : 63.5×a(億円)
(U) 借入金償還額 : (大学により異なる)