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独行法反対首都圏ネットワーク
慎重審議を求める222名有志要請書


以下を、文教科学委員会理事にファックスで送付し国会議員708名にメール
で送付しました。

辻下 徹

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                                2003年7月1日(火)

参議院文教科学委員 各位
Cc: 国会議員

6月26日の文教科学委員会で国立大学等法人化関連諸
法案の強行採決の可能性もあると聞き、わたくしたち国
立大学教官有志(56国立大学190名)は審議を尽す
ことを求める共同要請書を同日に緊急にお送りしました。
現在、審議は継続していますが、3ヶ月に及ぶ審議の過
程で明かになった種々の問題点が修正されないままに採
決され成立する可能性は高まっています。署名締切後に
も賛同者がありましたので、新たな連署名簿(56国立
大学1国立高等専門学校の教員222名)と共に、再度
お送りすることに致します。どうぞ、党派的立場を超え
て、参議院の存在意義を広く再認識させるべく、理を尽
くして審議し、欠陥を内包したまま法案が成立すること
を看過しないようお願いいたします。



5月12日に国立大学教員有志は国立大学協会に対し共
同意見書を提出し、臨時総会を開催し、国立大学法人関
連法案についての意見を社会に向け表明することを求め
ました。国立大学を代表して国立大学協会が率直な見解
を表明することは、国会審議において議員の方々が適切
な判断を下すのに不可欠と考えたからです。しかし、臨
時総会は開催されず、6月10日と11日に開催された
定期総会でも、法案は議題として取りあげられませんで
した。これは、国立大学協会が国立大学を代表する責務
を放棄したものですが、それは、法案についての意思の
統一が国立大学協会にはできないことを明かにしたもの
です。

実際、学長も含め国立大学関係者からの法案への批判意
見はすでに夥しい数になっているのに対し、法案への賛
成意見を公にした国立大学関係者は、数名の学長にとど
まっています。しかも、賛成意見といっても、内容は法
案への危惧が大きな部分を占めています。こういったこ
とは、この法案による法人化によって国立大学が機能不
全に陥るという危惧を、多数の国立大学関係者が抱いて
いることを示唆します(添付した共同通信のアンケート
結果参照)。その危惧の表出を阻んでいるのは、文部科
学省が国立大学に対して持つ広汎で強力な影響力への虞
れであり、それが法人化後はさらに強化されることへの
虞れです。この虞れが杞憂ではないことが明かになった
ことが国会で審議が止まり会期内に法案が成立しなかっ
た主な原因であることはご存知の通りです。

国会審議で明かにされた諸問題を払拭するように法案を
変えることは、到底、一ヶ月でできるような単純な作業
ではありません。そもそも、問題点を修正で解消できる
かどうかすら不明です。与党の方も、日本の将来を本当
に憂慮されるのであれば、官僚支配体制をさらに強化さ
せることが判明した法案を強行採決するようなことは思
い留まられますよう、お願い致します。



  最後に、法案が廃案となった後に、国立大学の改革を
進める際に不可欠な条件を二点指摘しておきたいと思い
ます。4年間の歳月をかけて学長・有識者・官僚の方々
が独立行政法人化を検討してきた「成果」がこのような
欠陥法案であった原因の一つは、その過程において教育
と研究の当事者が実質的に関与できなかったことにあり
ます。今後、大学を真に活性化させる改革を実現しよう
とするならば、同じ過ちを繰り返さないために以下の二
条件が最低限必要です。

【自発的意見尊重】新制度が現実に有効に機能するため
には、その策定過程において各大学の見解が十分に反映
されること。そしてこのためには、各大学の見解は各大
学の自主的自発的な意見表明のみを通じて諮られること。

説明:国立大学協会に関する経験が教えるのは、多くの
国立大学が組織としてその見解を国民の代表に伝えよう
とすると、各大学の自主的、自発的見解が抑圧されると
いう結果を生むということでした。こうした事態は新制
度を各大学から疎遠にし、その有効な実現を妨げるもの
ですので、厳に避けるべきです。


【準備期間】新制度が作成された場合、各大学が新制度
に移行する手続きと期間に十分配慮すること。

  説明:法人法に関する今回の苦い経験が教えるのは、
中央の行政機関が各大学の条件と能力を無視して一方的
かつ一律に期間を決め、すべての大学に無差別に期限内
の準備完了を強いるなら、新制度への移行作業が苛酷で
無駄が多くしかも内容のないものとなる、ということで
した。こうした非合理的事態を避けるために、新制度の
法的な確立から各大学におけるその実施までに十分な準
備期間を設定し、準備が整った大学から順次新制度に移
行するようにしなければなりません。


これまでの国会審議で明らかにされた諸問題を解決する
ために、超党派で審議を尽し、参議院議員としての責務
を全うされますことを要請します。


#(222名の署名)


連絡先:辻下 徹


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2003.6.19 共同通信:半数が「授業料上がる」 法人化で、国立大学長
http://newsflash.nifty.com/news/tk/tk__kyodo_20030619tk010.htm
詳細:http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030619kyodo-.html
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 国立大の学長の半数が、二○○四年度に予定される国立大法人化の後に、現
在の授業料が「上がる」とみていることが、共同通信のアンケートで十九日分
かった。                

 法人化後は各大学が一定の範囲内で授業料を決めるが、競争原理が導入され、
経営基盤を安定させる必要性も高まることから、学生側の負担が重くなる可能
性が高いことを示した。        

 法人化自体には、各大学への資金配分の基礎になる文部科学省の大学評価に
対し「適切に行われるか不安」とする学長が75%、大都市と地方の大学の格
差拡大を懸念する学長も53%に上った。 

 法人化法案は参院で審議中。成立すれば来年四月から実施される。アンケー
トには九十七人の国立大学長のうち九十二人が回答した。         

 授業料は現在、全学部一律で年間約五十二万円。「授業料は将来、全般とし
てどうなると思うか」との設問に10%が「上がる」、40%が「学部間で差
がつき、上がる学部も出てくる」と回答、計50%が授業料の上昇を予想した。
「変わらない」は37%だった。                    

 自分の大学の授業料は「上げる方向で検討」が一校、25%は「現行通りに
する方向で検討」と回答。72%は「まだ検討していない」と答え、様子見の
段階とみられる。            

 法人化のプラス面は、複数回答で「学長のリーダーシップが強化される」が
77%、「大学の意思決定が迅速化」54%、「学外者の参加で開かれた組織
になる」が53%。           

 マイナス面や不安としては、国の評価や地域間格差の問題に加え「事務作業
が増え教員が教育研究に割く時間が減る」が55%、「外部資金が獲得できる
か不安」が49%。「中期目標の策定を通じ文科省の介入が強まる」も24%
あった。           

 法人化の時期は、51%が予定通りの○四年度を適当としたが、20%は
「準備の都合上、○五年度以降にする方がいい」と先延ばしを求めた。   


■■■ 将来的には学生負担増か ■■■

 【解説】国立大学長アンケートから、法人化が将来的に授業料アップを招く
可能性が高いことが分かった。「個々の経済的状況にかかわらず、広く国民に
進学機会を提供する」という国立大の本来の役割を維持するために、文部科学
省はどのような措置を取るのか。学生や父母としては、今後の文科省や各大学
の動きを注視する必要がある。                     

 法人化後は、各大学の実績評価に基づき運営交付金が給付される。「経営努
力」が強調される中、交付額が伸びない場合は、授業料アップに頼らざるを得
ないケースも想定される。        

 学長の40%が「学部によって差がつく」と答えたように、医学部や理学部
など教育経費が高い学部は「受益者負担」の原則で、学生側に応分の負担を求
めるという判断も出てくるだろう。    

 地域間格差が授業料格差につながる恐れもある。学長の49%は「外部資金
が獲得できるか不安」と回答、53%が大都市部と地方の格差拡大を懸念して
いるように、地元企業の少ない地方大にとって、手っ取り早い「増収策」は授
業料値上げということになりかねない。                 
          

 国会審議で文科省は「標準額」を示し、一定の範囲内で大学に決めさせると
した上で「上限を決め、どんどん上がっていくのは抑える」と答弁した。  

 しかし私大医学部のような「施設整備費」の徴収や寄付金集めの可否には言
及せず、授業料以外の「学費」徴収の余地は残っている。現段階では模様眺め
の大学がほとんどだが、中長期的には学生側の負担増を招く公算は大きいとい
える。            

■■■国立大全般の授業料は将来どうなるか■■■

【上がる】旭川医、弘前、お茶の水女子、横浜国立、名古屋工業、豊橋技術
科学、奈良教育、香川、宮崎医           

【学部間で差がつき、上がる学部も】室蘭工業、小樽商科、宮城教育、千葉、
東京医歯、東京学芸、東京商船、東京水産、一橋、上越教育、山梨、信州、総
合研究大学院、政策研究大学院、富山、富山医薬、金沢、福井医、岐阜、静岡、
愛知教育、三重、北陸先端科学技術大学院、滋賀、滋賀医、京都教育、京都工
芸繊維、大阪外語、島根、高知、福岡教育、九州、九州芸術工科、佐賀医、長
崎、大分、鹿屋体育                        

【下がる】なし                      

【変わらない】北海道、帯広畜産、岩手、秋田、福島、筑波、宇都宮、群馬、
埼玉、東京農工、電気通信、新潟、福井、浜松医、名古屋、京都、大阪、大阪
教育、兵庫教育、神戸商船、鳥取、島根医、岡山、広島、徳島、鳴門教育、香
川医、愛媛、佐賀、熊本、大分医、宮崎、鹿児島、琉球          

【その他】北海道教育(記入なし)、北見工業(物価に対応した上昇はあり
得る)、山形(不明)、茨城(一概に言えない)、東京工業(現状維持すべき
だ)、長岡技術科学(分からない)、奈良女子(現行に近いところからスター
トするだろうが、将来的には大学間で差が生じてくる可能性がある)、和歌山
(当分の間、変わらないと考える)、山口(法人化に伴って上がるとは思わな
いが、社会情勢によって将来的には上がると思う)、九州工業(現時点では判
断は難しい)                        

【無回答】東京芸術、高知医                



■■■自校で授業料について検討しているか■■■

【上げる方向で検討】名古屋工業              

【下げる方向で検討】なし                 

【現行通りの方向で検討】北海道、小樽商科、宮城教育、東京医歯科、東京
工業、東京水産、お茶の水女子、電気通信、一橋、上越教育、山梨、総合研究
大学院、岐阜、名古屋、豊橋技術科学、神戸商船、鳥取、徳島、愛媛、佐賀、
熊本、大分医、鹿屋体育    

【学部で差をつけることを検討】なし            

【まだ検討していない】北海道教育、室蘭工業、帯広畜産、旭川医、北見工
業、弘前、岩手、秋田、福島、茨城、筑波、宇都宮、群馬、埼玉、千葉、東京
学芸、東京農工、東京芸術、東京商船、横浜国立、新潟、長岡技術科学、信州、
政策研究大学院、富山、富山医薬、金沢、福井、福井医、静岡、浜松医、愛知
教育、三重、北陸先端科学技術大学院、滋賀、滋賀医、京都、京都教育、京都
工芸繊維、大阪、大阪外語、大阪教育、兵庫教育、奈良教育、奈良女子、和歌
山、島根、島根医、岡山、広島、山口、鳴門教育、香川、香川医、高知、福岡
教育、九州、九州芸術工科、九州工業、佐賀医、長崎、大分、宮崎、宮崎医、
鹿児島、琉球             

【その他】山形(検討中)                 

【無回答】高知医                     



  ■国立大法人化とは■

 国立大法人化 国立大を国の直轄から切り離して法人化する法案が今国会に
提出され、5月に衆院を通過、現在参院で審議中。成立すれば、来年4月に8
9の国立大学法人が誕生、約12万人の教職員は非公務員になる。各法人は、
文部科学相が示す期間6年の「中期目標」に沿って中期計画を策定。文科省に
置かれた評価委員会が計画達成度などを評価、国が交付する運営費配分に反映
させる仕組みに変わる。業績悪化を理由に役員会の理事を解任できるなど学長
の権限も強化する。                     

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